ただいまの贈りもの「あら、ダイ君! おかえりなさ……」
言い終わる前に抱きすくめられた。ぎゅうっと力強く。
「ちょ……ちょっと、どうしたの? ダイ君……」
「…………」
ダイ君は何も言わないであたしを無言で抱きしめたまま。頭に頬を摺り寄せているのがわかる。
なにかあったのね、きっと。
時折ダイ君は、やるせない思いを胸にかかえたまま帰ってくることがある。そんな時はたいてい、こうして無言で抱きしめられる。言葉として発することもまた彼にとって負担になるのだろう。
だからあたしも何も言わない。
あたしの言葉を求めている時は、ダイ君は言葉や眼差しでなにかを伝えようとしてくれるから。
今はきっとこのまま彼の腕の中にいるのが一番。あたしを抱きしめることが、なんらかの癒しになるのなら、それでいい。
ダイ君の背中に両腕を回す。背中をポンポンと優しく叩いたりさすったり。あたしはここにいるよって伝わるように。
それに応えてダイ君はあたしを抱きしめる力を強め、二人の間の距離はさらに縮まった。あたしはそっとダイ君の胸に頬を寄せる。
あたたかい───。
ダイ君の胸からは鼓動が響いてくる。
この温もりが、あたしはなによりも嬉しい。
こうして無事に帰ってきてくれた。あたしを求めてくれている。
それだけであたしの胸はいっぱいになる。
「ダイ君。おかえりなさい」
そう囁くように声をかけると、ダイ君は腕の力を緩めて体を少し離した。やっと顔を見合わせることが出来たわ。
すこし照れくさそうなダイ君の表情。だから、あたしはいろんな気持ちをこめて彼に微笑みかける。そうして、ようやくあたしの大好きな笑顔をダイ君は見せてくれた。
「ただいま、レオナ」
ちゅっと頬にキスの贈り物をくれる。周りに人もいるのに──なんて今更のことかしら。
「ありがとう──。きみがいて、良かった」
うん、そうね。あたしも同じ気持ちよ。
きみが帰ってきた。ここにいる。
それだけで、あたしは泣きたくなるくらい幸せになれるの。