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    summeralley

    @summeralley

    夏路です。
    飯Pなど書き散らかしてます。

    ひとまずここに上げて、修正など加えたら/パロは程よい文章量になったら最終的に支部に移すつもり。

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    summeralley

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    #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負
    お題【爪】

    ぴの爪の美しさは毎回しつこくうるさく描写しまくってますが、今回はぴ視点寄りの三人称なので、あまり爪の美しさは描写してません🙄

    #飯P
    #二次創作BL
    secondaryCreationBl
    #腐女子向け

    【飯P】夏を抱いて爪を立つ 細く鋭い三日月が、天頂に頼りなく貼り付いている。空は橙と紫の間にあり、夜がすぐそこへ迫っていた。辺りには、若葉の青い匂いと梅雨前の湿った土の匂いが満ちている。連山を望む草原はほの暗く、叢立つ露草の青が、初夏の風に揺れていた。
     腕の引っ掻き傷を眺められていることに気付いたのか、悟飯がピッコロに笑いかけた。
     「……大丈夫ですよ、痛くもなんともなかったし」
    「すまない、注意不足だった」
     ここへ着いてすぐ、突然飛んできた虫を躱して悟飯は大きくよろめいた。咄嗟にそれを支えようと手を出したピッコロの爪が、悟飯の手首から肘まで届く長い傷を作ってしまった。
     「注意不足は僕の方ですから……却って、ピッコロさんに怒られずに済んでよかったです」
     茶化して話す悟飯に、ピッコロも漸く安堵する。細く長い引っ掻き傷は、少し赤みがさしている程度で、出血を伴ってはいない。
     「動物の爪って、大まかに三種類に分けられるの、知ってますか」
    「いや……」
     荷物を拾い上げながら口を開いた悟飯に、マントを身につけたばかりのピッコロは首を傾げた。真昼からずっと動き通しで、身体には快い疲労が満ちている。自分との組手では、悟飯はもはや全力を出せていないのは明らかだった。それでも誘いに来るのは、悟飯なりの気遣いなのだろうか。
     「僕らみたいに物を掴む生き物の『扁爪ひらづめ』に、狩りをする動物や鳥の『鉤爪』、それから長距離を走る動物の『蹄』……」
     話しながら、悟飯はさり気無く手を伸ばしてくる。持ち上げられたピッコロの手の爪は、悟飯の腕に引っ掻き傷を作ってしまったように鋭く尖ったものだった。しかし、いまの分類に当て嵌めるならば『扁爪』にあたるのだろう。
     「出しっ放しの僕らの扁爪と違って、豹や虎、猫も……彼らは獲物を追い詰めるまで鉤爪を隠して、いざとらえる時だけ爪を立てるそうです」
    「……どういう意味だ?」
    「追い回して追い詰めて、もう逃がさないと確信したその時にはじめて爪を立てることで、より鋭く、効果的に食い込ませることができる」
     悟飯の指先が、迷いなくピッコロの爪をとらえる。黒い爪を上下から摘まんでいる指には、全く力が入っていないのに、ピッコロは何故か引き抜くことができない。普段意識することはないが、爪というものは思っている以上に敏感で、こうして固定されると指自体を動かせなくなる。
     「ピッコロさん」
     爪は解放され、代わりに指と指が絡み、手全体を握りしめられる。抵抗する気は起きず、ただ体温の差を感じた。悟飯が子供の頃から、手を握られることは度々あったが、あの頃と比べると少年の手はずいぶん大きくなり、力も強くなった。
     「……ピッコロさんはずっと、僕を善良な弟子としか見ていませんよね」
    「他に何がある?」
    「何も……そう思っていて、もらいたかったので、上手くやれてたんだなって」
     悟飯が微笑む。握られていた手の甲に、悟飯の唇が降ってくる。吐息の熱に触れた途端、ピッコロは気付いた。
     爪を隠していたのだ、悟飯は。
     年月の中で少しずつ距離を詰め、決して無理に押し付けるような交流は求めず、そのうえで逃げ道を塞ぐように寄り添ってきた。元々ないようなものだった悟飯への警戒心など完全に消え失せ、どれほど触れられようとも、いつしか違和感を覚えなくなっていた。
     「……おれを獲物にするつもりか?」
    「もう遅いですよ、爪を立てるところだから」
     やにわに手を引かれ、ピッコロの身体は容易く悟飯に倒れ込んでしまう。
     「お前の爪は扁爪ではなく、鉤爪だったんだな……」
    「確かめてみます?」
     気付けば、鉤爪は身体の深くにまで食い込んでいて、もはや逃れられない。
     落陽の最後の一筋の光が、鉤爪のごとき鋭さで輝き消える。細い三日月の白は極めて濃く明るく、夏が目前であることを知らせていた。
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    summeralley

    DONE急いで進めてるけど12話くらいにはなってしまいそう……少し先でベッドシーンで丸々一話使ったせいで……。
    ネイPのP、ちょっと子どもっぽく書いてしまう。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/04.聴診器の語るもの ネイルは殆ど、家へ帰らなくなっていた。職員がみな帰るのを待ってから仮眠室へ下りるので、それから帰宅となるとどうしても遅くなる。
     元々、仮眠室へ寝泊まりすることはそう珍しくなかった。同じフロアに、簡易的なシャワールームもある。食事は水で事足りる。コインランドリーは研究所の道向かいだ。
     ――家へ帰ったところで、仮眠室の様子が気になって眠れず、警備員が驚くような早朝に出勤することになる。
     自らが切り刻んだ研究対象への執着なのか、単純な個への執着なのかは、判然としなかった。それでも、寝袋を持ち込んで寝泊まりするようになるのは、ネイルにとって自然な選択だった。
     その日ネイルは、どこか浮き足立っていた。
     石室の標本に関する嘘の報告書は問題なく受理され、更に詳しく検査を進めるようにとの文言を添えた、検査項目のリストだけが戻ってきた。それも、時間がかかることを誰もが理解できる検査項目ばかりで、当分の時間は稼げそうに思われる。
    3016

    summeralley

    DONE10話くらいで終わりたいとか言ってたのに、少し先の話に性的なシーンを入れたので予定が狂って10話で終わるの無理になりました。ネイP次いつ書くか分かんないし、どうせならって……。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/03.新しいラベル 「石室の標本について、何か分かったか?」
    「報告書の通り、特段変わったことはありません……何しろ前例がないので、手探りで。慎重に進めています」
     ムーリは頷き、引き続き任せる、と研究室を出て行く。ケースの観察窓を覗かれなかったことに、ネイルは胸を撫で下ろした。研究者としては、それが正しい振る舞いだ。以前ネイルがそうせずにいられなかった、無闇に観察窓の蓋を開ける行為は、暗闇で保管されていた検体にどのような影響を与えるか分からない。
     ネイルの返答は、完全な嘘ではなかった。このような現象に、前例があるはずもない。腐敗せず、硬直もしない遺骸など……ただし「変わったことはない」という部分は、真っ赤な嘘だ。
     石室の標本はもう、標本ではない。さりとて、それを報告できようか? おそらく、上層部の判断で、もっと大きな研究所へ送られることになるだろう。戸籍もない古い時代のナメックが、「呼吸する標本」……良くて「実験動物」として扱われることなど、目に見えていた。
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