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    りう_

    @riu_0411_

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    りう_

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    フォ学オンリーの新作です。
    完成は後日になりますが、登場人物数人で繰り広げられるフォ学サスペンス?のようなもの。
    出来上がり次第、追記していく予定です。
    あんまりフィガ晶♂ではないですが、追々そうなっていくと思います。
    ※開幕で人が死んでいますので要注意。

    #あおはぴ
    #フォ学オンリー
    onlyInFogyaku
    #フィガ晶♂

    フォ学なんちゃってサスペンス「……っ」
     ぴちゃり、と音を立てるものはなんだろう。ぼんやりと足元を見下ろす先に、見覚えのある色が見えた。
     ふわふわと柔らかそうで、けれど冬の海のような、どこか冷たさをはらんだ灰と青。
     暗闇に目が慣れて来たのか、ゆっくりと目の前の光景が像を結ぶ。いつも清潔に整えられているはずの髪が乱れて、その色が床に散っていた。
    「…ぁ…」
     知らず、声が漏れる。視線が、無意識にその先を追う。
     ぴちゃり。もう一度あの音がした。
     その時初めて、嗅ぎ慣れない何かの匂いを感じる。生臭く、空気ごと重くするようなその匂い。
     灰青の先。多分、背中のあたり。ベージュのベストが赤黒くグラデーションしている。
     どうしてだろう。
     鮮烈すぎる光景は思っていたよりも彩度は無い。それでも、『それ』が赤いのだ。赤かったのだと分かる。分かってしまう。
     彼の身体から生えた何か棒のようなものを伝い、真っ赤であったろう血が、ぴちゃり、とまた音を立てて落ちた。


    「ふぃ、がろ、せんせ……?」
     ぽつり、とやっとのことで声が零れる。痺れたように動けなかった俺の身体は、その瞬間糸が切れたかのように崩れ落ちた。釣られた人形が落ちるように、ぐしゃりと膝を折って俺はその場にへたり込む。
     これは、彼なのか? 本当に?
     よく見知ったその色彩も背格好も、見間違えるはずは無かった。けれど。まさか。
     違っていて欲しい、そんな希望を捨てられずに、俺は力の入らない膝から下を引き摺るように、彼の正面へと回り込んだ。
     ずる、ずると俺が衣服を擦る音だけが響いて、目の前の人からは返事は無い。何の音もしなかった。ただ、定期的にあの水音だけが、まるで遅れた時計の秒針のように時を刻む。
     ぴちゃり、ぴちゃり。赤黒い水溜りが、彼の衣服を濡らしている。
     暗闇に慣れたはずの視界がどんどん暗く、狭くなっていくようだ。
     なんとか、彼の顔を覗ける位置まで移動し終えて、そっと乱れた前髪を払ってやった。指先が少し震えたけれど、不思議と体は動く。それは、ただ目の前の現実を確かめたいと言う本能なのかも知れない。
     元々色の白い顔は、血の気を失ってより白く、いっそ青白くさえあった。
     傷は背中の一か所だけなのか、その顔には傷の一つも無く美しく、瞳を閉じた姿はただ眠っているようで、そこにある事実をまるで現実味が無いものにしている。
    「なんで……」
     その言葉に、答えを返してくれる人は居ない。ただ滴り落ちる血の音以外、何も。
     口元に指を翳す。それから、首元にそっと触れた。
     呼吸は、無かった。勿論、脈も。
     俺の目の前で、確かにフィガロ先生は絶命していた。




     それから、どれ位時間が経っただろう。
     ただ、ぼんやりと彼の顔を見つめていると、初めて水音以外の音を聞いた。
     がたり。
    「っ……?」
     それなりに大きな物音だ。びくり、と肩を揺らして俺は部屋を見回した。見える範囲に動くものは無い。
     部屋の扉が開いた形跡も無い。開けばどうしたって音はするだろう。それに先程まで自分以外の気配も感じなかった。なのに。
     何故か、『居る』と感じることが出来た。
     ここに、よくないものが。居る。
    《逃げなさい、早く》
    「えっ……?」
     『声』だ。聴こえないはずの声。けれど、とてもよく知っている人の低い声。
     そうだ。今、目の前で確かに死んでいるはずのーーその人の声。
     けれどその声は目の前にある体からではなく、まるで、耳元で囁かれるように響いた。
    「ど、どういうこと?! この声、フィガロ先生なんですか?」
    《そう、俺は君のよく知るフィガロ先生だよ。事情は後で話すから》
     俺の脳内が一気に混乱を極めていく。なに、なんで声が。姿は無いのに!
     室内からは、今も気味の悪い気配がして、また大きな物音が響く。
     ごとり、がたり。
     乱雑に積まれた机と椅子。教材が入っているのだろう段ボールが積まれた部屋だ。
     その薄暗い室内で、『何か』は少しずつこちらへと近づいて来ている気がした。
    「ひぇっ」
     一歩、後ずさる。言いようの無い恐怖と、混乱で足がぶるぶると震えた。正直今にも腰が抜けそうだった。
     そして俺がまた言葉を発する前に、ぴしゃり、と彼の声が響く。
    《晶!走って! この部屋を出るんだ!》
     その瞬間、ずるり、と影が動いたように見えた。
    「!!!!!」
     弾かれたように走り出す。縺れる足をなんとか床に付けて、踏み込む。一番近い扉へと、一気に駆けた。
     どん、と勢いよく取りついた扉の取っ手に手をかける。けれど、開かない。
     がたがた、と音を立てるばかりの扉は、鍵でもかけられているのか、びくともしなかった。
     背後ではざわり、と空気が騒ぐ。淀んだ空気が迫ってくる気配がする。
     怖い。こわいこわいこわい!
     逃げなくちゃ。
     扉に付けられた窓は何故か真っ暗だ。塗りつぶされたようなガラスのその先には何の景色も見えない。
    「これどうなってるんだ?! 誰か!誰かいませんか?!」
     どんどん、と強く拳を叩きつける。扉はがたがたと音を立てるばかりで、開く気配はない。
     空気が重くなって、ぞわぞわと鳥肌が立っている感触がする。まずい。
    (もう……ダメなのかな)
     一瞬、倒れていたフィガロ先生の姿がフラッシュバックする。俺もあんな風に、死んでしまうのだろうか。
     ぎゅうと、目を瞑る。
    《諦めちゃ駄目だよ、晶》
    「っ、先生……でも!」

     これって絶対絶命というやつじゃないか。そう思った瞬間。扉の向こうから声がした。
    「晶?! そこに居るのか!」
     大きく響く、力強い声。これは。
    「カイン!!俺はここです! 扉が開かなくて…助けてください!」
     精一杯の声を上げて助けを求める。
    「分かった、待ってろ! 少し扉から離れてくれ!」
     はい、と返事をして、すぐに横へと逸れた。今この状況で後ろに下がるのは恐ろしい。
     すぐに、バン!と大きな音がした。一瞬遅れて、ゆっくりを扉が室内へと倒れ込んでくる。
     薄暗かった室内に、さっと外の光が差し込んだ。見慣れた校内の廊下だ。
     そこには高く脚を蹴り上げたカインの姿があった。
    「良かった! 無事だったか!」
    「っはい!!」
     急いで扉の外へと駆けだした。転びかける俺の手をカインが引いて、教室から引っ張り出されるようにして足を踏み出す。
     俺の足がしっかりと廊下の床を踏んで。その一瞬で、空気が変わった気がした。
    「え」
     言うなら、非現実から現実に戻ったような、そんな感覚。
     非日常から日常に戻れた、そんな安心感が確かに生まれた。
     背後にあったはずの嫌な気配が霧散する。振り返ると、そこには蹴倒された扉と、何の変哲もない空き教室が広がっている。
    「な、なんだったんだ……今の……」
     呆然と、呟いた。
    「晶……大丈夫か?」
     心配そうなカインの声に、何とか「はい」と答えて。
     何から話すべきなのか、考える。ここで起きたことは、どう考えても異常事態だった。それは間違いない。けれど、なんて説明したら良いのだろう。カインに上手く伝えるにはどうすれば。
    《落ち着いて。ここで起きたことを、そのまま話せばいい。彼はちゃんと聞いてくれるよ》
     フィガロ先生の声は、部屋を出た今も聞こえるようだった。おかしい状況ではあるけれど、その声はいつものように低く落ち着いていて、俺に冷静さを連れて来てくれる気がした。
    はあ、と大きく息を吐いて、それからゆっくりと吸う。
    「俺……この部屋で、フィガロ先生が死んでいるのを見つけたんです」
     そもそもの事の発端はなんだったのか。そこから考える必要がありそうだ。
     日常で起きた突然の非日常。その最初がなんだったのか、俺はゆっくりと記憶の紐を解きながら話し始めた。
     

    ***


    「ぶいあーる??ですか?」
     そう、と目の前の彼は頷いて見せる。
    「最新のシステムを使って、この学園でテストをさせて欲しいと依頼があってね」
     楽しげに話すその人の瞳には、愉快そうな色が踊っている。
    「この学園には優秀な生徒が沢山いるからね! 面白そうだし引き受けたんだ」
     にこにこと笑っている学園長は、すう、と猫のように光る目を細めて、こう告げた。
    「真木晶くん。君にも是非協力して欲しいんだ!」
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    Replies from the creator

    りう_

    DONE11/14逆トリオンリー「月よりのエトランゼ」で展示していた作品です。
    逆トリで晶くんの世界にやって来たフィガロと晶くんが買い物デートして二人でダーツをしています。
    ご都合主義なので、厄災がどうにかなって、二人はお互いの世界を行き来出来るようになっている…という想定です。
    ※ちょっとだけフィガロ親愛ストのネタバレがあります。
    勝者の願い そこそこ人の多い、昼下がりの商店街。自分と同じく買い物に出ている人や外食に来ている人が多いのだろう。
     彼と連れ立って歩くとちらちらとすれ違う人たちの視線を感じた。その視線は、俺では無く隣を歩く人へと一心に向けられている。それはそうだろう、俺の横にはこの国では見かけない珍しい色彩と、頭一つ飛びぬけた長身、それに整った顔立ちを持った麗人が居るのだから。
     そっと斜め上を見遣ると、彼は珍しそうに立ち並ぶ建物たちを眺めているようだった。色とりどりの看板がひしめき合うように集まり、その身を光らせ主張している。建物の入り口には所々のぼりがあるのも見えた。
     その一つ一つに書かれた文字を確認するように、時折フィガロの唇が開いては、音もなく動く。どうやら看板に書かれた文字を読み取っているようだ。
    5024

    りう_

    MAIKINGフォ学オンリーの新作です。
    完成は後日になりますが、登場人物数人で繰り広げられるフォ学サスペンス?のようなもの。
    出来上がり次第、追記していく予定です。
    あんまりフィガ晶♂ではないですが、追々そうなっていくと思います。
    ※開幕で人が死んでいますので要注意。
    フォ学なんちゃってサスペンス「……っ」
     ぴちゃり、と音を立てるものはなんだろう。ぼんやりと足元を見下ろす先に、見覚えのある色が見えた。
     ふわふわと柔らかそうで、けれど冬の海のような、どこか冷たさをはらんだ灰と青。
     暗闇に目が慣れて来たのか、ゆっくりと目の前の光景が像を結ぶ。いつも清潔に整えられているはずの髪が乱れて、その色が床に散っていた。
    「…ぁ…」
     知らず、声が漏れる。視線が、無意識にその先を追う。
     ぴちゃり。もう一度あの音がした。
     その時初めて、嗅ぎ慣れない何かの匂いを感じる。生臭く、空気ごと重くするようなその匂い。
     灰青の先。多分、背中のあたり。ベージュのベストが赤黒くグラデーションしている。
     どうしてだろう。
     鮮烈すぎる光景は思っていたよりも彩度は無い。それでも、『それ』が赤いのだ。赤かったのだと分かる。分かってしまう。
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    りう_

    MAIKINGフォ学オンリーの新作です。
    完成は後日になりますが、登場人物数人で繰り広げられるフォ学サスペンス?のようなもの。
    出来上がり次第、追記していく予定です。
    あんまりフィガ晶♂ではないですが、追々そうなっていくと思います。
    ※開幕で人が死んでいますので要注意。
    フォ学なんちゃってサスペンス「……っ」
     ぴちゃり、と音を立てるものはなんだろう。ぼんやりと足元を見下ろす先に、見覚えのある色が見えた。
     ふわふわと柔らかそうで、けれど冬の海のような、どこか冷たさをはらんだ灰と青。
     暗闇に目が慣れて来たのか、ゆっくりと目の前の光景が像を結ぶ。いつも清潔に整えられているはずの髪が乱れて、その色が床に散っていた。
    「…ぁ…」
     知らず、声が漏れる。視線が、無意識にその先を追う。
     ぴちゃり。もう一度あの音がした。
     その時初めて、嗅ぎ慣れない何かの匂いを感じる。生臭く、空気ごと重くするようなその匂い。
     灰青の先。多分、背中のあたり。ベージュのベストが赤黒くグラデーションしている。
     どうしてだろう。
     鮮烈すぎる光景は思っていたよりも彩度は無い。それでも、『それ』が赤いのだ。赤かったのだと分かる。分かってしまう。
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