2025-07-10
帰ったのはもうずいぶんと遅くなってからだ。
酒場のドアをくぐったとたん、わっと喧騒が耳をうつ。大小さまざまな傭兵たちがそう広くもない酒場にたむろしている。常連たちは慣れたもので、いかつい傭兵のことなどお構いなしに騒いでいるから、いつもの通りに大賑わいだ。
一応の旅の目的地であったミューズに居ついてひと月足らず。これからの話をする間もなく日銭を稼ぐ毎日だ。ミューズは隣国のハイランドと長く緊張状態で、稼げる仕事はいくらでもある。俺ともう一人ぐらいを食わせていくなんて簡単だ。だというのに本人はこの状態がどうやら我慢ならないらしく、ホウアン先生の所で何やら書類仕事なんて始めているようだった。
2135