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    summeralley

    @summeralley

    夏路です。
    飯Pなど書き散らかしてます。

    ひとまずここに上げて、修正など加えたら/パロは程よい文章量になったら最終的に支部に移すつもり。

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    summeralley

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    #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負
    お題【花】

    🐌のこと、どんな生物より花が似合うお花の妖精さんだと思ってるので、普段から背景として花は出しまくってます。なので改めて「花」って言われるとなかなか悩んだ。

    #腐女子向け
    #二次創作BL
    secondaryCreationBl
    #飯P

    【飯P】花を摘む ピッコロの部屋を訪ねる悟飯は、いつも花を摘んで来る。雨に濡れた露草、朝焼けに塗られたひなげし、目に染みる紫のあざみ……摘んできては、勝手にガラス瓶に活けていく。
     ピッコロは決して、飾られた花に触れることはなかった。触れずとも、何かにつけて花が目に入り、そのたび悟飯を思い出した。
     今日持ち込まれたのは、小振りな笹百合だ。ピッコロは椅子に深く掛け、余分な葉を切り落とす悟飯を眺めている。はじめて会った時はほんの子供だったのに、来年にはハイスクールも卒業だという。大人になり、段々と、ここへも来なくなるのだろう。
     「ピッコロさんって、花、あまり好きじゃないですか?」
    「そんなことはない」
    「だけど好きなら、摘むでしょう。手元に置いて、香りを感じて、最後まで開いて枯れていくのを……側で毎日、見ていたければ、好きな人は摘みます」
     悟飯は話しながら、活けた花を窓の側に置く。白い壁の殺風景な部屋が、そこだけ生き返ったように明るくなった。
     初夏の陽光が、薄紅の百合に降り注いでいる。ガラス瓶も、満ちた水も、葉に一滴だけついた雫も、眩しかった。
     確かに、自分で摘むどころか、こうして悟飯によって飾られた花に触れることすら、ピッコロは避けている。しかしそれは、嫌っているからではない。ただただ、摘むこと、触れることに躊躇があった。広い土地にあれば、長く咲き続け、やがて実を結ぶであろう花へ、近くで見たいがために手を伸ばすなど……。
     「……また難しいこと、考えてる」
     ピッコロが我に返ると、悟飯が椅子の座面に片膝をついていた。背凭れに右手をかけた悟飯を、反射的に見上げる。
     「摘んで側に置くのは、嫌なの?」
    「摘まない方が、花のためだ」
    「だけど植物も、あなたの側にいたいかもしれないですよ。ずっと長い時間、側に」
     ――ずっととは、いつまでだ? 枯れるまで、最後まで側で見ていられないならば、手元になど一時も置かない方がいい。
     「そうだとしても、おれは摘まない」
     咲いている花を手放す可能性を思えば、離れたところから、自由な花姿を眺めている方が良い……その一心ではっきりと答える。一瞬だけ眉根を寄せた悟飯が、左手も背凭れに伸ばした。両腕に閉じ込められ、ピッコロは戸惑う。
     「じゃあ……自分が摘まれるかもってことは、考えないの?」
     こちらを見下ろしながら、悟飯は笑顔で首を傾げる。窓からの光は片頬だけを照らし、いつもの無邪気な笑顔を、見慣れないものに変えていた。
     身を屈めてくる少年を押し留めることもできず、ピッコロは黒い瞳を見つめ返す。吐息が感じられるほど近付いた悟飯が不意に止まり、物言いたげなまなざしから笑みが消えた。水切りで冷えた指先が、ピッコロの頬から輪郭を辿り、静かに喉元に触れてくる。百合の香りが、閉じ込められて鈍った思考をいよいよ麻痺させる……。
     途端、風が吹き込み、切られた笹百合の葉が床に落ちた。
     悟飯はあっさりと身体を起こし、床の葉を拾う。机を片付け、荷物をまとめた。
     「今日は、帰ります。また遊びに来ますね」
    「ああ……」
     立ち上がりかけたピッコロを制して、悟飯は部屋を出て行く。廊下で振り向き、迷いのない声音で告げた。
     「ピッコロさんが摘まなくても、僕が摘みますから」
     返事を待たず、扉が静かに閉められる。
     花を摘むことに、触れることに、躊躇があった。その躊躇のあまり、か弱い新芽だったものが、いつしか力強く成長していることなど、思いもよらなかった。
     ピッコロは机に飾られた笹百合に歩み寄り、はじめて手に取ってみる。おそるおそる触れた花の茎は、思ったよりしっかりしていた。目の高さに持ち上げて眺めれば、陽光を透かす花弁は、離れて見るよりずっと美しい。
     花の香りに思考が浸されて、無意識に喉元に触れる。悟飯の指先の冷たさが、まだ残っているような気がした。
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