「実はスタッフさんからこちらのチケットをいただいたんです。よければこの後三人で行ってみませんか?」
隣県でのロケの後、にこにこと笑みを浮かべるクリスが取り出したのは、近くのロープウェイと観覧車を利用できるチケットだった。
街中を運行するロープウェイや街のシンボルである大観覧車は、港に面した街並みを眺めるにはうってつけなのだという。海をこよなく愛するクリスにとっては、こうした施設も魅力的なものなのだろう。
雨彦には、特に誘いを断る理由もない。頷きかけたところで、ひと足早く想楽が口を開いた。
「ごめんねクリスさんー。僕はちょっと行ってみたいところがあるから、雨彦さんと二人で行ってきてー」
やんわりと断りを入れながら、赤い瞳がチラリと雨彦を見る。そこから言外に読み取れるメッセージは「しっかりやれ」だろうか。
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