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    Norskskogkatta

    @Norskskogkatta

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    Norskskogkatta

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    主さみ(男審神者×五月雨江)
    顕現したばかりの五月雨を散歩に誘う話
    まだお互い意識する前

    #主刀
    mainBlade
    #主さみ

    きみの生まれた季節は


    午前中から睨みつけていた画面から顔をあげ伸びをすれば身体中からばきごきと音がした。
    秘宝の里を駆け抜けて新しい仲間を迎え入れたと思ったら間髪入れずに連隊戦で、しばらく暇を持て余していた極の刀たちが意気揚々と戦場に向かっている。その間指示を出したり事務処理をしたりと忙しさが降り積もり、気づけば缶詰になることも珍しくない。
    「とはいえ流石に動かなさすぎるな」
    重くなってきた身体をしゃっきりさせようと締め切っていた障子を開ければ一面の銀世界と雪をかぶった山茶花が静かに立っていた。
    そういえば景趣を変えたんだったなと身を包む寒さで思い出す。冷たい空気を肺に取り入れ吐き出せば白くなって消えていく。まさしく冬だなと気を抜いていたときだった。
    「どうかされましたか」
    「うわ、びっくりした五月雨か、こんなところで何してるんだ」
    新入りの五月雨江が板張りの廊下に座していた。
    「頭に護衛が付かないのもおかしいと思い、忍んでおりました」
    「本丸内だから滅多なことはそうそうないと思うが……まあ、ありがとうな」
    顕現したばかりの刀剣によくあるやる気の現れのような行動に仕方なく思いつつ、しゃがみこんでわしゃわしゃと薄紫色の細い髪をかき混ぜれば切れ長の目を丸めて見上げてくる。
    「あー……悪い。許可もなく触って」
    「嫌ではありません。まさか何もなくてもこうして触れてくださるとは思わなかったので」
    マフラーを引き上げ口元を隠しているが手を退かさないあたり不快に感じてはないようだし雰囲気がどこか嬉しそうだ。
    何故だか五月雨江はふとした時に撫でてしまいたくなるような気持ちになるのだ。犬耳やら尻尾は欺く為なのだと言いながら犬の鳴き真似をしてみせたり、誉をとれば褒美はなんだと聞いてきたりするからだろうか。
    嫌がられなかったのをいいことにもう一度髪を掬っていると耳が赤くなっていることに気がついた。だいぶ長い時間外にいたのだろうか。
    「寒かったろ、耳冷たくなってる」
    つけ耳のない方を手のひらで覆えばひんやりとしている。
    「頭の手は暖かいですね」
    「……あんまり冷えすぎると体調を崩すから気をつけろよ」
    すり、と手のひらに頬を擦り寄せられぐらりと揺らいだ。取ってつけたような忠告にわかりましたと聞き分けのよい返事を受け取りながらそっと手を離せば薄紫の視線がそれを追っている。
    「そういえば頭はなにか御用があって出ていらしたのではないですか」
    「あ、ああ。ひと段落ついたから体動かしがてら散歩にでも行こうかと」
    「でしたら護衛はお任せを。頭は存分に庭を散策なさってください」
    「五月雨はどうするんだ」
    「忍びます」
    「いや、それなら隣に居なさいよ」
    任務の時のように気を引き締めた五月雨江についつっこんでしまった。まさか散歩の供をするではなくどこからともなく見守っていると言われるとは思わなかったのだ。なんだか面白くなってきて片手で顔を覆っていると五月雨江が返す。
    「頭がそう仰るのでしたら、共いたします」
    「ん、そうしてくれ」
    立ち上がり歩き出せば五月雨江もついてくる。すぐ後ろについてきているのに一人分の足音しかしない廊下を進んでいるとぽつりと声がした。
    「実は私もこの庭を歩いてみたかったのです」
    「どうして」
    「初めて目にした季語ですから。それと、私が顕現したのはこの時なのだと風景の中に立って実感してみたかったのです」
    芭蕉の句を引用したり季語を気にする刀らしいと思った。
    「そうか。これからいろんなものがみられるだろうから楽しみにしておくといい」
    玄関を出て雪への記念すべき一歩目。どうするかと眺めていればぴたりた固まってからさくさくさくと歩き始めた五月雨江に実家で飼っていた犬を思い出した。
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    Norskskogkatta

    Valentine主くり♂くり♀のほのぼのバレンタイン
    料理下手なくり♀が頑張ったけど…な話
    バレンタインに主にチョコ作ろうとしたけどお料理できないひろちゃんなので失敗続きでちょっと涙目で悔しそうにしてるのを見てどうしたものかと思案し主に相談して食後のデザートにチョコフォンデュする主くり♂くり♀
    チョコレートフォンデュ一人と二振りしかいない小さな本丸の、一般家庭ほどの広さの厨にちょっとした焦げ臭さが漂っている。
    執務室にいた一振り目の大倶利伽羅が小火になってやいないかと確認しにくると、とりあえず火はついていない。それから台所のそばで項垂れている後ろ姿に近寄る。二振り目である妹分の手元を覗き込めば、そこには焼き色を通り越して真っ黒な炭と化した何かが握られていた。
    「……またか」
    「…………」
    同年代くらいの少女の姿をした同位体は黙り込んだままだ。二振り目である廣光の手の中には審神者に作ろうとしていたチョコレートカップケーキになるはずのものがあった。
    この本丸の二振り目の大倶利伽羅である廣光は料理が壊滅的なのである。女体化で顕現したことが起因しているかもしれないと大倶利伽羅たちは考えているが、お互いに言及したことはない。
    2051

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    DONE男審神者×五月雨江(主さみ)の12/24
    つきあってる設定の主さみ クリスマスに現世出張が入った話 なんということもない全年齢
    「冬の季語ですね」
    「あっ、知ってるんだね」
    「はい、歳時記に記載がありましたので。もっとも、実際にこの目で見たことはありませんが」
    「そうだよね、日本で広まったのは二十世紀になったころだし」
     さすがに刀剣男士にとってはなじみのない行事らしい。本丸でも特にその日を祝う習慣はないから、何をするかもよくは知らないだろう。
     これならば、あいにくの日取りを気にすることなくイレギュラーな仕事を頼めそうだ。
    「えぇとね、五月雨くん。実はその24日と25日なんだけど、ちょっと泊まりがけで政府に顔を出さないといけなくなってしまったんだ。近侍のあなたにも、いっしょに来てもらうことになるのだけど」
     なぜこんな日に本丸を離れる用事が入るのかとこんのすけに文句を言ってみたものの、12月も下旬となれば年越しも間近、月末と年末が重なって忙しくなるのはしょうがないと押し切られてしまった。
     この日程で出張が入って、しかも現地に同行してくれだなんて、人間の恋びとが相手なら申し訳なくてとても切り出せないところなのだが。
    「わかりました。お上の御用となると、宿もあちらで手配されているのでしょうね」
     現代のイベント 1136

    Lupinus

    DONE主さみ(男審神者×五月雨くん)初めての近侍をしてもらった日の夜のハプニング 主刀していない本丸の話「今日は一日お疲れ様、五月雨くん。明日も朝からよろしくね」
    「はい」
     新しくやってきた刀剣男士はしばらくのあいだ近侍として審神者のそばに仕える、というルールがいつからかこの本丸には存在する。まずはそれぞれの人となりを知ることから始めたいという審神者の希望によるものだ。
     昨日迎えたばかりの五月雨江もまた、初めての近侍としての一日を無事に終えた。夕食を済ませ、大浴場で他の刀たちとともに一日の疲れを癒やし、審神者の私室へ戻ったところである。
    「あっ、お布団は私が自分で敷くから大丈夫だよ。明日も今日みたいな感じで、朝から一日いっしょにいてもらって、初めての出陣もお願いしようかな」
     一人分の寝具を出しながら予定を伝え、さいごにお休みの一言で締めようと振り返り、そこでふと気付いた。
     風呂上がりの寝間着姿に着替えた五月雨は、閉めた障子の前に正座していっこうに動くようすがない。
    「だから五月雨くんはここで待っていなくてもいいんだよ、自分の部屋で休んでおいで」
     近侍をつとめる刀剣男士が、審神者と同室に控えていなければならないルールはない。五月雨にも他の江の刀たちと同じ一角に私室を用意してあるし 1865

    Norskskogkatta

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    「とはいえ流石に動かなさすぎるな」
    重くなってきた身体をしゃっきりさせようと締め切っていた障子を開ければ一面の銀世界と雪をかぶった山茶花が静かに立っていた。
    そういえば景趣を変えたんだったなと身を包む寒さで思い出す。冷たい空気を肺に取り入れ吐き出せば白くなって消えていく。まさしく冬だなと気を抜いていたときだった。
    「どうかされましたか」
    「うわ、びっくりした五月雨か、こんなところで何してるんだ」
    新入りの五月雨江が板張りの廊下に座していた。
    「頭に護衛が付かないのもおかしいと思い、忍んでおりました」
    「本丸内だから滅多なことはそうそうないと思うが……まあ、ありがとうな」
    顕現したばかりの刀剣によくあるやる気の現れのような行動に仕方なく思いつつ、 1555