放課後の集い「久米、ここに居たんだ」
そう言って入ってきたのは芥川くん。
「何か用?」
ノートから顔を上げて不機嫌そうな顔で芥川くんを見る。
「うん、前から書いてた話が書き上がったんだ」
ウキウキした様に僕の隣にやってくる。
「書き上がったんだ、遅筆の君がね」
とニヒルな笑みを浮かべると
「うー、中々君のようにサラサラと書けないんだよ、読んでくれるよね?」
困った様に笑ってから僕にノートを差し出す。
「僕だってそんなにサラサラ書いてないよ、読む」
差し出されたノートを受け取り、開く。
「これでお礼になったかな?」
読んでる最中に芥川くんが言う。
「別にお礼はいらないよ、アレは僕が勝手に取ってきたものだし、クリスマスプレゼントって言ってるだからお返しは要らないよ」
読んでた箇所から芥川くんへ向けて言うと
「でも、貰いぱなしは嫌なんだ、だから君に話してた話が書き上がったから、だからこれは君の為に書いた様なものなんだ」
真剣な眼差しでそう言う。
「...ありがとう、でも、君が君の為に書かなきゃ意味無いじゃないか」
ノートを机に伏せて言うと
「いや、僕の為になってるよ、君の為と言いながらも僕のお礼の為の欲求なんだから総じてこれは僕の為だよ」
柔らかく微笑む。
「屁理屈じゃないか」
そう言うと
「理屈も時には必要だよ」
僕の隣に座る。
「で、感想は?」
こちらをワクワクとした顔で感想を催促してくる。
「まだだよ、もう少し待って」
伏せてたノートをひっくり返して綴られた文字を読み始める。
僕らはよく空き教室で放課後を過ごしていた。
まぁ、場所はいつも決まってる訳じゃないし、図書館が主だったりしてる。
クラスが違うから生活を共にしていない。
だから、今日の授業とか愚痴とかを話す。
クラスの違う芥川くんと友好を交わしているのはお互いに読書好きなのもあって、図書館でよく顔を見ていた。
お互い部活はしていなかった為、放課後は図書館通いをしていた。
そしてどちらかが話し掛けてから仲良くなり現在に至る。
「ねぇ、どう?」
芥川くんは無邪気に聞いてくる。
「え、あ、あぁ!ごめん少し考え事していた」
なんだかそんな事を想起させる様な事が書いてあったのか、或いは僕が心ここに在らずで僕らの始まりを思い出させたのか分からない。
「なら、それ持って帰ってさ、お家でゆっくり読んでよ」
ニコニコと嬉しそうに芥川くんは言う。
「そうするよ」
僕は読むのを諦めて鞄にしまう。
「ねぇ、久米は何書いてたの?」
芥川くんのノートを仕舞った事により僕のノートが表に出た。
「まだ、そんなに書けてないから」
開いていたページを閉じると
「完成が楽しみだな」
芥川くんはそう言ってから
「久米の書く話好きだから是非読ませてね」
芥川くんは僕を見て言う。
「わ、分かった...」
恥ずかしくなり俯くと
「そろそろ帰ろうか」
芥川くんは持っていた鞄を持って席を立つ。
「そうだね」
僕もそれに倣い、ノートを仕舞い、鞄を持って立ち上がる。
夕焼けは無く、空には一番星が輝いていた。