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    kikhimeqmoq

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    kikhimeqmoq

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    恵と五条が初めて出会った年のクリスマス。12/25の朝にワクワクしながら起きたことがない人たち。

    #伏五
    volt5

    「サンタなんて親がやってんだろ」
    コンビニのレジ脇に置いてある緑と赤の箱を見て、一昨日、恵が言い放った台詞を思い出す。
    誕生日だった恵にプレゼントをやった。術師になったばかりの七歳に何を買えばいいか分からず、高専近くのイオンで硝子に適当に選んでもらった手袋だったが、恵は存外喜んでいた。「こんないいもの貰って大丈夫なのか。後で返せって言われないのか」なんて何度も確認していたのが、不思議だったが。
    普段笑わない恵の喜ぶ顔が面白く、物をもらってこんなに喜ぶなら、と思ったついでに言ったのだ。
    「子供はいいね、クリスマスにもサンタがくるし」
    途端に恵は笑顔を消し、いつもの生意気そうな細目になって言ったのだ。「サンタなんて親がやってんだろ」
    それは、いつも通り小一にしてはませた世界観を披露しただけのようにも思えたし、親がいない自分にはクリスマスは来ないと言っているようでもあった。

    僕だってサンタにプレゼントもらったことはないけども。
    実家は伝統と格式を重んじるから、節句祝いはしてもクリスマスを祝ったりはしない。テレビで見る華やかな喧噪と、我が家の地味さを比較して、癇癪を起こしたことも数知れず。六眼の嫡男としめ大抵の我儘は許されていたが、儀式や伝統といった部分に関しては、頑として意見は聞き届けられなかった。つまらない。
    だからといって家に金がないわけでもない。
    あれが欲しい、これが欲しいといって手に入らない苦い経験も味わったことが無かった。そういえば。


    *


    「恵、ちょっと待って」
    「なに?今日も来たの?」
    一二月二五日の午後。下校途中だった恵を路上で捕獲した。都合のいいことに誰もいない。
    ちょっと任務で近所にきたから。本当は術式で飛んできたくせに、都合の悪いことを誤魔化す大人が良く使う言い訳を口にしてしまう。いや、別に、恥ずかしいことするわけじゃないはずだけど。
    「これ、あげるから」
    昨日イオンで買った小さな包みを押し付ける。またイオンかよ。自分で自分に突っ込みながら、だって他に買う場所なんて知らないし、と自分で自分に言い訳をする。ついでに買った物も、また手袋だ。何を買っていいのか分からないので、誕生日の色違いを買った。
    「なにこれ?」
    恵は戸惑った声で僕を見上げた。
    「クリスマスプレゼントだけど」
    一応回答したものの、恵はうんともすんとも言わないので居た堪れなくなり「開けて」と言う。
    言ってから、中身は一昨日あげたものと同じなのだと気がついた。同じ物をやったのに、開けてもクソもないだろう。うわ、もう、ギャグだと思ってくれ。
    ガサガサと大きな音をたてて乱雑に包みを開けた恵は手袋を引っ張り出し、しげしげとそれを見つめてから、僕を見上げた。
    ほら、さあ、笑えって。笑うとこだぞ。
    「あのさあ」
    困ったように口ごもる恵に、イライラとする。くっそ、やっぱりダメか。
    「なに?不満?」
    「これ、津美紀と分けらんないけど」
    恵から発せられた想像外の意見に、耳を疑う。
    「なんで津美紀?」
    思ったままの疑問が口から飛び出したが、恵は恵で不思議そうに眉を下げた。
    「プレゼントってふたりで分けるやつじゃねえの?」
    自分を見上げる黒い眼は、こちらを試しているわけでもなく、迷惑に思っている訳でなく、素朴に疑問に思っているようだった。
    「それ、恵にあげるやつだから分けなくてもいいよ」
    「あ、そう」
    聞いた恵はもう一度、手袋を見つめ「これ、誕生日の色違いだ」とようやく言った。笑うか怒るか分からなかったので、どちらなんだろうと覗き込んだが、恵はそこで笑うことも無く、黙って手袋を装着した。いや、笑ってるな。よく見たら、少しだけ微笑んでいる。
    「もしかしてさあ、クリスマスって去年まで二人で一個だった?」
    質問に頷く恵頭の上でピンピンと黒い癖っ毛が揺れた。
    「へえ」
    金がなかったのか気遣いがなかったのか何なのか、津美紀の母親は津美紀と恵に一つだけ物を与えていたらしい。それを愛情とみるか、手抜きとみるかは意見が分かれるとこだけど。
    「津美紀にはさあ、後でケーキ買っていくから。ホールのやつ」
    まだ、手袋を眺めている恵に付け加えると、恵はようやく僕を見上げ、笑った。
    「イチゴのやつな」
    「そう、津美紀の好きなやつ」
    じゃあ、いい。と言った恵は手を握り締める。ぎゅっ、ぎゅっ。
    「だからそれ、恵専用だからね」
    ダメ押しで伝えると、恵は道の真ん中で急に立ち止まった。
    そして背負っていたランドセルを乱暴に脱ぎ、蓋をひっくり返して、ぐちゃぐちゃの荷物の奥から何かを引っ張り出した。
    「これ、あげる」
    僕があげたばかりの手袋の上に恵からの贈り物が乗っていた。
    白い石だ。
    クリスマスプレゼントには風変わりな方だと思ったが、嬉しかった。
    だって、石はただの石だけど、この歳の男子が大事に持ち歩く石は特別だ。
    自分だって少年のころ、庭の隅で見つけた石を大事に箱にしまっていた。欲しい物にも、使える力にも困っていなかったのに、金にもならない小さな石こそが世界で唯一の宝に思えた。石を入れた箱は綺麗な細工が施してあり、今考えるとあれは螺鈿だったのだが、そんなことより自分で見つけた小石たちの方が綺麗で格好いいと思っていた。

    あんなどうしようもないものを大事にして、僕もバカだったけど恵も結構バカだろ。
    そういうのは嫌いじゃない。

    「いい石じゃん」
    恵から受け取った石を摘んで目の前で観察する。白くてところどころ結晶が光っていて、滑らかな曲線の美しい楕円形だった。
    「そうだろ。夏に河原で見つけたんだけど、結構深く埋まってたから掘り出すの大変だったし」
    自慢げに言う恵はたいそう嬉しそうだった。
    分かる。苦労して手に入れると、光って見えるよな。
    贈られた石を握り締めて恵を見下ろした。
    「貰ったからには、もう返さないけど」
    「いいよ。また取ってくるし。たくさん見つかったら、次は悟にもあげる」
    次は凄いのとってくるから。
    ニヤリと笑った恵の手を取って、石を握った拳を合わせる。
    「メリークリスマス」
    唱えると、同じ勢いで返ってきた。
    「メリークリスマス」



    家に帰り、クローゼットを開ける。
    たしか、実家から呪具を持ち帰った時に使った黒い箱があったはず。
    ガラクタとの格闘数分。奥でほこりを被っていた螺鈿の箱をひっぱりだした。
    ポケットから恵にもらった白い石を取り出す。
    部屋の蛍光灯にかざすと、小さな結晶がキラリと光る。いい石じゃん。褒めた時に恵が見せた満足そうな顔を思い浮かべ、昔のように箱の中へ大事に据えた。
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    kikhimeqmoq

    DOODLE伏五の五条が直哉と話しているだけの落書き。たぶんなんか、あんまり良いネタじゃない。恵が高一の五月くらい。誤字脱字衍字および重複は見直してないです。「君さあ、なんでずっとムカついた顔してんの?」
    久しぶりに御三家の会合があった。うちの当主は二日酔いで欠席するとだらなことを言い出し、次期当主である自分に名代を務めるよう言いつけてた。それはいい。それはいいが、なんでこいつと控え室が一緒やねん。俺、ほんま嫌いやねんけどら
    「悟くんはなんで似合わへん東京弁を使ってるの?」
    「似合ってるでしょ。君の金髪よりはずっと似合ってるし。直哉って昔は可愛い顔してたのに、いつのまにか場末のヤンキーみたいな金髪ピアスになったのは社会人デビューなの?」
    ハハッと乾いた笑いを付け加えた男といえば白髪が光っていた。銀髪というほど透けていないが、真珠みたいに淡く柔らかく発光している。下ろした前髪から覗く青い目はこれまた美しく輝いていたが、柔らかさなんて一欠片もなく世界を圧倒する力を放っている。それは自分が呪術者だから感じる力であって、その辺の猿どもが見たってガラス玉みたいに綺麗だと褒めそやすだけなんだろうが、こいつの真価はそんな見た目で測れるものじゃない。まあ、えげつない美しさっちゅうのは事実やけど。
    「もうすぐ禪院の当主になるっていうもんが、いつまでも五条家に 3020

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    kikhimeqmoq

    DONE2020年バレンタインの修正再放送です。
    恵たちが高専1年生で、五条先生にチョコをあげる話なので、未来捏造どころかパラレルになってしまいましたが、こういう日があったらよかったのになあという気持ち。っていうのは半分建前で伏五にチョコ食いながらキスして欲しかっただけです。すみません。
    「伏黒、家入さんが呼んでるって」

    その日の授業が終わり、中庭に向かう時だった。二年生が体術の稽古をつけてくれる約束だったので。
    職員棟から走ってきた虎杖は、扉の隙間からそれだけを告げ、風のように駆け抜けていった。ドタバタという足音と意味のない咆哮が遠ざかっていく。相変わらずうるせえな。

    家入さんだったら保健室か。
    保健室というよりも実験室と言った方が正確であろう半地下の部屋は、入口から薄暗い。黄ばんだ引き戸を開けると、少しだけ消毒液のにおいがした。何だか緊張する。
    保健室に来る時は大抵怪我をしているか、ミスって呪われた時か、捕獲した呪霊を実験台にする時ぐらいで、何の用事もなく来る場所じゃない。最近の任務は単純なものばかりで暇なので、特殊事例の聴収もないはずだ。
    それなのに、家入さんが?俺を呼んでるって?







    「めぐみぃ、来た?」

    保健室の中から聞こえた声は、予想していたものではなかった。
    その声に咄嗟に口を尖らせる。
    家入さんじゃないということは別にいい。その声が、聞きなれた男の声だというのが面倒くさい。また碌でもないことを始めたか。
    間延びした声で俺を呼ぶ人は、背が高 3510