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    もちこの本棚📖

    @zunnda_motico

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    現在GW:T(K暁とCPなしメイン、たまに暁K、)作品になります
    (アイコンはいかてんころもさん(@Ikaten_koromo)作です☺️ありがとうございます☺️)

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    おあきとくん、お誕生日おめでとう🥳
    ごすわに出会えて、あきとくんに出会えて毎日が楽しいです🥳
    お祝いの気持ちを込めに込めました、どうぞよろしくお願いいたします🥳👏🎉

    祝うは相棒と共に9月8日、朝8時―
    暁人は鳥居の前に横たわった状態で目が覚めた。
    起き上がり、周りを見渡す。近くに神社の社があるが人の気配はなく、参拝客の姿も見当たらない。
    目覚める前まで何をしていたのか全く記憶がない。昨晩、KKと2人でとある依頼を片付けて帰路につこうとしたところまでは覚えているが、その後がすっぽり抜けたかのように何も思い出せない。
    「KKは……」
    相棒の姿を探すも見当たらない、耳を澄ますも聞こえるのは鴉の鳴き声や虫の鳴き声ばかり。もしかするともう家に帰ったのかもしれないと、バッグからスマートフォンを取り出しKKに電話をかける、が
    「あれ……圏外……?」
    それどころか、画面上の時計表示はずっと8時のままになっている。電話もメールも、メッセージアプリも使えない。すぐに暁人は状況を整理する。
    ―人がいない見知らぬ神社、繋がらないスマートフォン、持ち物は御札と弓矢、そして少しの食べ物。手にエーテルの流れを集中させようとするが、脈を打つように流れているはずのエーテルは微塵も感じない。つまり、今ここでは力が使えないということだ。
    「……御札も矢も限られてる、どこかで補充出来ればいいけれど…」
    こんな状況でも、暁人は冷静だった。以前なら混乱し、取り乱していたであろう。KKと共に依頼をこなすようになって場数を踏んできたのだ。ひとまず、辺りを捜索しようと暁人は1歩踏み出した。

    境内をしばらく歩くと、子供の姿が見えた。
    小さい男の子だ。声をかけようと近づこうとすると、急に体が動かなくなり声を出すことも出来なくなったが、すぐさま問題のない視覚と聴覚でその子供を観察する。
    視線の先の男の子は、袴姿で両親と一緒に並び写真を撮っている。七五三だろうか、手には千歳飴を持っていた。並ぶ両親の顔は何故か靄がかかったようになってハッキリとは見えない。だが、男の子の顔は不思議と見覚えがあった。どこで見たのだろうと暁人は少し考えるが、思い出せなかった。
    やがて子供と両親の姿が消えると、体を自由に動かすことも声を発することもできるようになり、暁人は深く深呼吸をする。
    「今のは、いったい……」
    辺りを見渡して、敵の気配がないことを再度確認する。先程から人の気配も、マレビトや怪異の気配も感じられないのが不思議だった。暁人は再び境内の捜索を続ける。
    スマートフォンを開くも、やはり時間は8時から変わっていなかった。まるであの夜のように、この空間だけ時が止まっているようだった。暁人は再び先程の男の子をどこで見たかを考えていた。確かにどこかで見たことがあるが、それをはっきりとは思い出せない。
    暁人は社付近から1度離れ、出入り口を探す。階段は発見できず、どこまでも続く石畳の道があるのみ。どんなに歩いても、引き返せば何故か社にすぐに着いてしまう。そんな不思議な空間だった。
    脱出する方法は必ずあるだろう、だが今はノーヒントの状態。暁人は頭の中で(KKならどうするか)を考えながら行動する。
    「きっと、どこかにヒントが……きっかけがあるはずだ」
    すると、視界の端に人の姿を捉えた。それを目で追うと、そこにはさきほどの少年が少し成長した姿が見えた。その少年を見た暁人は、ここで何故少年に見覚えがあったのかを理解した。
    「……僕だ」
    その少年は暁人自身だった。少年の暁人は少女と手を繋いで歩いている。当然、その少女は妹の麻里である。麻里は3歳、暁人は8歳ぐらいだろうか。
    「でも、なんで……」
    般若の男を追いかけ、走馬灯のように自身の過去を振り返ったあの時と状況は似ているが、今回は感じ方がまるで違った。心臓がザワつく感じも、嫌な汗が流れる感じもなく、穏やかな気持ちのままだ。暁人は落ち着いて幼少期の自身を見守る。
    少年の暁人は、小さい麻里を気にかけながら歩く。やがて両親の元にたどり着くと少年暁人は甘えることなく、麻里を優先させていた。お兄ちゃんだから、という思いがこの頃からあった事を、暁人は改めて思い出した。

    ―物心ついた時から、僕は「お兄ちゃん」だった。妹ができることは嬉しかったし、お兄ちゃんになることに不満は無かった。兄弟を持つ長男長女によくある『親を取られた』と感じたことは無かったし、自分を優先して欲しい気持ちも無かった。我ながら無欲な子供だったと思う、今思えば誕生日プレゼントをねだった事もなかった。両親がケーキと僕が喜びそうな玩具や本を買ってきてくれたことは覚えている。僕はそれで十分だった。
    両親は僕がいくつになっても毎年誕生日パーティを開いてくれたし、僕から要求しなくてもなにかしらプレゼントをくれた。僕にも麻里にも、両親は変わらない愛情をもっていてくれたと思う。だけど、もしかすると…僕はどこかで寂しさを感じていたのかも、しれない。
    両親が亡くなったあと、僕は麻里の『保護者』になった。家のことも、麻里の学校のことも、もちろん自分の学業も、すべて自分でやらないといけない。大変だと思ったことはあっても、辛くてやめたい、逃げたいと思うことは無かった。だって僕が逃げたら、麻里は…

    はっ、と暁人が我に返る。ついグルグルと思考を巡らせてしまった。いつの間にか少年暁人の姿は消え、ふと目の前を見ると古いテレビのようなものが置かれている。
    「テレビ…?」
    相当前の物だろうか、暁人は操作の仕方が分からなかった。とりあえず適当に弄ってみるかとテレビに触れると、画面が勝手について映像が流れ出す。映像を眺めていると、見覚えのある光景が映される。
    ―暁人の入学式、卒業式、運動会…両親がまるでビデオカメラで撮ったかのような、そんな映像が流れる。次第にその映像は暁人だけではなく、麻里も映されるようになる。暁人が大きくなるにつれて暁人を映す映像は少なくなり、そのかわりに麻里の映像が増えていく。ここで、暁人はふと気がついた。
    「僕…寂しかったのかなあ…」
    まるで他人事のようにそう呟く。心のどこかで、もっと両親に構って欲しい気持ちがあったのかもしれない。それを、大人になりたった1人になってしまった今、ようやく気づいてしまった。
    テレビを消そうと手を伸ばす、が消し方がわからず途方に暮れる。すると、後ろから聞き慣れた声がした。
    「おいおい、オレがまだ見てるんだから消すなよ」
    暁人が後ろを振り返ると、何時から居たのだろうか。そこにはKKがいつの間にか立っていた。
    「け、KK…!?いつの間に……?」
    「ほら、突っ立ってないで座ってみようぜ」
    KKが暁人と肩を組むようにしてその場に座らせ、その横に座る。
    「…というか、こういうの見られるの恥ずかしいんだけど」
    「いいじゃねぇか、立派な成長記録だろ?」
    オレはこういうこと、してやれなかったからなぁと少し後悔したかのようにKKが呟く。仕事が忙しくて子供のイベント事には参加出来なかったのであろう、後悔の意図を感じた。
    「ほー、すごいじゃないか。オマエ、徒競走で1等賞取ったのか」
    「あー、この時はね。僕、頑張ったんだよ」
    次第に映像はビデオカメラで撮ったものというより、誰かの視点のようになっていく。テストで高得点を取った時、学校の帰りに寄り道して駄菓子を買った時、友達と公園で遊んだ時、すべて暁人が子供の頃の映像に変わった。
    KKはその映像を見ながら暁人に話しかける。その度にすごいな、いいじゃないか、とすべてを肯定してくれる。
    「良い人生を歩んでるな、暁人」
    KKの言葉の数々が、暁人の心にじわりと浸透していく。心が温まるようだった。KKが暁人の頭をぽんっと優しく撫でると、それは更に暖かなものになっていく。
    映像はだんだんと成長していく暁人を映し、やがて今の暁人の姿も映し出される。不思議と、両親を亡くした頃や火事があった頃の映像はすっぽりと抜けていた。映像からは抜けていたが、その後の頃であろう画面上の暁人からは笑顔が消えていた。酷い顔だ、と暁人は客観的にそう思ってしまう。ちらりと映像を眺めるKKを見ると、真剣な表情で画面を見つめていた。変に茶化すわけもなく、ただ真剣に。
    映像が現在に追いついたからか、自然とテレビの画面が消灯する。するとKKが、どっこいしょと立ち上がった。
    「うわぁ、オジサンくさいよ」
    「オマエもこうなるんだよ」
    暁人も立ち上がり、2人は視線を合わせる。
    「出口はもうある、ここから脱出するのはオマエ次第だ暁人」
    「…うん、わかった」
    暁人は頷いて辺りを見渡す。淡い白い光が見えた。
    「KK、先に行って待っていてくれる?」
    「待ってやるから、早く帰ってこい」
    KKの姿がふっと消えていく。暁人は白い光の方へ歩みを進めた。白い光の中へ入っていくと、声が聞こえてくる。
    ―ひとりぼっちは辛くない?
    ―成長するのはしんどくない?
    ここならずっと子供のまま、幸せな記憶にずっと浸っていられるよ、ひとりぼっちじゃないよ、と子供の暁人の声が聞こえて辺りに反響していく。それは脅迫めいたものではなく、心配するかのような声色で。
    「…そうだね、確かに辛い時期もあった。誕生日を迎えて大人になることも嬉しくなかった、かも」
    だけど、と暁人は続ける。
    「今は、大事な相棒がそばに居るんだ。僕のことを気遣ってくれて、厳しいけれどでも優しい、師匠のような、父親のような、そんな相棒がね」
    ―そっか。もう、僕は寂しくないんだね。
    子供の声が安心したかのように柔らかくなり、白い光が大きくなる。
    ―早く行ってあげて、大事な人が待ってるよ。
    「うん、行ってくる。心配してくれてありがとう、小さい頃の僕」
    優しく白い光が暁人を包み、そっと目を閉じた。

    ***
    「おーい、そんなところで寝ていたら風邪引くぞ」
    KKの声で暁人は目を覚ます。KKが石畳の上に寝転がる暁人を見下ろしていた。
    「KK…おはよう」
    「おう、もう昼間だけどな」
    いてて、とゆっくり体を起こす。長いこと横たわっていたのかあらゆる関節がバキバキと鳴った。スマートフォンを確認すると、時計は12時を指していた。
    「うわー…僕、どのくらいここに居たの?」
    「昨日の夜に別れて以来ずっと、だろうな。帰り際に立ち寄って、オマエ一人ここに残るって言っていたが…覚えてないみたいだな」
    ここですっぽりと抜けていた記憶が漸く思い出される、KKの言っていることは本当だった。
    「うん、あんまり覚えてないけれど…何かに引き寄せられてのここに来たことは、思い出したよ」
    「…この神社、大昔に亡くなった子供を祀った場所みたいでな。その子供、親を早くに亡くして一人ぼっちで亡くなったそうだ。もしかしたら、引き寄せられたんだろうな」
    「そうだったんだ……」
    「今は、子供の成長と健康を願う人が集う場所になったみたいだぜ」
    両親を、家族を亡くし一人ぼっちになってしまった暁人を気遣ってくれたのだろうか。もし寂しい、一人ぼっちは嫌だと言ってしまったら、今頃…この世にはいなかったのかもしれない。
    「そういや、暁人」
    「ん?」
    「オマエ、今日誕生日だろ?おめでとうさん」
    「え?あぁ…ちょっと忘れてたよ。ありがとう」
    「今日は焼肉か、回らない寿司でも奢ってやるよ」
    「ほんと?迷うなぁ、どっちにしよう…」
    どちらにしようか悩みながら、暁人はふふっと笑を零す。こうして誰かに誕生日を祝われるのは久しぶりだった。
    「KKは僕の相棒だしさ、プレゼントも欲しいなぁ?」
    「プレゼントだぁ?…何が欲しいんだよ」
    「新しいバイクかな」
    「オマエなぁ、ちっとは遠慮しろよ…」
    そうは言いつつも、昼飯食ったら見に行くか、とさり気なく要望に応えてくれるKKはいつもより優しかった。
    「あのさ、KK」
    「あ?」
    「これから毎年さ、お祝いしてくれる?」
    「記念日を覚えるのは苦手なんだがな、仕方ねぇ」
    「やった、これで誕生日を口実に毎年ご馳走が食べられるね」
    覚えるのは苦手、と言いつつ覚えようとしてくれるKKに、暁人は密かに感謝した。帰るぞ、とKKが歩みを進めて暁人もそれに続いていく。
    「…あれ?KKに僕の誕生日がいつか、教えたっけ…?」
    「元刑事だぞ、その辺の調査は余裕だよ」
    「うわぁ、KKに隠し事はできないね」
    「そうだぞ、オレに暴かれるのがオチだからな」
    にやり、とKKが笑い、釣られて暁人も笑い出す。

    並んで歩く2人の姿を見送るように、白い光は明滅する。あの青年はひとりじゃない、頼れる人間がそばにいる。生まれたことを祝ってくれる人がいる。
    楽しげに会話する2人の間に、ふわりと優しい風が吹いた。
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