ある日の夢②声が出なくなった。
喉ががらがらに掠れて、いくら息を絞り出しても音にならない。うーうー唸っているとみんなに笑われた。悔しくて大きな声で怒りたいのに、それもできない。自分の中にどんどんいらいらが溜まって、頭が熱くなって、破裂しそうだった。
「ちょおじ」
はっと目を開けると、小平太が私の顔を覗き込んでいた。
「うなされてたぞ」
「うん……、いやな夢見た」
「こわい夢?」
「声が出なくなって、だれにも言いたいことを分かってもらえないの」
半分布団に潜ったままぐずついた声で言うと、小平太は私の頭をぽんぽんと撫ぜた。
「夢の中で、私もちょうじの言いたいこと、分かってなかった?」
「こへいたは……、出てこなかった」
私は、夢の中の友人たちをよく思い返しながら答えた。小平太がにかっと笑う。
「大丈夫、もしほんとにちょうじの声が出なくなっても、夢とちがって私がいるから」
まだ顔に傷ができる前の、懐かしい夜のこと。