真実と秘密「留三郎、雑渡さんのこと覚えてたんだね」
笑顔で仁王立ちをする伊作に何も言葉を返せず、視線を逸らす。長次が断片的にしか記憶がないと言っていたから、誤魔化せると思っていたのだ。それに本当は雑渡さんにすら明かすつもりはなかった。
(……結果としては良かったけど)
両思い──それも前世の頃からそうであるとわかったのだから、浮かれてしまっても仕方がないだろう。顔も逸らすついでにニヤけそうになる口元を隠すと、顔を逸らした先には小平太がいた。
「留三郎はあの雑渡とかいう人のこと、昔から知ってたのか?」
不思議そうに首を傾げる小平太は、文次郎と同じく前世の記憶が全くない。全くないのに長次と出会った当初真っ先に遊びに誘ったらしいので、こいつらの絆は魂にでも刻まれてるんだろう。
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