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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    敦太800字。ちょっとした悪戯に遭うあつしくん。

    ##文スト
    #BSD
    #敦太
    dunta

    髪を切ろうか 敦がデスクでPC作業をしているが、どうにも前髪が目に入ってきて集中できない。
    「髪の毛切らなきゃなぁ……」
     前髪をいじりながらつぶやくと、背後からナオミが近づいてきて声をかけてきた。
    「あら、敦さん。お困りの様子ですわね。ナオミがいいものを差し上げますわ」
     そう云うとナオミは振り返った敦の前髪を素早く顔の横にまとめると、何やらヘアピンで留めてくれた。
    「あ、ありがとうございます」
    「いえいえ。お礼には及びませんわ」
     そう微笑むとナオミは長い黒髪をさらりと翻して給湯室の方へと消えていった。
     しばらく敦がPCに集中していると、入口のあたりで国木田の怒声と適当にあしらう太宰の声が聞こえてきた。
    「――だから太宰! 貴様はどうしていつもそうなんだ!」
    「はいはい、国木田君はいつもうるさいなあ〜っと」
     二人が仕事を終えて帰ってきたらしい。敦は「おかえりなさい」と云った。太宰が敦の顔を二度見する。
    「――あれ? 敦君なにその可愛らしいのは」
    「はい?」
     敦が首を傾げると国木田が眼鏡を押さえて云う。「鏡を見てくればいい」
     なんだろう、と思いつつ敦はトイレに入り、洗面所の鏡を見た。
    「な、なんだこれ……」
     驚き呆然とする敦の前髪を留めているのはピンクの小花がついたヘアピンだった。脳裏に、去り際やけに上機嫌そうだったナオミの姿が思い出される。外すにしてもまた前髪が邪魔になってしまうことを思うと外せないで、敦は俯いたままトイレから出てきた。
     デスクに座っていた太宰が顔を覗き込んでくる。
    「大方、ナオミちゃんがやったんでしょ?」
    「はい……」
     邪魔な前髪を留めてくれたのは有り難いけれど、誰もこんな可愛い女の子がつけそうなものを頼んだ覚えはない。何も云えなくなって敦はデスクに突っ伏した。
     笑いを含んだ声で太宰が云う。
    「まあまあ、敦君。よく似合ってるよ、それ」
    「変に慰めようとしないでください……」
     早く髪を切りに行かなかった自分が悪いのだと、敦はそう自身に云い聞かせる。
     太宰は敦の頭を撫でて、「今度、私が髪を切ってあげるよ」と囁いた。
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    ▶︎古井◀︎

    DONE春の陽気に大洗濯をするチェズモクのはなし
    お題は「幸せな二人」でした!
    「そろそろカーテンを洗って取り替えたいのですが」
     朝。さわやかな陽光が差し込むキッチンで、モクマはかぶりつこうとしたエッグトーストを傾けたまま、相棒の言葉に動きを止めた。
     パンの上で仲良く重なっていた目玉焼きとベーコンが、傾いたままで不均等にかかった重力に負けてずり落ちて、ぺしゃりと皿に落下する。
    「モクマさァん……」
     対面に座っていたチェズレイが、コーヒーカップを片手に、じっとりとした眼差しだけでモクマの行儀の悪さを咎めた。ごめんて。わざとじゃないんだって。
     普段、チェズレイは共用物の洗濯をほとんど一手に担っていた。彼が言い出しそうな頃合いを見計らっては、毎回モクマも参加表明してみるのだが、そのたびに「結構です」の意をたっぷり含んだ極上の笑みだけを返され、すごすごと引き下がってきたのだった。しかし今回は、珍しくもチェズレイ自ら、モクマに話題を振ってきている。
    「それって、お誘いってことでいいの?」
     落下した哀れなベーコンエッグをトーストに乗せなおしてやりながら、モクマは問う。相棒が求めるほどのマメさや几帳面さがないだけで、本来モクマは家事が嫌いではないのだ。
    「ええ。流石に 3560