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    69asuna18

    ジョチェ🛹

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    69asuna18

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    ワンドロ 『それは雪のように』の続き。
    クリスマスのお話

    #ソウスズ
    bambooTiles

    愛の重さ「ねぇ、ソウゲンちゃん。手袋暖かい?」
    「えぇ、とても」
    待ち合わせ、出会って開口一番尋ねる鈴蘭に、ソウゲンはその贈り物の手袋を、まるで医者が出てくるドラマの様に。今から手術でもするかのように自慢気に見せる。そして、その手で鈴蘭の手を握った。

    「ポケットに手を入れなくても暖かいので助かるのです」

    手が繋げる。そういう意味だと理解した鈴蘭は、仕事嬉しそうに、大きく頷きながら「うん」とその手を強く握り返す。そして、約束のクリスマスマーケットへと二人で歩を勧めた。

    キラキラの電飾。賑わう飲食スペースに、ソウゲンは眩しそうに瞬きを繰り返して、物珍しい物でも見るようにあたりを見回した。人が多すぎて、気をつけなければすぐに逸れてしまいそう。握った手を身体に引き寄せて、鈴蘭の腕をしっかりと掴む。

    「ホットワインもあるよ」
    「鈴蘭殿、お酒はまだ飲めないのです」
    「知ってるよ〜、ソウゲンちゃんは飲まないの?飲んでもいいよ?」

    他愛のない話をしながら身を寄せてゆっくりと歩く
    。こんなに密着していても、誰も気にしていないのんだなと思えば、人混みも悪くないなとソウゲンは思う。ふわりと鼻をかすめるシナモンの香り。サンタの帽子を被った店員がかき混ぜる大きな銅鍋に視線を向けた。

    「鈴蘭殿、温かいぶどうのジュースもありますよ。珍しいですね。」
    「すごいスパイスのにおいだね〜温まりそう。あとで飲もっか?」
    「そうですね。もう少し見て回ってからにしましょう」

    本当は、今飲んでもよかったのだが。せっかく繋いだ手を離したくないのが本音だった。
    クリスマスのオーナメント、キャンドルやアクセサリーの店を一緒に周り、ソウゲンは商品を手に取りながら、横でそれらを見つめる鈴蘭の顔色を盗み見ていた。その表情から、鈴蘭が欲しいものを見つけ、手袋のお礼にプレゼントしようと考えて居たのだ。

    「それが気に入ったのですか?」

    片手に収まるほどの小さなクマのぬいぐるみのキーホルダーを見つめ、微笑んでいるのに気がついた

    「ん?なんかね、目が垂れててね。ソウゲンちゃんみたいだなぁって思ってね」

    見て。とこちらへ見せてきた。いまいち何処が似ているのかは分からなかったけれど。

    「もし気に入ったのでしたら、手袋のお礼に買わせて頂きたいのです。」
    「え、いいのに…」
    「クリスマスのプレゼントなのです」
    「そっかぁ…じゃぁこの子連れて帰ろうかなぁ」

    ふふふと目を細めて笑って、ありがとう。と、鈴蘭はそのクマの頭を撫でた。

    「小さいソウゲンちゃんだね」
    「鈴蘭殿が無理をしないよう見張ってもらいましょう」

    釣られるように、ふふふと笑ってそのクマのを預かりレジへと届ける。そして戻ってきたそのクマをソウゲンは一度ぎゅっと胸のあたりで抱きしめた。頭の上に疑問符を浮かべた鈴蘭の手を取りその手に、そっとのせる。

    「なにしてるの?」
    「……少しだけ小生の魂を込めておきましたので…大切にしてくださいね」

    そう紡ぐと、鈴蘭の瞳がまるでイルミネーションの様にキラキラと輝く。手にのせたそのクマを鈴蘭はぎゅっと抱きしめて。さっきよりも少しだけ重たくなった気がするなぁと心の中で呟いた。

    「ありがと」

    お礼を言うと、ソウゲンは嬉しそうに目を細めた。そして、空いた手を差し伸べて。

    「小生とも、手を繋いでもらえますか?」

    なんていう。両手で大事に抱きしめたぬいぐるみを鞄にしまって、その手を繋ぐ。少し身体も冷えたから、暖を取るように擦り寄った。
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    69asuna18

    MENU新刊『甘い香りに包まれて』

    前回のイベントでのコピー本『花の香りのする方へ』とその続きをまとめたものになります。
    (加筆修正有り)
    コピー本で出したものの、途中までをサンプルとしてアップします😊
    甘い香りに包まれて生を受けた世には、バース性と呼ばれる新たな性別が誕生していた。男女の性別とは別の第二の性。男と女とは別にα、β、Ωと三つの性別が存在し、全ての人間は六種類に分けられる。αはエリートが多く、βは一番多い所謂普通。そしてΩには発情期なるものが存在し、その体質が故に世間から冷遇されている。その為、性別による差別が目立ち、第二性がΩである人は悩みが尽きない。
    生まれ変わる前と違う事象が起きている事に、興味があった踪玄はバース性の研究に勤しんだ。しかし、調べれば調べるほど、その新たに備わった性別が、人間そのものに嫌悪を抱かせる。
    薬を飲み、体調を管理すれば、Ωであっても社会的に問題なく過ごせるはずなのに、理解が進んでない事もあり、定職につくのも難しく給料も少ない事の方が多い。働ける時に働きたいと思う人も多く、病院に定期的に通う人も少なくない。…出来るのは理解のある人間に囲まれていて、給料が安定している者だけ。そのせいで、発情期に倒れたり、身体に合わない安い薬を飲んで体調を崩す者も少なくない。
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    『もう、共に過ごす事は叶わないけど、いつでもあなたの事を思って祈るよ。いつかまたどこかで会えるように。』

    その言葉に、あふれ出した記憶はより鮮明になる。ソウゲンという名から、山南敬助として生きるようになった日の事。そこで出会った最愛の人と自分の最後の事。そういえば、幼少の頃に祖父の葬式に来たお坊さんの袈裟を掴んで離さなかったと母に笑われたな、と。記憶の片隅で彼を思っていたからなんだろうと今なら理解できる。すべてが繋がり、非科学的な事が大嫌いなはずの自分が、江戸時代から生まれ変わった人間なのだと根拠もないのに、納得したのは高校に入る直前だった。
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    69asuna18

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    前回のイベントでのコピー本『花の香りのする方へ』とその続きをまとめたものになります。
    (加筆修正有り)
    コピー本で出したものの、途中までをサンプルとしてアップします😊
    甘い香りに包まれて生を受けた世には、バース性と呼ばれる新たな性別が誕生していた。男女の性別とは別の第二の性。男と女とは別にα、β、Ωと三つの性別が存在し、全ての人間は六種類に分けられる。αはエリートが多く、βは一番多い所謂普通。そしてΩには発情期なるものが存在し、その体質が故に世間から冷遇されている。その為、性別による差別が目立ち、第二性がΩである人は悩みが尽きない。
    生まれ変わる前と違う事象が起きている事に、興味があった踪玄はバース性の研究に勤しんだ。しかし、調べれば調べるほど、その新たに備わった性別が、人間そのものに嫌悪を抱かせる。
    薬を飲み、体調を管理すれば、Ωであっても社会的に問題なく過ごせるはずなのに、理解が進んでない事もあり、定職につくのも難しく給料も少ない事の方が多い。働ける時に働きたいと思う人も多く、病院に定期的に通う人も少なくない。…出来るのは理解のある人間に囲まれていて、給料が安定している者だけ。そのせいで、発情期に倒れたり、身体に合わない安い薬を飲んで体調を崩す者も少なくない。
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