『不思議なあの人の誕生日』今日は真波くんの誕生日。
朝の教室はいつも通り騒がしいけど、私の心はそれ以上にバクバクしてる。だって、同じクラスの真波くんの特別な日だ。ずっと片想いしてきた彼のために、昨夜こっそり作ったのは、真波くんの好物のおにぎり。梅干しと鮭、どっちも好きって前に話してたのを覚えてて、両方握った。さりげなく渡したいけど、クラスメイトの目もあるし…どうしよう。
「○○ちゃん、おはよ! なんだか今日、キラキラしてるね?」
教室の窓際、真波くんがいつものふわっとした笑顔で話しかけてくる。風みたいな軽やかな雰囲気と、キラキラした目にドキッとして、手に持った紙袋を慌てて机の下に隠した。
「う、うん、おはよう! 真波くん、今日は…いつも通りだよ?」
「ふーん、なんだか今日は特別な感じするんだよね。○○ちゃん、何か知ってる?」真波くんがニヤッと笑って、机に頬杖をつく。近い、近すぎる! 誕生日ってバレてる? いや、私の気持ちはバレてないよね…?
放課後、部活に行く前にチャンスを狙った。教室に残ってる人は少なくて、真波くんが荷物を入れている隙に、勇気を振り絞る。
「真波くん、ちょっと待って! あの…これ、差し入れ。部活、頑張ってね!」
紙袋をそっと差し出す。中には梅干しと鮭のおにぎり二つと、山をイメージした青と緑の小さなキーホルダー。誕生日って言葉は、あえて言わない。さりげなく、でも私の気持ちが伝わればいいな。
「え、○○ちゃん、ほんとー? なんだろう…おにぎり!? うわ、梅干しと鮭! ○○ちゃん、俺の好みバッチリじゃん!」真波くんは目を輝かせて紙袋を開ける。早速おにぎりを手に取り、教室の窓から差し込む夕陽の中でぱくりと一口。
「んー! めっちゃ美味しい! ○○ちゃん、最高だよー!」
その笑顔が眩しくて、胸がぎゅっと締め付けられる。片想いでも、この笑顔が見られるなら…なんて思ってたのに、真波くんが急に真剣な目で私を見た。
「○○ちゃん、さ。これ、誕生日プレゼントでしょ? 今日、俺の誕生日って知っててくれたんだ」
「えっ、…うそ///、バレてた!?///」
顔が熱くなる。さりげなくしたかったのに、真波くん、鋭い!
「だって、○○ちゃんがこんな風に俺のこと考えてくれるの、特別な日っぽいじゃん。…ねぇ、もしかして○○ちゃん、俺のこと、好き?」
突然の言葉に、頭が真っ白。教室の空気が一瞬止まったみたい。
「え、なっ///、なんで…!?///」
「だって、俺、○○ちゃんのこと好きだから。こうやって俺のためにおにぎり作ってくれる○○ちゃん、すごく可愛いって思ってる」
真波くんは少し照れながら、でもまっすぐ私の目を見て言う。風のような声が、教室の静けさにそっと響いた。
「真波くん…私も、真波くんのこと、ずっと好きだったよ」
やっと絞り出した言葉に、真波くんはふわっと笑う。
「そっか、両想いだね! ○○ちゃん、最高の誕生日プレゼント、ありがと!」
真波くんはキーホルダーをカバンにつけながら、教室の窓から見える山を指差した。
「なあ、○○ちゃん。来年の誕生日は、二人で山登りしながらおにぎり食べようよ。約束ね!」
「うん、絶対! 楽しみにしてる!」
夕陽に染まる教室で、真波くんの笑顔が私の心に新しい風を吹き込んだ。私たちの恋心は、おにぎり一つ分のさりげない幸せから生まれた。