きれいなひと勝鬨の響きが収まりつつある中、近づいてくる顔は落ち着き払っていた。得物を背にして郭嘉の下へやってくると淡々と戦果を報告してくれる。真っ先に訪れるのが総大将ではなく軍師の己で良いのか、少々気にはなるが優先される気分は悪くない。寧ろ最初に紫鸞の無事を知ることが出来て、勝ち戦だけでは味わえないじんわりとした喜びが全身に回っていった。
赤ん坊のような顔の紫鸞は郭嘉が妙に微笑んでいるのを不思議に思ったようだ。透き通った瞳が疑問を投げている。
「せっかく綺麗なのだから、汚したままではいけないよ」
涼しげな表情に対して白い頬は泥が付着していた。狭くない戦場を駆け回り拠点を奪取したり敵将を討ち取ったり、鳥よりも忙しなく飛び回るのだから当然だろう。彼の頑張りの証でもある、しかし汚れたままで諸将と会う必要もない。郭嘉は指先で彼の頬を擦ってやった。幸いにも乾いた泥だっため軽く拭うだけで簡単に落ちていく。
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