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    桃木龍華

    @mukimuki02
    主に好きな物を書きます
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    akkmが好きです

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    桃木龍華

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    誕生日と命日の2人に捧げる
    あくくめです
    他にもモブの司書なども出てきます
    白い朝顔の花言葉は固い絆

    #あくくめ

    不思議な夢と誕生日「...く...くめ..久米!」
    ハッとそんな声がして目が覚める。
    「あれ?あくたがわくん?」
    目を開けて真っ先に見えたのは芥川だった。
    「全く、昨日は楽しみで寝れなかったのかい」
    芥川は微笑む。
    「え?昨日?」
    久米は思い返す。
    昨日は吉井くんや山本や他の文士と呑んでいた。
    その後に部屋に帰って寝たと久米は記憶していた。
    ならば
    「これは夢か...」
    久米が呟くと
    「夢?そんな訳ないじゃないか」
    芥川は不思議そうな顔で言い切る。
    「こうして君に触れられるのに?」
    芥川は久米に抱き着く。
    「やめてくれ、暑いから...?」
    芥川が抱き着いてきて、咄嗟に出た言葉に久米は疑問に思う。
    暑い?おかしいな?
    今はまだ冬に近い春じゃないか、暑い訳ないのにと。
    しかし、何故か久米の体感で暑く感じる。
    この夢は妙にリアルだ。
    遠い青い空を見ながら久米は思う。

    今、久米の置かれている夢での現状は昨日に出掛けて宿に泊まりその翌日だという事。
    「君を何度も起こしたのに」
    芥川はふくれっ面で言う。
    「悪かったね、僕はそんなに朝得意じゃないからね」
    ムカついて久米は言い返す。
    「まぁいいや、それよりも早く」
    芥川は久米の手を引いて何処かへ連れていく。
    「待ってくれよ!」
    強めに引っ張られて躓きそうになりながらも久米は芥川に付いて行く。
    「ここ、見てくれよ」
    連れてこられたのは砂浜。
    真っ青な海と空と不思議にも白い朝顔が咲いていた。
    「良かった、まだ咲いてた」
    芥川はホッとした顔をしていた。
    「ハァ...この光景を見せたかったの?」
    久米は芥川の後ろからその光景て芥川に聞く。
    「うん、綺麗だね」
    芥川はうっとりとした顔で光景を見ている。
    「綺麗だけどもおかしいじゃないか、朝顔は海岸に咲かない筈じゃないのかい?」
    久米は怪訝そうにその光景を見てそう言うと
    「そうかな?そんな事はどうでもいいよ」
    芥川はそう言い切る。
    「え、だって」
    久米はいつもの芥川らしくないと思って言おうとしたが
    「いいんだ、そんな些細な事、この光景を君と見たかったんだ」
    芥川はそう言って久米の両手を芥川の両手で包み引き寄せて、久米の唇に口付ける。
    「これで僕達は幸せだ」
    芥川のうっとりと微笑む。
    久米は驚いて瞬きすると芥川は居なく見えたのは見慣れた自室の天井だった。
    「や、やっぱり夢か」
    久米は起き上がってホッと息を吐く。
    ハッとして久米は時計を見る。
    「ね、寝過ぎた!」
    時計は正午を過ぎていた。
    久米は大慌てで身支度をする。
    今日は芥川の誕生日。
    本日の主役は人気者だから、プレゼントも渡すのも一苦労。
    早くに起きるつもりだったのにと久米は独りごちりながらも身支度を整える。
    プレゼントを持って自室から出る。

    「やっぱりそうだよね」
    久米は食堂の入口から中を伺うと奥の方に人集りがあった。
    その中心には芥川が居た。
    あの中に飛び込める程の勇気は今の久米には無い。
    酒でも入れていれば出来なくは無いが、こんな時にも酒の力を借りるのは気が引けた。
    こんな所に突っ立っててもしょうがないからと久米は思い、食堂の中に入る。
    人集りよりはかなり離れた場所に手持ち無沙汰に立ってると
    「久米じゃないか」
    声を掛けてきたのは志賀だった。
    「し、志賀さん!」
    意外な人に声を掛けられて久米は驚く。
    「なんだよ、オレじゃ悪いのか」
    志賀は不機嫌そうに言う。
    「い、いえ、そうじゃないのですが」
    久米は慌てて言う。
    「どうした、龍ならあそこに居るぞ?」
    志賀は両手が塞がっていたので顎で芥川を示す。
    「知ってます、でもあの中にはいけないので終わり次第に」
    久米がそう言うと
    「料理持っていくついでに菊池に言っとく」
    そう言って志賀は人集りに入っていった。
    その後に菊池が人集りから出てきた。
    「あんた、もっと堂々と入ってきたっていいのに」
    菊池はそう言ってため息を吐く。
    「分かってるけども、あそこに行ってプレゼントを渡すのは無理だよ」
    久米もため息を吐く。
    「分かったよ、龍に伝えとくから」
    そう菊池は言う。
    「中庭に来て欲しいって伝えもえるかい?」
    久米は菊池に伝言を頼む。
    「あぁ、分かった」
    そう言って菊池はまた人集りの中に戻って行った。
    それを見届けて久米は食堂を後にする。
    中庭のベンチに久米は座り、空を見上げる。
    夢で見たあの青空よりは薄い青空。
    春の青空。
    手持ち無沙汰なので煙草に火をつける。
    ふわっと白煙が空に立ち昇る。
    「呼んだかい?」
    カラコロと聞き慣れた音と声が聞こえる。
    空から芥川へ久米は顔を向けると
    「なんだよ、嬉しそうな顔して」
    芥川の嬉しそうな顔を見て、久米は顔を顰める。
    「僕が愛おしいと思ってる人に呼び出されて嬉しくない訳ないじゃないか」
    そう言って芥川は久米の隣に座る。
    「これ」
    久米は芥川の顔を見ずにプレゼントを渡す。
    「ありがとう、君からプレゼントを貰えるのは嬉しいよ」
    芥川は渡されたプレゼントを受け取りそう言う。
    「僕以外からも貰うだろうから別にそこまでじゃないだろう」
    久米はそう指摘する。
    「そんな事無いよ、とても嬉しい」
    芥川はプレゼントを抱き締める。
    その表情が夢のうっとりと微笑む芥川と似ていて久米は驚くがそれはほんの一瞬。
    「ねぇ、中身開けてもいい?」
    芥川は無邪気に久米に聞く。
    「いや、ここでは開けないでくれ、それじゃあ」
    久米はそう言って煙草を揉み消し立ち上がり、ベンチから去る。
    足早に。
    残された芥川は立ち去った久米の後ろ姿を見て煙草を吸っていた。
    その表情はとても嬉しそうだった。

    煙草を1本吸い終わって芥川はまた食堂へ戻った。
    「芥川せんせーい!僕の愛おしい人って誰なんですか!」
    真っ先に芥川へやってきたのは太宰だった。
    「秘密だよ、太宰くんにも言えないかな」
    芥川はそう言って人集りの方へ戻って行った。
    誕生日パーティよりも酒飲み達によって飲み会に変わっていた。

    後日
    「まさか本当に出来るだね」
    芥川は司書室に来て、司書に言う。
    「まぁ、おまじないみたいな物ですけどもね」
    ヘラッと司書は笑ってふざける。
    「でも、凄いよ、これだけでその人に見せたい夢を見せられるなんてね」
    芥川は片手でヒラヒラとさせているのはポチ袋の様なもの。
    そこにはデフォルメされた獏が描かれていた。
    「実験みたいなもんでしたが見事に成功するとは思いませんでしたよ」
    司書は笑って言う。
    「僕も半信半疑だったけどもね」
    そう言って芥川はポチ袋を開けて中身を出す。
    出てきたのは種と芥川の髪の毛。
    「きっと僕らは大丈夫」
    芥川は薄い春の青空を眺めて言う。


    久米の見た芥川と朝顔の夢は芥川のせいだった。
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