ホワイトデーなので「おい」
公園にいた猫と屈んで戯れていたライトに乗っかると不満気な声が聞こえる。
「ライトさんってほんとに動物に好かれますよね〜いいな〜」
ライトの不満気な声を無視して更にもたれ掛かると「重い」と声が聞こえる。
「ええ?僕自他ともに認める羽のように軽い男なんですよ?」
「…プロキシの方が軽い」
「ちょっと、それは反則…ていうか他の男の名前出さないでくれません?」
不満げな悠真の声を聞いてライトがふ、と小さく笑う。
のしかかってる悠真をそのままに立ち上がると後ろからあ〜と気の抜けた声が聞こえ首に巻きついていた腕が腰に回る。
「急に立ったら危ないじゃないですか、首絞めちゃいますよ」
文句を言いつつ背中に頭を押し付けてくる悠真にライトがおかしげにくつくつと笑う。
「で、今日はなんの用だ?」
「今日はホワイトデーだから会いに来たんですよ」
「ホワイトデー?」
何だそれ?と言いたげな声色にやっぱりなと悠真は思う。
イベント事に疎いライトなら知らないだろうと思っていた。
「バレンタインのお返しの日、ってやつ。まぁ元々一部の地域でしか無いものだったみたいだけど…恋人同士のイチャつく口実は多い方がいいでしょ」
「そんなもんあるのか」
「あるんですよ〜○○の日とか五万とありますからね〜で、話戻しますけど僕とデートしましょ」
「…バレンタインに何も渡してないが?」
「そうですか?貰ってますよいっぱい」
悠真がくるりとライトの正面に回り込む。
驚いたのかライトがびく、と小さく揺れた。
「会う度に貰ってます」
会う度にドキドキして、ふわふわと幸せな気持ちになる。
温かい微睡みのような幸福、けれど同時に烈火の如く激しい愛情は1度味わえばもう手放すことなんてできないくらい魅力的だった。
右目にかかる前髪をかきあげてライトと目を合わせる。
「だからお礼に今日はたんとあんたの好きな物も、好きな事もぜーんぶあげますよ」
赤みが差していく頬を軽くくすぐりつつ微笑めば耐えかねたのかぱっと顔を逸らしサングラスをかけ直す。
「……ならあんたが欲しい」
注意して聞かなければ聞こえないような小さな声で言われたそれに悠真はふは、と耐えきれず笑う。
「ほんと、可愛い人だな〜ライトさんって」
ライトの手を取ると恭しくキスを送る。
「もちろん、ライトさんがお腹いっぱいになって嫌ってなるくらいたんとあげますから…覚悟してて下さいね?」
顔を覗き込み微笑んでやれば赤いマフラーに顔が隠れる。
それでも髪から除く耳が真っ赤になっているのが見えるので照れていることは筒抜けだった。