それは雪のように「おや、あれは…」
街中で見かけた可愛らしい姿は、見紛うことなく恋人のものだった。何をしているのかと思えば何やら配って歩いている。アルバイトだろうか。そんな話はきいていないが。じっと見つめていると、視線に気がついたのか、鈴蘭がこちらを向いた。びっくりしたような表情のあと、まるで見つかったと言いたげな気不味そうな顔をした。
「…やぁ〜…ちょっとさ、欲しいものがあって」
いつもの逢瀬の日、その事を尋ねるとあからさまに言葉を濁して、視線を反らす。
「何か必要なものがあれば、お手伝いしましょうか?」
自分は大人なのだし、それなりに収入もある。恋人なのだから、プレゼントくらいしても良いだろう。そう思ったのに。
「いや、その…自分で買いたいんだよね」
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