葡萄を一粒摘み上げる印さん。皮を少し剥いてakt君の口に持っていく。黒く艶めく葡萄から溢れた汁が彼の指先を赤黒く染めている。
少し口を開くとつるりと口内に入り込む果肉。皮が摘み上げられ皿の上に乗せられる。印さんの唇がキュッとあがっていて、自分に食べさせる事を楽しんでいるのはわかる。けど、なんでこんなのが楽しいんだろう?
手を汚すから食べさせてあげるなんて言われてこうしてるけれど、子供じゃないのになんだか少し恥ずかしい。
飲み込み終わったのを見計らいまた唇に一粒押し当てられて、さっきより大きな口を開けたせいか印さんの指ごと口に入れてしまう。
あっと思って口を離そうとするも反射的に指を軽く噛んでしまってもごもご咀嚼しながら慌てて謝るakt君。ふふふと笑いながら大丈夫だと印さんが葡萄と茎からぷちと離して自分の口に運ぶ。
薄く歯形のついた、さっき口の中に入った指が彼の口に入っていく。唇から覗く白い歯の更に奥、艶かしい真っ赤な舌がちらりと見えて唾を飲みこむakt君。
『甘くて美味しいな。買って正解だった』
同意を求められるもakt君は彼の唇から目が離せず上の空。それを楽しそうに見てはまた葡萄を食べさせようとする印さんの服の袖をきゅうと握って軽く引っ張る。今は果実でなくあなたの舌がほしい。
印さんも葡萄よりakt君に自分を食べさせたい。akt君にとって彼からの愛は何より甘く滴る蜜だ。一度啜ればそれ以外を甘いと感じられなくなるような、他の愛を受け付けなくなる程の甘美な劇毒。
さあ残さず食べておくれ私たちの可愛い子。
放置された葡萄は帰宅した棒さんが褥から聞こえてくる音で全てを察した後ラップして冷蔵庫に入れました。後で私も食べさせあいっこしようっと
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