花の浮橋 サンプル①「朝か……」
目を開けたときに見える景色がいつもと違うことに気がつく。
隣にはすやすやと寝息を立てている浮葉の姿があった。
「夢じゃなかったんだ……」
浮葉と肌を重ねる夢を見たような気がしたが、夢ではなく現実だったらしい。
隣にいる浮葉の存在も、唯の身体を襲う倦怠感も、そのことが幻ではないと伝えてきた。
「そういえば……」
昨夜、ここに来てからスマホに触れていない。事情を察するものがいるにせよ菩提樹寮に帰ってことで心配を掛けてしまっているかもしれない。
唯はリビングに行き自分のカバンからスマホを取り出すことにした。
浮葉を起こさないようにそっとベッドから出ると、自分がいつもと違う服装をしていることを思い出す。
浮葉が貸してくれたパジャマだ。女性的な美しさを持つ彼であるが、サイズがブカブカなところにあらためて彼が男性であると思い知る。
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