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    浅葱みう

    @m_iu4655

    20↑  司レオ 文字倉庫

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    浅葱みう

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    4/26の司レオワンドロ・ワンライ(先輩/後輩)より続き
    レオ目線 数年後の世界線 同棲

    #司レオ
    ministerOfJustice,Leo.
    #小説
    novel

    司レオ 『かわいい子』 エンターキーを叩き、レオは凝り固まった身体を解すようにして両腕を天井へと向ける。部屋に置いてある時計に視線を向けると、昼を少し過ぎた時間だった。あぁ、今回は結構かかったんだな〜なんてことを考えながら、レオは数日ぶりに作業場のドアを開く。
     ぺち、ぺち。
     素足のままで歩く音がこんなにも響くということは、自分以外には誰もいないということなんだろう。そうは思いつつも、もしかしたら……なんて期待してしまうのだから救えない。レオはリビングに続くドアに顔を突っ込んで見渡してみるが、やはり目当ての人物の姿は見えない。
    「スオ〜……は、いないよなぁ」
     いないとは思いつつも落胆する。諦め悪く、司の名前を呼んでみるが勿論結果は変わらない。
     あーあ、会いたかったのに。レオは頬を空気で膨らませながら、傍らのソファーに沈み込む。ふかふかのソファーはスオ〜が選んだお気に入り。修羅場明けの疲れた身体を癒すのはいつもこの場所だった。最初の方は「bedで寝てください!」と騒いでいた司だったが、レオが一切譲らないでいるうちに諦めたらしい。
    「sofaでは疲れは取れませんのに……」
     なんて、最近では不機嫌にじとりと視線を向けてくるぐらいには落ち着いている。自分がわざわざこのソファーを選ぶ意味をあいつはきっと理解していないのだろう。
    「おまえが構ってくれるから、なんて教えてあげないけど」
     くすくす、とレオは笑みを溢す。成人してもなお、子供のようにして噛み付いてくる司が可愛くて、ついついからかってしまうのだ。あまり、やりすぎると自分が泣きを見るはめになるから、そこだけは注意しなくてはいけないのだけれど。
    「……ふ、」
     思わず熱を持ってしまった顔は、きっと誰にも見せられない程には分かりやすい。レオは周りに誰もいないことに安堵しつつ、脳裏に浮かんだ記憶から意識を逸らす。欲なんてなさそうな涼しげな表情から豹変するところなんて、こんな明るい時間から考えていいものではない。
     しかし、年下の恋人とはこんなに可愛いものなのだろうか。元々可愛い後輩ではあったけれど、付き合ってからは本当に可愛いという感情が湧き出てくる。司の仕事が終われば、邪魔しないように作業場のドアをそっと開く姿は何度か目にしている。レオに余裕があれば「どうした〜?」なんて積極的に構いに行ってしまう程だ。こんなに可愛いのだから、泉が『ゆうくん』を猫可愛がりするのも頷ける。
    「スオ〜は可愛くてかっこいの歌ができそう」
     上機嫌で、レオは指を宙に踊らせる。同じようなタイトルの歌は数え切れない程に生まれてきた。追加でもう一曲増えたところで誰も困らないはず。レオは思いついた霊感を形にすべく、ローテーブルの上に置いてあった五線譜に手を伸ばすのだった。

     実を言えば、最初からこんなに円満であったわけではない。そもそも弱みを人に見せることは苦手であるし、何より司は年下だ。妹と接するように、なるべくなら格好悪いところなんて見せたくはなかった。
     甘えたい気持ちと、甘えたくない気持ち。相反する感情にどうしようもできなくなって、レオは作業場に引きこもったことがある。誰にも相談できなかった。司と付き合っていることはユニットのメンバーや仲の良い面々であれば周知の事実ではあったけれど、赤裸々に語るには自分たちの抱えている柵は大きすぎる。同性で、アイドルで、後輩で……アイドルたちは自分たちを貶めることなんてないとは分かりつつも、どこから漏れるか分からない。おれだけならいいけど、スオ〜を悲しませたくない。ぐちゃぐちゃな感情を持て余し、一人で隠れていたレオを救ってくれたのは他でもない司本人だった。
    「レオさん、どうしたのですか」
     鍵をかけたドア越しに、司は穏やかな声で問う。
    「……ごめん、放っておいて」
    「いいえ、それはできません。あなた、そうやって一人で抱え込んでしまうの悪い癖ですよ」
     放っておいてほしいのに、司はそれを許してくれない。でも、レオがドアを開けなければいいだけの話なのだ。それを理解しているレオは、頑なにその場を動かないでやり過ごそうとしていた。そして、司もレオの考えていることなんてお見通しなのだろう。しばらく沈黙した後、先程と変わらぬ様子で司は言葉を続ける。
    「レオさん、頑張って仕事を終わらせてきた私にご褒美はくれないのですか?」
     自分に褒めてほしくて、司は仕事を終わらせてきたのだという。それが本当か、どうにかするための嘘かは見分けがつかない。でも、じわり、じわりと心が揺れ動いていくのが自分でも分かってしまう。
    「ねぇ、レオさん」
     いつもより、低めのこえ。


    「司のこと、甘やかして?」


     耳にその声が届くと共に、ぶわり、と背筋が揺れる。その衝撃のまま、レオは思わずドアの鍵を開けていた。まるで魔法にかかったかのように、身体が動いてしまったことに自分でも驚いてしまう。
    「ようやく会えましたね」
     顔を見合わせた瞬間、花が綻ぶような笑みを浮かべる司に泣きそうになる。ずるい。あんな声で、あんな風に言われたら、言うこと聞いちゃうじゃんか。
    「ずるい……」
    「なんとでも」
     上機嫌でレオの身体を抱きしめる司にされるがまま、諦めたレオの口からは文句が溢れていく。
    「おまえ、ああいうのどこで覚えてくんの」
    「さて、誰でしょうね」
     司のことは変わらず可愛いと思っているけれど、年々と大人っぽくなっている気がする。いや、大人になっていくのは当たり前だ。なんと言うか……大人の色気、のようなものが溢れてきている気がする。
    「スオ〜が大人になってく……」
     よく分からないレオの言葉に、司は小さく笑みを溢した。
    「なんですか、それは」
    「いつまでも、おれたちの可愛い末っ子だったのに」
    「私ももう成人していますからね。それに、あなたの隣に立つと決めたのです。それなら、早く大人にならなくては」
     どうして、早く大人になる必要性があるのだろう? レオが首を傾げたことに気付いたようで、司はそっと身体を離して向かい合う形をとる。真剣で、優しそうな表情を向けられて、レオの心臓は小さく音を立てた。まるで、プロポーズする直前のような空気に、息をすることも忘れてしまいそうだ。
    「レオさんは、強い方ですから。きっと私が幼いままでは甘えるなんてできないでしょう? でも、私はあなたに頼られたい。あなたに甘えてほしい。あなたが人に見せたくない、脆いところを余すことなく見て、暴きたい」
     熱烈な、告白だった。まっすぐな瞳に焼かれて、そのまま溶けてしまいそう。
    「……甘やかさせて、くれますか?」

     ドロドロに、溶けてしまうくらい。
     
     一際大きな鼓動の音と共に、身体はガクリと床に沈んでいく。そのまま崩れ落ちるかと思っていたレオの身体は司にいとも簡単に片腕で支えられ、その事実に驚く。ほんの少し前までは、抱き上げることすらできなかったのに。いつの間に……? 腕の中から見上げる司の表情は、先程見せていた優しげな様子を残しつつも、その瞳の奥はまるで「逃がさない」とでも言っているようで。ごくり、と唾液を飲み込む音すら聞こえてしまいそうだと思った。
     あぁ、応えたい。優しくて、どこまでも強いおれの「王さま」に、おれの全部をあげちゃいたい。
     司に指で頬を拭われ、そこでようやくレオは自分の瞳から涙が溢れていることに気付く。泣いてることが恥ずかしくて、顔を隠そうと思った。しかし、レオはそこで動きを止める。司にだったら、こんな情けないところだって見せてもいいのかもしれない。だって、司は自分の恋人なのだ。レオが司の色々な表情を見たいと願うように、きっと司もそう思ってくれるはず。
     顔を隠すことをやめ、レオは涙を拭う司の手の甲にそっと手を合わせる。そして、驚いたような顔をする司に説明することなく、そのまま頬を擦り付ける。
    「……おまえがそれを、望むなら」

     おれも、おまえの愛に応えたいと思うんだよ。



    *



     作曲をしているうちに、どうやら寝落ちていたらしい。レオはすっかり暗くなった部屋を見渡し、テーブルの上に置いてあった時計に視線を向ける。時刻はもう少しで二十四時を回る頃。眠る前と全く同じ状況を見るに、司はまだ帰ってきていないらしい。
    「……あいたい」
     思わず、溢れた言葉は紛れもない本音だ。スオ〜に会いたい。今すぐに、抱きしめてほしい。レオは堪らなくなって、ソファーに置いてあったクッションを抱きしめる。優れた嗅覚は微かに残っている司の匂いを感じ、更に寂しさを感じてしまうのだから本当に厄介だ。
     実を言うと今回は少しだけ、疲れた。クライアントと若干馬が合わず、先方の要求をいまいち噛み砕けないままに進めていたからなのか、普段よりも疲れが酷い。納期に間に合わないなんてことは起こらないが、じわりじわりと溜め込んだストレスは発散させないと精神に支障をきたしてしまうだろう。
    「スオ〜のば〜か」
     子供じみた悪口を口に出し、最近忙しい恋人の顔を脳裏に思い浮かべる。こういう時は、思いっきり甘えてしまいたくなる。自分と目が合った瞬間に向けられる、柔らかく、甘く緩められる表情を切望するようになってしまったのはいつからだろう。
     レオは一人でも平気だった。平気なはずだった。周囲の幸せのために孤独を選ぶことは容易であったし、その結果苛まれる寒さにも耐えられていたのに。今では、もうそんなことはできそうにない。それも全部、司のせいだ。司があまりにも眩しいから、一度知った温もりを手放すには余程の覚悟が必要になる。
     あぁ、でも。きっと、全部あの日からだったのだろう。あの日……両手を広げたおれに、自己紹介から始めたスオ〜がいたからこそ、今がある。もう、おまえがいない人生なんて考えられないよ。だから、早く「ただいま」っておれに笑って。

     がちゃり、と鍵の音がする。その音と同時に、レオは玄関へと向かっていた。そうして、会いたくて堪らなかったかわいい恋人を「おかえり」と出迎えるのであった。

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