知らなかった。世界はこんなにも彩りに満ちていたのか。アイツと出会ってから自分の中の常識が変わった。自分しかいないと思っていた情熱の持ち主を見つけた。自分の隣に立ってくれるヤツを見つけた。それだけでここまで変わるとは思ってもいなかった。
「シンラ、」
「なんだよ。」
「シンラ、」
「何。」
「シンラ、」
「だからなんだよッ!」
「別に。呼んだだけだ。」
打ったら返ってくる言葉がある。打ったら響く言葉がある。小さな頃から求めていたものだった。
「アーサー、」
「なんだ。」
「アーサー、」
「どうした。」
「アーサー、」
「なんなんだお前。」
「別に。呼んだだけだっての。」
打ったら返ってくる言葉がある。打ったら響く言葉がある。それは救いにもなった。自分は誰かにとって、少なくとも相手にとっては必要な存在だと実感出来た。たまに行われる小さな小さな儀式。
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