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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    浄八を考える晴さんには「そうだ旅に出よう」で始まり、「きっとそれを幸せって呼ぶんだね」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば7ツイート(980字)以上でお願いします。
    #書き出しと終わり
    https://shindanmaker.com/801664

    ##最遊記

    世界はそれを愛と呼ぶんだぜ「そうだ旅に出よう」
     悟浄が真面目な顔でこんな事を言い出したのには一応理由がある。
     まずは数時間前まで時を遡ろう――

     今日はもう太陽が沈んでしまった。いつも夕日に向かってジープを飛ばしている三蔵一行は、とある森の中で野宿をすることにした。
     いくらジープのヘッドライトがあるとはいえ、夜はろくに視界も利かない。それに無闇にエンジン音を響かせて移動していると、妖怪の襲撃に遭う確率も高くなるからだ。
     停めたジープの座席、それぞれの定位置に四人がいる。バックミラーには携帯用の小さなランタンが、それでも四人の表情を読み取れるくらいの明かりを灯してぶら下がっている。
    「……困りましたね。食料が底をついたみたいです」
     腹が減ったと騒いでいる悟空に何か食べ物を与えようと、運転席で荷物を漁っていた八戒がそう言った。
     悟空は慌てて後部座席から運転席へかじり付くように身を乗り出す。
    「えーッ! 食いモンもうねぇの!?」
    「はい。もう缶詰もカロリーバーもありません」
     すっからかんです、とザックを逆さにして振って見せるが、ビスケットの欠片ひとつ出てこない。悟空が後部座席でがっくりと頭を垂れた。
     と、いうことは――と、思い当たった悟浄も声を上げる。
    「あッ、煙草! 猿のメシはどうでもいい! 煙草は!?」
    「どうでもいいってなんだよこのクサレ河童!」
    「まさに貴方が今吸ってるそれで最後です。
     三蔵も袂に入ってるので最後ですよ。大事に吸ってくださいね」
     八戒の言葉に、盛大に眉間に皺を寄せながら助手席の三蔵が訊く。
    「……次の街までは、あとどれくらいだ」
     それを聞いてもにこにこと八戒は微笑を浮かべている。
     たっぷり十秒の間。
    「――あと、約一週間です」
     その瞬間、悟空と悟浄から野太い非難の声が上がり、それを三蔵が「うるせぇ!」とハリセンで薙ぎ払って止めた。

     そして話は現在に戻る。
     悟空は空腹のあまり周囲に食べられる果実などがないか探しに行ったが、結局は綺麗な水の流れる小川を見つけただけで終わった。それでも大収穫だ。飲める水は生きとし生けるもの全てに必要なものなのだから。とりあえず喉の渇きは癒されたが、やはり空腹は誤魔化せないようで、悟空は虚ろな目で後部座席にひっくり返っている。時たま発する「腹減った」の声と腹の虫の音だけが悟空が生きている事を伝えているレベルだ。
     三蔵は残りのマルボロを賭けて悟浄とポーカーをやっていたが、結局負けた上に逆ギレしてS&Wをぶっ放し、自分の煙草を死守していた。「卑怯だぞこのクソ坊主!」との悟浄の声も無視して、黙って助手席で煙草を燻らせている。その横顔は盛大に苦虫を噛み潰したようなそれだ。
     八戒は運転席で広げた地図へと目を走らせ、少しでも早く街に着けるルートがないものだろうかと、ああでもないこうでもないと考えを巡らせている。
     そんな限界の三蔵一行の中で悟浄が発したのが、冒頭のこの一言である。
    「そうだ旅に出よう」
     真面目な声音で虚ろな目をしてそう呟くと、八戒が地図を手にしたまま振り返る。
    「やだなあ悟浄ってば、今がまさに旅の真っ最中じゃないですか」
     三蔵が最後の一本のマルボロを燻らせながら、S&Wの銃口を悟浄の額に突き付ける。
    「死出の旅路ならいくらでも送ってやる」
    「ちょ、テメェ! それシャレなんねぇっつーの!」
     これにはさすがに悟浄も正気を取り戻したようで、慌ててその銃口を掴むとパシンと払いのける。そして長いため息をつく。
    「はぁ~~……食料も煙草もなしで一週間どうしろってんだよ……」
    「悟空が川を見つけてくれたのには感謝してくださいよ。飲み水がなかったら、一週間どころか一日持たないでしょうから」
     地図と睨み合っていた八戒は、モノクルを外して疲れた目元を揉み解している。そして、モノクルを嵌めなおして言った。
    「……あー、頭脳労働も疲れました。ちょっと川で魚でも釣ってきます。三蔵、火を焚いておいてください」
     三蔵は無言で頷いて、後部座席でうわ言のように「腹減った」と呟いている悟空に視線をやる。
     八戒はぶら下がっているランタンを手に取り、ジープから降りながら「悟浄」と呼んだ。
    「わーったよ」
     悟浄はランタンを持った八戒の後について、森の奥へと向かって行く。
     先ほど悟空が見つけた川の傍のある地点で、八戒は悟浄にランタンを押し付ける。
    「……ところで、魚釣る、つったって糸とか釣り針とかねぇだろ。どうすんだ」
    「こんなこともあろうかと」
     そう言って八戒はポケットからサバイバルナイフを取り出した。そのグリップ部分は開くようになっていて、なんと中からは――釣り針と釣り糸が出てきた。
    「……お前、どこでそんな得体の知れない便利道具買ってくんの」
     用済みだとばかりに渡されたサバイバルナイフ、そのグリップ部分を明かりで照らしてよく見ると、小さく『MADE BY SIGINT』とある。
    「ほら、貴方はぐずぐずしないで地面を掘ってください」
    「へ、なんで」
    「餌もなしに魚が釣れるわけないでしょう。ミミズを探してください」
    「都会生まれのチンピラにそーゆーのあんま期待すんなよ……」
     そう言いつつも悟浄は地面にランタンを置くと、両手で土を掘り始める。八戒は糸に釣り針を結ぶと、手頃な木の枝を探し始めた。
    「……うおーい。いたぞー、ミミズ。……うわ、キモチワリ」
    「じゃ、さっそく釣りますかね」
     八戒は見つけた木の枝に、釣り針を装着した糸を結びつけ、針にミミズをセットする。ポチャン、とそれが小川の水面に垂らされた。
    「そういえば、貴方と僕との共同作業って珍しいですね」
    「んー? そーだっけ」
    「……こういうのって、なーんかいいですよね」
     八戒が笑顔で悟浄を振り仰ぐ。悟浄は立ち上がると肩をすくめて鼻先で笑った。
    「きっとそれを幸せって呼ぶんだよ」


    2018/12/08 05:13
    ※八戒のサバイバルナイフの元ネタ=メタルギアソリッド3
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