「やっとひと段落しましたね」
「ああ、これでとりあえず住める状態にはなったな」
そう言いながら雨彦とクリスは、ビールの缶を開けた。
長らく恋人という関係を続けてきた雨彦とクリスは、紆余曲折の末に二人で生活を共にすることにした。部屋を決め、家具を買い、それぞれに準備を進めて、やっと引っ越しの日を迎えたのが今日のことだ。
引っ越し当日というのは慌ただしいもので、家具の搬入に必要なものの荷解きにと、やらなければいけないことが山ほどある。やっと暮らせる環境が整った頃にはすっかり日が沈み、二人はくたくたになっていた。
せっかくの初日なのだから、何か特別なことがしたい気持ちはあったが、疲れには勝てない。相談の末、結局宅配サービスで好きなだけ料理を頼もうということになった。
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