ハドザム「は、ハドラー様……それは、その………!」
何やら頬を赤らめ慌てるザムザ。だが当のハドラーは涼しい顔で手を伸ばし、そしてひょいっとフライパンの上から程よく焼けている肉を一つ、摘み上げて口へと運んだ。
「うむ。なかなかいい味つけではないか」
そうと満足そうに言うハドラーに、ザムザは自分がとんでもない勘違いをしていた事に気がつき、顔色を更に赤くする。
「あ、味見ってそういう……い、いえ。何でも」
思い浮かべてしまった不埒な思いを、ぶんっと顔を振ることで吹き飛ばそうとする。だが、一度思い浮かべてしまったものは簡単には消えてはくれない。
「も、もうそろそろ出来上がりますので……」
向こうで座ってお待ちください。と、やはり頬は赤くしたまま。声を震わせるザムザにハドラーはどうしたのだと軽く首を捻るが……。
「ああ、そういう事か」
そう、呟いた。その口元には小さく笑みが浮かんでいる。
「ザムザ」
「は、はい!」
ザムザの肩に手を置き、そしてその耳元にハドラーは囁くように言った。低い声と、吐息とに擽られザムザはびくっと身体を震わせる。
「食事の後のデザート、期待しているからな」
それだけ言って、ハドラーはテーブルの席へと戻っていく。その後ろ姿を見送るザムザは、頭から湯気が出そうな程に真っ赤に茹で上がっていた。