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    cross_bluesky

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    cross_bluesky

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    エアスケブふたつめ。
    いただいたお題は「ブラッドリーを甘やかすネロ」です。
    リクエストありがとうございました!

    #ブラネロ
    branello

    「ええっ! ブラッドリーさん、まだ帰ってきてないんですか?」
     キッチンへとやってきたミチルの声に、ネロは作業の手を止めた。
     ブラッドリーが厄災の傷で何処かに飛ばされたと聞いたのは、ちょうど五日前の夜だった。
     北の魔法使いたちが向かった任務自体はあっさりと片が付いたらしい。しかし、あろうことか帰る途中でミスラとオーエン、そしてブラッドリーの三人が乱闘を始めてしまった。そしてその最中にブラッドリーがくしゃみで飛ばされてしまったというわけだ。
    『いつものように少ししたら戻ってくるじゃろう』との双子の見込みは外れ、未だ魔法舎にブラッドリーの姿は見当たらない。余程遠くに飛ばされてしまったのだろうか。
    「まだみたいだな。どうした? あいつに何か用事でもあったのか?」
    「えっと……実は新しい魔法を教えてもらおうと思ってたんです。ブラッドリーさんは強いから大丈夫だと思うけど……あ、魔法の話はフィガロ先生には内緒にしていてくださいね?」
    「あはは、わかったわかった。まあ心配しなくてももうすぐ何でもない顔して戻ってくんだろ。ほら、口開けてみな」
     ネロは鍋の中身をスプーンですくってミチルの方へと差し出した。銀の匙は素直に開かれた口の中へと吸い込まれる。
     ミチルの大きな瞳が目一杯に見開かれ、両手がまだ線の丸い頬へと添えられる。花がほころぶような笑みに、ネロはふ、とまなじりを下げた。
    「甘くて美味しい……! お芋ですか?」
    「正解。今日のおやつはヌガー芋のペースト添えのアイスだぞ」
    「わあ……! 僕、楽しみにしてますね!」
     ぱたぱたと足音を立てながら走り去る後ろ姿を見届け、ネロは再び鍋の中身を木べらでかき回す。
     今日の晩飯はフライドチキンにしたほうがいいだろうか。流石にそろそろ帰ってくるだろう。そんなことを考えながら、ネロは小さく息を吐いた。

     結局、ブラッドリーは夕飯時には姿を見せなかった。仕込んでおいた宇宙鶏はそのまま冷やして寝かせておき、別のメニューを即興で作って振る舞った後、ネロは部屋の寝台で横になっていた。
     囚人としてブラッドリーの手綱を握っている双子が何も言わないあたり、最悪の事態は免れているんだろう。そう分かっていても、何処か落ち着かないのが現状だった。
     瞳を閉じても眠れる気配はさっぱり無い。仕方がないので備え付けのキッチンで何か作ろうと立ち上がった時、窓の方からガタガタと音がした。
     風の音にしてはやけに煩い其れに、思わず駆け寄ると、窓枠の向こうに見慣れた顔が佇んでいる。ワインレッドの瞳が中をうかがうようにこちらを覗き込んでいた。
    「よお、ネロ。入れてくれ」
    「馬鹿てめえ普通にドアから入ってこいよ……!」
     内側から窓を開けると、箒に乗っていたブラッドリーが悪びれもせずに部屋に入ってきた。その身体に大きな怪我がなさそうなことに、内心ほっと胸を撫で下ろす。
     対するブラッドリーは、寝台の端へと腰掛けると、深く息を吐いた。
    「最悪だったぜ……北の外れに飛ばされちまってよ。よりによって魔法生物の群れのど真ん中だぜ? 暴れたら腹は減るし寒いと思ったらまた違うとこに飛ばされちまって……」
    「それは災難だったな……何か食うか?」
    「食う食う。食うけどまあちょっと来いよ」
     キッチン前で立っていたネロを、ブラッドリーは指先で呼ぶ。ぽん、と寝台のシーツを手で叩いてみせると、ネロは大人しく其処に座り込んだ。俺のベッドなんだけどな、と喉まで出かかったが、なんとか飲み込んでみせた。
     ブラッドリーの頭がネロの膝の上へと倒れ込んでくる。バイカラーの髪を恐る恐る撫でてみても何も言ってこないどころか頭をすり寄せてくるあたり、どうやら相当疲れているらしい。
    「そういや今朝ミチルが心配してたぞ。魔法教えてるんだっけ?」
    「おう、たまにな。あいつはなかなか見どころがあるぜ。将来結構強くなるかもしんねえな」
     なんでもない会話を交わしながら、ブラッドリーはやがてふっと目を伏せた。ワインレッドの双眸は、どこか惚けたように微睡んでいる。
    「もう寝るか?」
    「〜……おまえの作った飯食ってから寝るかな。肉か?」
    「タイミングが良かったなあ。キッチンに仕込んでおいた宇宙鶏がある」
    「おっ、やりい! そうと決まれば行くぞネロ!」
     ガバッと音が鳴るほど勢い良く起き上がったブラッドリーが、部屋の扉の方へと駆け出して行く。ネロは呆れたようにため息をつくと、その後ろ姿を追いかけた。
    「それにしてもフライドチキンの用意があるなんてな。もしかして俺のこと待ってたりしたか?」
    「はは、自惚れんじゃねえよ馬鹿野郎」
     ブラッドリーが魔法舎の玄関ではなく、わざわざネロの部屋の窓へとやってきた意味を聞く勇気はない。それでも、こんな夜更けにフライドチキンを揚げてやろうと思うくらいには絆されてしまっているのだから、本当にどうしようもない。
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    44_mhyk

    SPOILERイベスト読了!ブラネロ妄想込み感想!最高でした。スカーフのエピソードからの今回の…クロエの大きな一歩、そしてクロエを見守り、そっと支えるラスティカの気配。優しくて繊細なヒースと、元気で前向きなルチルがクロエに寄り添うような、素敵なお話でした。

    そして何より、特筆したいのはリケの腕を振り解けないボスですよね…なんだかんだ言いつつ、ちっちゃいの、に甘いボスとても好きです。
    リケが、お勤めを最後まで果たさせるために、なのかもしれませんがブラと最後まで一緒にいたみたいなのがとてもニコニコしました。
    「帰ったらネロにもチョコをあげるんです!」と目をキラキラさせて言っているリケを眩しそうにみて、無造作に頭を撫でて「そうかよ」ってほんの少し柔らかい微笑みを浮かべるブラ。
    そんな表情をみて少し考えてから、きらきら真っ直ぐな目でリケが「ブラッドリーも一緒に渡しましょう!」て言うよね…どきっとしつつ、なんで俺様が、っていうブラに「きっとネロも喜びます。日頃たくさんおいしいものを作ってもらっているのだから、お祭りの夜くらい感謝を伝えてもいいでしょう?」って正論を突きつけるリケいませんか?
    ボス、リケの言葉に背中を押されて、深夜、ネロの部屋に 523

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