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    minato18_

    一時的な格納庫

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    minato18_

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    甲操/現パロ
    霊媒体質な春日井くんと、視えるけど払えない操ちゃん。

    第四話
    「ほんとは甘えたがりの君」

    ##甲操
    ##霊媒体質春日井くん

    霊媒体質春日井くん 第四話 魔が差した。それ以外に言いようがない。
    「くるす~」
    「………」
     すっかりできあがった状態で自分の腰に抱きついてくる恋人を見下ろしてため息を零す。
     酔うとキス魔になる甲洋は、操がそれを知ってからというもの家で酒を飲まなくなった。これまでもそんなに飲んでいたわけではなかったが、授業やバイトで疲れた時に一缶くらい空けることはあった。
    「もう来主に醜態を見せたくない」
     どうして飲まないのかと聞いたら苦虫を百匹くらい噛み潰したような顔でそう返された。
     別に醜態なんかじゃなかった、可愛かったよ、と言ったら三日程口を聞いてもらえなかった。そんなに嫌だったのだろうか。いつももっと情けない姿を見せてる癖に。
     ポルターガイストで涙目になりながら自分に縋りついてくる様を思い返してくすくすと笑っていたら服がぐいっと引っ張られた。
    「くるす、なにかんがえてるの」
     不満げな顔の甲洋がこちらを見上げてくる。うぅーとぐずりながら構ってと言わんばかりに胸元を引っ張ってくる様は子どものようでとても可愛い。君ほんとに成人してるの?
    「甲洋のこと考えてたよ」
    「うそだぁ」
    「嘘じゃないって」
     あやすように頭をぽんぽんと撫でてみるがどうにも納得できないようで、甲洋は赤く染まった頬をぷくっと膨らませた。
     お酒って怖いな。近くに転がっている瓶を見てしみじみとそう思った。
     さて、これからどうしよう。久しぶりに見た可愛い恋人をひたすら可愛がるのもありかもしれない。
    「くるす!」
     不意に視界が反転した。さっきまで見下ろしていた甲洋を見上げる形になる。押し倒されたことは分かるが理解は出来なかった。こんなふにゃふにゃしてるのにどこにそんな力があるんだ。
    「ちゃんとおれをみてよ」
    「だから見てるってば」
    「みてないっ」
     ぽたっと何かが顔に落ちてくる。それが甲洋の涙であると認識するのに時間は要らなかった。
    「こ、甲洋…?」
     様子がおかしい。そっと頬に手を伸ばそうとしたとき、バチッという鋭い音が鳴った。続けざまに涼やかな音色が聞こえてきた。玄関近くに置いてある鈴の音だ。
     部屋の外に『何か』がいる。
     咄嗟に起こそうとした身体は甲洋によって床に縫い留められた。痛いほどに抱きしめられる。
    「どこにいくの、くるす」
    「…っ、甲洋も聞こえたでしょ。総士に連絡しなきゃ」
    「しなくていい」
     バチッ。
     また鋭い音が走る。鈴の音が段々と騒がしくなる。本格的に危険を感じて腕から抜け出そうともがくがびくともしない。だからどこにそんな力があるんだ。
    「なんで……? くるす、おれのこときらい?」
    「ちが…っ、そうじゃないけど…!」
    「やだぁ…っ! おいてかないで…っ!」
     耳元で聞こえる声は涙に濡れていた。ぎゅうぎゅうと更に腕に力が込められる。バチバチと断続的に鳴り続ける音が大きくなってきた。まるで、甲洋の心に呼応するように。
     ……もしかして、甲洋が『呼んでる』のか?
     この恋人は歩いてるだけで幽霊を引き寄せる。そんな超が付くほどの霊媒体質人間が心に隙をつくれば、付け入るモノが現れてもおかしくはない。

              私がいるよ。
      こっちを見て。 
                 一緒に遊ぼう。

     ついには『声』まで聞こえてくる始末。一刻も早く甲洋を安心させなくては。でもどうやって?
     必死に思考を回す。こういうのは総士の仕事なのに。悩んでいる間も甲洋は泣き続けていた。ここまで泣かれると霊だの何だの関係なく胸が苦しくなる。
    「……甲洋」
     泣き声が小さくなり、甲洋がこちらを向く。濡れた灰色の瞳を真っ直ぐ見つめてからそっと唇を重ねた。
     これで状況を打破できるかは分からないけれど、とにかく甲洋を安心させたかった。
    「ん…」
     大きく見開かれた瞳が安心したように細められ、そのまま全てを操に委ねるように閉じられた。



     どれくらいそうしていただろう。気が付いた時には霊障は収まっていたし外の気配もなくなっていた。
     腕の中にはすぅすぅと寝息を立てる甲洋がいる。いつの間にか立場が逆転していた。床で眠ってしまったせいで身体が痛い。
    「……ごめんね、甲洋」
     自分の我が儘で泣かせてしまった。起きたらなんと言って謝ろうと考えながら赤くなった目元を撫でる。するとくすぐったかったのか甲洋が身じろぎをした。
    「くるす……おいてかないで……」
    「………」
     酔った時に出るのは人間の本性だと聞いたことがある。それを真に受けているわけではないが、あながち間違いではないだろうとも思う。
    「馬鹿だなぁ、甲洋は」
     置いていかれることがあるとしたら、それはきっと俺の方だ。
    「ん…」
     小さな声が聞こえた。ゆっくりと瞼が持ち上がり、灰色の瞳が覗く。
    「起きた? 甲洋」
    「くるす……」
     まだ酔いが醒めていないのか舌ったらずに名を呼ばれた。しかも寝起きの掠れた声で。どきりと胸が高鳴ったのを誤魔化すように抱きしめる。
    「まだ夜だから寝てていいよ」
    「んぅ…」
     やだやだというように首を横に振った甲洋は、離さないとばかりにぎゅっと抱きしめ返してきた。
    「くるす……きすして……?」
    「また? ほんとに好きだね」
     呆れたように笑いながらも素直に要望に応えることにする。
     酔った甲洋がどうしてキスをしたがるのか。どうしてあんなにも泣いていたのか。その理由が、今なら少しだけ分かる気がするから。
     大丈夫。俺はここにいる。絶対に君をひとりにしないよ。
     そんな想いを込めながら唇を重ねると、間近にある灰色の瞳が安心したように細められた。背中に回されていた手で優しく頭を撫でられ、心地良さに目を閉じる。
     これからは俺がいないところで酒を飲ませないようにしよう。そう強く誓いながら。
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