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    965_jima

    四半世紀腐のオタクやってる。今はサトキョ。
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    965_jima

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    習作、狂児編。

    無題 人生もさすがにそろそろ折り返しを過ぎたと自認してはいるものの、まだまだだと思いたい年頃なわけで。
     それは狂い続けた歯車をどうにかこうにか御していったらいつのまにかついていた肩書に見合う動きができるようにだとか。まだ慣れない新しい法律のせいで成人扱いされるようになっただけの、肌感覚的には未成年の、自分にとって唯一無二のこどもの前に立つ瞬間、生業のことと歌声以外で幻滅されたくはないなあとか。
     なあ手のひらこうして広げて立てたら親指が十代、薬指が四十代て知ってる? まだなんとか三十代レベルの角度保っておきたいねんけどって言ったら真っ赤な顔で「死んでください」って言われたけど。えっなにおぼこい事なってんのこの子は、十八なったらまずレンタル屋ののれんの向こう行くもんやろって言ったらまだ赤い顔で「レンタル屋ののれんって何?」って言われてまたジェネレーションギャップ。そうか今みんな動画やもんな。聡実くん何見るん? Pornhub? FANZA? て聞いたら無言でグーパン入ったけど。あのな俺にそれやって許されるの君くらいやでホンマ。
     ジェネレーションギャップといえば。いつか君が俺に歌たら、って勧めてくれた曲。あんなかの一つ、あれピエールとランランとアムロちゃんがな、って言ったらアムロちゃんってひとしか知りませんて言われたしそれも君あれやろ、引退のニュースとかバラエティでやろ。俺は全盛期知ってるでアムロちゃん。厚底にミニスカートに茶髪ロングヘアの女が、今で言う量産型みたいに蔓延ってたこととか。
     あれだけ大勢いたアムラーがごっそりとあゆリスペクトの白ギャルに変わった頃には俺の狂った歯車は行きつくところに行きついて、その頃君はまだ生まれてもおらんっていうのがなんていうか、まあ、なあ。あの時君が産まれてたら今の道には入ってなかったかも、って言ったら君どんな顔するんやろな。でも実際君に会うたのは俺の狂った歯車が行きつくところに行きついた後なわけで、そして君は今、きっと俺の狂ったなりにそこそこうまいこと回っている歯車をどうにかして狂う前の状態に引っ張り上げようとしている、ことを、俺は察している。もしかしたら、君自身そんな目的を明確に自覚してはないのかもしれんけど。あんな顔してプレゼントって言われたら、それはもう、そういうことでしかない。多分。
     でもなあ聡実くん、それはどだい無理な話や。二十年近くこの道を歩いて、もう戻れない忠義のあかしを背負って、今更どの面下げて歯車カチャカチャ直しておてんとさんの下歩く? 人生の半分近くを過ごした時間をまるごとなしにしようってのは、さすがに虫が良すぎるんよ。それが許されるような世界やない。そら「努力する」て言うしかない、俺も。行けたら行くって言いながらよう行かんのと一緒。
     でもそれを言ってしまえば俺が君の人生に、それこそ大人になる前の多感な時期に深く深く食い込んで刺さったまま抜けないなにかになってしまったことは明白で、だってそやなかったら上京前の晴れやかな気持ちに満たされてるはずの空港の待合で、クッシャクシャの俺の名刺なんて見てるわけもない。矢も盾もたまらず話しかけて、いったい俺はその刺さった何かをゆっくりゆっくり抜いてあげようとしたのか、それとももっともっとどうにもならないくらい深く刺さりに行ったのか。実は自分でも分かってなかったりする。情けないことに。
     自然消滅の極意、気紛れに連絡を取りながらしょうもないとこチラ見せさせて、連絡の間隔をひろくひろくしていきながら、そっと電話帳消して機種変して終わり。ゆっくりゆっくり俺という棘を抜いてあげるなら、きっとそれが一番自然だ。
     そやけど聡実くん、君が俺の人生に食い込んでいこうって気持ちがあるなら話は別でな。
     君は今、俺に対して、あの十四の夏に俺があの時間を君と共に過ごしたせいで、君の人生のなかで抜けないなにかになってしまったのと同じことしようとしてる、ってわかってるかな。
     もしほんまにそうやとしたら。
     俺はゆっくり棘を抜いていこうなんて考えをくしゃくしゃ丸めてポイっと捨てて、今まで以上に、もっともっとどうにもならないくらい君の人生に深く刺さってしまうしかないやんか。お互い様にお互いの人生傷つけて、深く刺さって、離れられなくなってしまうしかない。
     人生も折り返しを過ぎて、でも、まだまだな自分でいられるうちに。
     君の隣を歩ける日が少しでも長く続くように。そんな青い妄想が、今も、襲い掛かってくる。
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    965_jima

    PAST習作、聡実編。
    無題「好き」とは一体なんなのでしょうか。
     自分自身でも分からない感情の答えを求めて手当たり次第に聞きまわっても正確な答えは見つからず、でも「ただ好きで、それを伝えたいという感情の発露」という、最初に辿り着いた回答にはどうしたって首を縦に振ることができずにいます。
     これまで僕の周りでひそやかに飛び交い、または堂々と交わされてきた「好き」はもっと生き物としての本能というか即物的なものがほとんどで、だから僕は僕の中にあるこの気持ちを「好き」としてカテゴライズすることができずにいるのです。高校時代に遡れば修学旅行の夜、恋人に会いに行った同室のクラスメートや、今も講義の最中に手を取り合って抜け出していく同級生。そして夜半にはまだ早い時間、宿泊までの時間つぶしをしているであろうバイト先によく来る、ボックス席でべったりと隣り合って座るカップル客。どの例を取っても「好き」が生むその衝動は、最終的には公共の場で出来ないことをしたい、そんな即物的なものです。もっとはっきり言えば、それはきっと性的行為につながる「好き」です。けれど僕の中にある感情は、きっとそこには繋がっていません。
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    965_jima

    MOURNING1944、互いの気持ちを察しながら未だ付き合えてないふたりの、たぶんそのうち聡狂になる話です。例の泣き顔のモナリザを捏ねたかった話。
    ※聡実くんの友達♀の名前を便宜上「マナ」にしています
    ※非ネイティブ関西弁
    首洗って待っとけ意気地なしダヴィンチ どうしてファミレスの壁に名画のレプリカがあるのか、といういまさらな疑問を、最近になって周囲にいるいろいろな人にぶつけている。流石に偉い人に聞けたことはないけれど、尋ねた何人かのバイト仲間たちは誰一人その明確な理由を知らなかった。曰く、イタリアっぽいから。曰く、高級感を醸し出すため。なるほどどれも有り得そうやなと思いながら、けれど「親に連れてこられる年齢の頃から芸術に触れるため」と言った先輩には「でもこの間ちっちゃい男の子のお母さんがその子の口塞いでましたよ、そんなことお外で大声で言うもんじゃありませんって」ってやんわり教えておいた。体感、一週間にひとりはその手の子供がやってきて、親から怒られたり口ふさがれたり一緒に笑ったりしている。そやねん、子供って芸術とかどうでもいいし見えたもんを見えた通り素直に言うし、しょうもない下ネタで笑うよな、と思ったけれど、自分にはそういったことで笑っていた記憶はない。
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    965_jima

    MOURNING1944、たぶん一番読んでいただいている話だと思います。
    この続きを今回書くつもりでした…(懺悔)(絶対後日形にします)
    かわいくてかわいくていとしくていとしい 十代の恋人、という存在についてだけなら、実はそんなに罪悪感はない。そもそも親父からして――マサノリのおふくろさんはそれなりの年齢やけれど――カツ子姐さんを見初めたのは彼女が十代の頃と聞いているし、周りの同世代の奴らも干支一回り下あたりからそれこそ自分の娘でもおかしくないような年齢の女を、それぞれ妻にするなり、囲うなり、している。特定の相手がいなかったのは組の中でも実は自分くらいのもので、まあ俺はそもそもあらゆる点でどっか普通とズレてるとこあるし、ヒモ時代も別に愛情とか持ってやってたわけと違うし、誰かを恋しいとか触れたいとか思うようなタマちゃうんやろな、なんて思いながらの二十年。
     いやもうそんなんとんでもない大間違い、青天のヘキレキ、ただ生後十日にして狂い始めた歯車と同じように、運命の相手も大きくズレた年齢に設定されてしもてただけなんと違うやろか、ということに気づくには少し時間がかかった。可愛がりたい、側にいたい、きっと会わせてもらえない甥っ子姪っ子の代わりに愛情をかける真似ごとがしてみたいだけやし、とまっとうな理由を捻り出して自分をだまくらかして、声をかけて呼び寄せて口実を作っては何度も何度も顔を合わせた。狭くて冷たくてしょうもない殺風景な部屋で数年を過ごしてもなお、心の一番深い場所に染み込んで消えない最後のソプラノ。あの微かに淡い色をたたえるまっすぐな瞳が俺のために涙をこぼす、その愛しい表情も。
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