星瞬を手に占星術師リツカくんと、星にも占いにも興味がなかったがリツカくんには興味をもった王子様のリチャードの話。
リツカくんはリチャードと同じ年頃で境遇としては今のとこ国が揺らいだり不況にならない限りは国の占星術師達のうちの一人としてやっていけるくらい。
リチャードの婚約者問題については従来のリチャード一世らしく「まぁ王子だしな!それに結婚は騎士の1歩のようなものだ!」という認識しててその辺の占いもリツカくんがする事に。
国家の争いについては兄がいるために深くは知らないが自分にはあまり向いてないことは気づいている、武の面の方が自分には適してるという感じだから、今回の世界線では1人の騎士としてリチャードの話をすすめる。
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ここからリチャードがリツカくんと関わる姿を見かけた周囲の人が、「あの王子が占星術に興味を!」となるが実の所リチャードのその視線はリツカが指さした夜空でも、図解でも無く、リツカくんの笑顔や語る口に向いていて…
リツカくんはリチャードが訪れる度にとても真剣に嬉しそうに占星術の話をします。けど星には詳しくとも、リチャードの言わんとしてること、恋愛的なものにはかなり疎かった。だからリチャードへの星読みで、リチャードには今欲しているものがあることや、それに近づこうとしてる、のを当てつつもその対象が自分とは全く気づいておらず、そのためリチャードに「もしやこれが宮廷風恋愛と呼ばれるものですか!?応援してます!」と天然のように言い放ってしまい、リチャードが呆然として固まるなど。
「結婚の占いの件も、俺もっと詳しく見てみるから!」と、リチャード的には自分の好きな人が自分と自分の好きでない人の恋愛を成就させようとしてくる…という悲しきことが発生してる。
ちょっと暫く傷心モードになり、ならばいっそとリチャードらしく獅子心を猛らせてリツカくんへ恋愛を教えようとしたり…
しかしその恋愛心を少しずつ聞き始めたリツカくんは、以前はよく当てていたはずの占いが少しずつ外れ始めてしまい…同じ占星術師達から調子が悪いなと心配されて、申し訳なさそうにする。そしてリツカくんが最近のリチャードの占星術結果の政略結婚の件を持ち上げた時「けど最近リチャード王子もかなり詳しくなって…そういえばこの結果にもある結婚といえば、宮廷風恋愛は俺は詳しくなかったのですが、彼が教えてくれて」と告げた辺りで占星術師達が戦慄した。
"恋愛"という、邪をこの無垢な占星術師のリツカくんへ教えてしまったことでリツカくんの占星術結果がブレ始めたと考えて、リツカくんへ「王子のその話には耳を貸すな、長せ。聞くふりで良い。そしてその事を考えるな」と突如戒めを受ける。リツカくんは困惑しながらも頷くしか無かった。
初めは少しの注意、しかしそれでもリチャードの話に耳を貸してしまうから。リチャードの塔への立ち入りは禁止されることになった。しかし例え塔に登れなくともリチャードは別の方法、楽器で奏でた音を塔の上のリツカくんの元へ届けてしまうんだ。
リツカくんはそれを聞いてやはりまた、占いの結果を”うっかり塔から落としてしまったり”してリチャードが見つけてというやり取り。しかしそれがバレて、とうとうリツカくんはリチャードについての占星術を禁止されて彼の情報をえる術も伝えることをも絶たれてしまう。
そしてリチャードが塔の上にリツカくんが現れなくなったことを監視に尋ねたら、彼は少し前に遠くの観測塔へ言ったと言われ、直後すぐさま馬を走らせた。
軽い武器、軽装で供もつけず夜に飛び出していった。その監視がそれをみてあわてて王子が夜に城を出たと報告に行った時既にその姿は遠く、夜道やそもそも大人でもない王子が外を一人で馬で走るなどとても危険なことだった。
リツカくんは地方塔でかつてのように占星術をしていたが、近くで聞こえた楽器の音色にかつてのリチャードを思い出す。
禁止されていたけど、少しだけなら。結果は直ぐに燃やせばバレないとリチャードの占星術をしたところ、彼に死の予兆が見えて。
大急ぎで伝えに行こうとした矢先に、これを伝えれば自分は禁止事項を破ったとして罰せられる。
けどこのまま伝えずにいたらリチャードは…
部屋の火が揺れた時、リツカくんはもう既にこの結果を持ってここの責任者に伝える決心をしていたのだった。
リツカくんは上に言われていた"リチャードに関する占星術をする"という禁止事項を破った事で、先の結果を伝えた時点で牢に。
それはそれとして、リツカくんのその覚悟を見て、そしてリツカくんのその占星術の能力への信頼から責任者は即座に塔から周辺の兵に協力を要請。
その後リチャードが野盗に襲われかけ、数と少ない武器のせいで殺されかけた時に兵が間に合い救出。
リツカくんの占星術の正しさが示されたと同時に、塔でリツカくん個人に禁止されていた"リチャードについての占星術"を行ったことが確定。
リツカくんはその禁止事項を破った事で国抱えの占星術師という立場を追われることに。
しかし本来であれば罪人としてなるところを、王子の命を救ったというのを塔の責任者が弁護してリツカくんを追放という状態に留めた。
その間、リチャードはリツカくんと会うことはなく、リツカくんもリチャードと会うことはない。
それから数年後。
そのあとリチャードは騎士となるんだけど、そのある場所での泊り宿でよく当たる占い師の噂を聞く。
特に夜に占いをする人で、星が輝く夜は本当に何もかも当ててしまうらしい。まるでずっと見守っていたかのように。黒い髪に夜空のような青い瞳…名前は…
そう聞いてリチャードは直ぐにその場所に走った。
そこで「…次のか、…た」目を大きく開き星がいた。リチャードにとって唯一無二の、一等星。
「…占いを、1つ」
そう言って椅子に腰かける。
占い師は驚きつつも静かにその目を閉じて尋ねた
「…あなたの知りたいことは…なんでしょうか?」
「…かつて、俺の命を救った想い人が居た。皮肉にも"宮廷風恋愛"らしく、この想いが届くことはなかったんだが… もし次出会えた時に、そいつに想いを伝えたら答えがどうなるか。…占ってくれ」
青年は息を飲んだ。
「それは……」
「…ダメか?」
「…できません」
リチャードは拳を握りしめる、瞳を閉じて呼吸を詰まらせて口を閉ざす。そして息を大きく吸い込み、吐いた。苦しそうにそうした矢先だった。
「…だって、占う必要も無いことでしょう。
きっとその応えは星の導きがなくとも分かりますから、ね。…リチャード」
一等星が瞬いたその夜、1人の騎士は初めて星を手にしたのだった。