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    Lupinus

    @lupi_eggplant

    テキストを投げ込むスペース/主刀/ファンチェズ

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    Lupinus

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    主さみ(男審神者×五月雨くん)初めての近侍をしてもらった日の夜のハプニング 主刀していない本丸の話

    #主さみ
    ##主刀

    「今日は一日お疲れ様、五月雨くん。明日も朝からよろしくね」
    「はい」
     新しくやってきた刀剣男士はしばらくのあいだ近侍として審神者のそばに仕える、というルールがいつからかこの本丸には存在する。まずはそれぞれの人となりを知ることから始めたいという審神者の希望によるものだ。
     昨日迎えたばかりの五月雨江もまた、初めての近侍としての一日を無事に終えた。夕食を済ませ、大浴場で他の刀たちとともに一日の疲れを癒やし、審神者の私室へ戻ったところである。
    「あっ、お布団は私が自分で敷くから大丈夫だよ。明日も今日みたいな感じで、朝から一日いっしょにいてもらって、初めての出陣もお願いしようかな」
     一人分の寝具を出しながら予定を伝え、さいごにお休みの一言で締めようと振り返り、そこでふと気付いた。
     風呂上がりの寝間着姿に着替えた五月雨は、閉めた障子の前に正座していっこうに動くようすがない。
    「だから五月雨くんはここで待っていなくてもいいんだよ、自分の部屋で休んでおいで」
     近侍をつとめる刀剣男士が、審神者と同室に控えていなければならないルールはない。五月雨にも他の江の刀たちと同じ一角に私室を用意してあるし、就寝時は原則としてそこを使うように伝えたつもりだったのだが。
    「いえ。近侍を命じられた以上、夜伽もつとめのひとつですから」
    「うん?」
     この本丸では耳慣れない単語が混じっている。
     思わず振り返って五月雨の顔を凝視するがこれといって表情に変化はない。言い間違えでもなければ冗談でもなさそうだ。
    「あ、あの。それは、えぇっと、誰かに教えてもらったのかな」
     しかし江の刀剣男士たちから出てきたアイデアとも思えない。中には茶目っ気のある刀もいるが、ここまで生々しい冗談を吹き込むとは考えにくい。
    「教えられたわけではありません」
     すなおに答えてくれる彼の性質を好ましいとは思うものの、ひとりで考えてこの結論に至ったとするとますます頭を抱えたくなる。常に変わらぬ落ち着きぶりが頼もしい、などと言っている場合ではない。
    「この本丸のものたちは、みな頭を慕っているようです。それはおそらく、こうして夜毎彼らと睦み合っているためだと考えました」
     どちらかと言えば、そうした行為に出ないからこそ慕われていると思いたい。
    「そ、そういうのはないかな、私は……今まで近侍をやってもらった子たちにもそんなお願いはしていないし、あなたにだってするつもりはないよ」
     まさに忠犬といった心構えを否定するつもりはないけれど、望みもしないのに夜を共にするなど、彼の主としてとても認められるものではない。
     まっすぐにこちらを見つめていた五月雨がすっと視線を下げる。
    「……そうですか」
     目線ばかりではない、声のトーンも明らかに沈んでいる。ほんものの犬ならばしっぽをしょんぼりと垂らしているところだ。
     こんなところでも感情をあらわにするのかと内心で驚いていると、さらに驚くべきつぶやきを漏らす。
    「頭とそのように過ごせることを心待ちにしていたのですが」
    「う、うん?」
     夜伽は近侍の義務という誤解をただすことが目的だった。何かの行き違いで、義務だからそうしなければならないと思い込んでいただけなのだと。
     けれどこの言い分は、五月雨自身が夜伽を楽しみにしていたとしか聞こえない。それもまた誤解にはちがいないから、そんなことはしないと伝えてやらなければならないのだが。
    「あ、あのね、五月雨くん」
    「はい」
     あの落胆を目の当たりにしてこのまま追い出すのも心苦しくて、続ける言葉が妥協点を探りはじめる。審神者として許される範囲で、彼の望みを叶えられる道はないものかと。
    「よ、夜伽といっても色々だと思うけど、えーと、あの。私としてはいわゆるその、契りを交わすまでは求めてないのだけど、一晩いっしょにいてくれたら心強いなぁ、とは思うんだよね」
     落としどころを模索するセリフはわれながら及び腰である。
    「だっ、だからあの、今夜は添い寝をお願いしてもいいかな。もう一度言うけどいっしょのお布団に入るだけで、それで何をするってわけじゃないからね」
    「もちろんです、頭が命じるのであれば。それに」
     即座に返ってきた答えはふだんの彼より少しだけ早口だった。簡潔な返答のあと、少しだけ間を置いて五月雨は続ける。
    「それに私にとっても、それはとても喜ばしいことですから」
     ふだんよりも確かに柔らかで、一言ひとことを確かめるように少しだけゆっくりと。

    <了>
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    「あんたは!」
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    それからじわ、と金色が滲んできて、嗚呼やっぱりと笑ってしまう。
    「なにがおかしい……いや、おかしいんだろうな、刀があんたが愛でようとしている物に突っかかるのは」
    またそうやって自己完結しようとする。
    手を引っ張って引き倒しても大倶利伽羅はまだうさぎを握りしめている。
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    だけど、やっぱり俺は人間で。
    生きている限り希望や 1288

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    おじさま審神者と猫耳尻尾が生えた大倶利伽羅のいちゃいちゃ
    猫の日にかいたもの
    大倶利伽羅が猫になった。
    完璧な猫ではなく、耳と尾だけを後付けしたような姿である。朝一番にその姿を見た審神者は不覚にも可愛らしいと思ってしまったのだった。

    一日も終わり、ようやっと二人の時間となった審神者の寝室。
    むっすりと感情をあらわにしているのが珍しい。苛立たしげにシーツをたたきつける濃い毛色の尾がさらに彼の不機嫌さを示しているが、どうにも異常事態だというのに微笑ましく思ってしまう。

    「……おい、いつまで笑ってる」
    「わらってないですよ」

    じろりと刺すような視線が飛んできて、あわてて体の前で手を振ってみるがどうだか、と吐き捨てられてそっぽを向かれてしまった。これは本格的に臍を曲げられてしまう前に対処をしなければならないな、と審神者は眉を下げた。
    といっても、不具合を報告した政府からは、毎年この日によくあるバグだからと真面目に取り合ってはもらえなかった。回答としては次の日になれば自然と治っているというなんとも根拠のないもので、不安になった審神者は手当たり次第に連絡の付く仲間達に聞いてみた。しかし彼ら、彼女らからの返事も政府からの回答と似たり寄ったりで心配するほどではないと言われ 2216

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    MOURNING主くり

    共寝した次の日の寒い朝のおじさま審神者と大倶利伽羅
    寒椿と紅の花
     
     ひゅるり、首元に吹き込んだ冷気にぶるりと肩が震えた。腕を伸ばすと隣にあるはずの高すぎない体温が近くにない。一気に覚醒し布団を跳ね上げると、主がすでに起き上がって障子を開けていた。
    「あぁ、起こしてしまったかな」
    「……寒い」
    「冬の景趣にしてみたのですよ」
     寝間着代わりの袖に手を隠しながら、庭を眺め始めた主の背に羽織をかける。ありがとうと言うその隣に並ぶといつの間にやら椿が庭を賑わせ、それに雪が積もっていた。
     ひやりとする空気になんとなしに息を吐くと白くなって消えていく。寒さが目に見えるようで、背中が丸くなる。
    「なぜ冬の景趣にしたんだ」
    「せっかく皆が頑張ってくれた成果ですし、やはり季節は大事にしないとと思いまして」
     でもやっぱりさむいですね、と笑いながらも腕を組んだままなのが気にくわない。遠征や内番の成果を尊重するのもいいが、それよりも気にかけるべきところはあるだろうに。
    「寒いなら変えればいいだろう」
    「寒椿、お気に召しませんでしたか?」
     なにもわかっていない主が首をかしげる。鼻も赤くなり始めているくせに自発的に変える気はないようだ。
     ひとつ大きく息 1374

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    MOURNING主くり
    軽装に騒ぐ主を黙らせる大倶利伽羅

    軽装に騒いだのは私です。
    「これで満足か」
     はあ、とくそでかいため息をつきながらもこちらに軽装を着て見せてくれた大倶利伽羅にぶんぶんと首を縦に振る。
     大倶利伽羅の周りをぐるぐる回りながら上から下まで眺め回す。
    「鬱陶しい」
    「んぎゃ!だからって顔つかむなよ!」
     アイアンクローで動きを止められておとなしく正面に立つ。
     ぐるぐる回ってるときに気づいたが角度によって模様が浮き出たり無くなったりしていてさりげないおしゃれとはこういうものなんだろうか。
     普段出さない足も想像よりごつごつしていて男くささがでている。
     あのほっそい腰はどこに行ったのかと思うほど完璧に着こなしていて拝むしかない。
    「ねえ拝んでいい?」
    「……医者が必要か」
     わりと辛辣なことを言われた。けちーと言いながら少し長めに思える左腕の袖をつかむとそこには柄がなかった。
    「あれ、こっちだけ無地なの?」
    「あぁ、それは」
     大倶利伽羅の左腕が持ち上がって頬に素手が触れる。一歩詰められてゼロ距離になる。肘がさがって、袖が落ちて、するりと竜がのぞいた。
    「ここにいるからな」
     ひえ、と口からもれた。至近距離でさらりと流し目を食らったらそらもう冗談で 738

    Norskskogkatta

    MOURNINGさにちょも
    桃を剥いてたべるだけのさにちょも
    厨に行くと珍しい姿があった。
    主が桃を剥いていたのだ。力加減を間違えれば潰れてしまう柔い果実を包むように持って包丁で少しだけ歯を立て慣れた手付きで剥いている。
    あっという間に白くなった桃が切り分けられていく。
    「ほれ口開けろ」
    「あ、ああ頂こう」
    意外な手際の良さに見惚れていると、桃のひとつを差し出される。促されるまま口元に持ってこられた果肉を頬張ると軽く咀嚼しただけでじゅわりと果汁が溢れ出す。
    「んっ!」
    「美味いか」
    溺れそうなほどの果汁を飲み込んでからうなづいて残りの果肉を味わう。甘く香りの濃いそれはとても美味だった。
    「ならよかった。ほら」
    「ん、」
    主も桃を頬張りながらまたひとつ差し出され、そのまま口に迎え入れる。美味い。
    「これが最後だな」
    「もうないのか」
    「一個しか買わなかったからな」
    そう言う主に今更になって本丸の若鳥たちに申し訳なくなってきた。
    「まあ共犯だ」
    「君はまたそう言うものの言い方を……」
    「でもまあ、らしくないこともしてみるもんだな」
    片端だけ口を吊り上げて笑う主に嫌な予感がする。
    「雛鳥に餌やってるみたいで楽しかったぜ」
    「…………わすれてくれ」
    差し 588