Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    高間晴

    @hal483

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 387

    高間晴

    ☆quiet follow

    敦太800字。ちょっとした悪戯に遭うあつしくん。

    ##文スト
    #BSD
    #敦太
    dunta

    髪を切ろうか 敦がデスクでPC作業をしているが、どうにも前髪が目に入ってきて集中できない。
    「髪の毛切らなきゃなぁ……」
     前髪をいじりながらつぶやくと、背後からナオミが近づいてきて声をかけてきた。
    「あら、敦さん。お困りの様子ですわね。ナオミがいいものを差し上げますわ」
     そう云うとナオミは振り返った敦の前髪を素早く顔の横にまとめると、何やらヘアピンで留めてくれた。
    「あ、ありがとうございます」
    「いえいえ。お礼には及びませんわ」
     そう微笑むとナオミは長い黒髪をさらりと翻して給湯室の方へと消えていった。
     しばらく敦がPCに集中していると、入口のあたりで国木田の怒声と適当にあしらう太宰の声が聞こえてきた。
    「――だから太宰! 貴様はどうしていつもそうなんだ!」
    「はいはい、国木田君はいつもうるさいなあ〜っと」
     二人が仕事を終えて帰ってきたらしい。敦は「おかえりなさい」と云った。太宰が敦の顔を二度見する。
    「――あれ? 敦君なにその可愛らしいのは」
    「はい?」
     敦が首を傾げると国木田が眼鏡を押さえて云う。「鏡を見てくればいい」
     なんだろう、と思いつつ敦はトイレに入り、洗面所の鏡を見た。
    「な、なんだこれ……」
     驚き呆然とする敦の前髪を留めているのはピンクの小花がついたヘアピンだった。脳裏に、去り際やけに上機嫌そうだったナオミの姿が思い出される。外すにしてもまた前髪が邪魔になってしまうことを思うと外せないで、敦は俯いたままトイレから出てきた。
     デスクに座っていた太宰が顔を覗き込んでくる。
    「大方、ナオミちゃんがやったんでしょ?」
    「はい……」
     邪魔な前髪を留めてくれたのは有り難いけれど、誰もこんな可愛い女の子がつけそうなものを頼んだ覚えはない。何も云えなくなって敦はデスクに突っ伏した。
     笑いを含んだ声で太宰が云う。
    「まあまあ、敦君。よく似合ってるよ、それ」
    「変に慰めようとしないでください……」
     早く髪を切りに行かなかった自分が悪いのだと、敦はそう自身に云い聞かせる。
     太宰は敦の頭を撫でて、「今度、私が髪を切ってあげるよ」と囁いた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。今度はモさんがうだうだしてる。
    https://poipiku.com/108543/4050417.html の続き。
    ルクアロルクの描写を含みます。
    ■最近の悩み(Side:M)


    「じゃあまたコーヒー淹れてくるわ」
     モクマはチェズレイの空になったカップを受け取って書斎を出た。さっき彼の手にしていた携帯の画面が、遠目でちらりと見えてしまったのを思い出す。
     さすがにここまで共に過ごした上であれを見て、彼が自分以外の誰かとセックスがしたいんだなんて思うほどモクマは朴念仁ではなかった。
     おじさん、求められてるんだなぁ。あんな美青年に。
     ぼうっとそんなことを考えながら、キッチンでカップを洗う。
     きっとチェズレイはどっちも未経験だろうから、俺がネコ側やるのが妥当なんだろう。
     でも、あいつは知らないかもしれないが、セックスなんてのは時としてみっともなくて滑稽なものだ。ただでさえこんな――あの美しい男にこんなおじさんの喘ぎ声だとか痴態を晒すなんて、とてもじゃないができない。我慢すればいいだけの話だなんて言わないでほしい。人生で初めてこれだけ惚れた男に求められて触れられて、抑えられるだけの自信がないのだ。
     それが恥ずかしいなんて可愛い感情ならまだどうにかできた。だが自分が抱えているのは恐怖と惨めさ、とでもいえばいいのだろうか。
     も 853

    ▶︎古井◀︎

    DONE横書きブラウザ読み用!
    猫に出会ったり思い出のはなしをしたりするチェモのはなし
     やや肌寒さの残る春先。早朝の閑静な公園には、ふたりぶんの軽快な足音が響いていた。
     現在、チェズレイとモクマが居を構えているこの国は、直近に身を置いていた数々の国の中でも頭一つ飛び抜けて治安が良い。借り受けたセーフハウスで悪党なりに悪巧みをしつつも優雅な暮らしをしていた二人が、住居のほど近くにあるこの公園で早朝ランをするようになって、早数週間。
     毎朝、公園の外周をふたりで一時間ほど走ったり、ストレッチをしたり。そうするうちに、お互いに何も言わずとも自然と合うようになった走行ペースが、きっちりふたりの中間点をとっていた。
     数歩先で軽々と遊歩道を蹴るモクマに、チェズレイは平然を装いながら素知らぬふりでついていく。『仕事』が無い限りはともに同じ時間、同じような距離を走っているはずなのに、基礎体力の差なのかいつもチェズレイばかり、先に息が上がってしまう。
     今日だってそうだった。そしれこれもまたいつも通り、前方を走っている相棒は、首だけで振り返りながらチェズレイをちらりと見遣っただけで、仮面の下に丁寧に押し隠した疲労をあっさりと感じ取ってしまい、何も言わずにゆったりペースを落とした。
      6780