初めての野営冷たい風に頬を撫でられて、薄く目を開く。あれ、長屋の壁が見えない。
「起きちゃった?」
小平太の声が降ってくる。いつもの元気な声と違って、押し殺したみたいな小さな声だ。数回まばたきをして、やっと今は野営の実習中なのだと思い出せた。
同じ班になったみんなの知恵をかき集めて、ようやく張れた天幕の下、横になった長次を小平太が見下ろしている。そうだ、小平太は一人で寝ずの番を。
「眠れないなら、こうしとく!」
小平太が長次の手をとって、指と指をきゅっと絡める。そんな、こんな子供っぽいこと、同級生たちがいるのに。
「恥ずかしいよ……」
「そうかなあ?他のやつらも、ほら」
言われて見渡すと、三々五々眠っている忍たまたちも、いつのまにか同室どうしでぴったりと身を寄せあっていた。
納得して瞼を落とすと、あっさりと睡魔が訪れる。
夢へと落ちていく意識のなか、長次はぼんやりと思う。いつか私も、みんなも、一人で眠れるようになるんだろうな。なんだかそれがさみしいような気もするけれど。