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    あいぐさ

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    あいぐさ

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    フォロワー四桁の神字書きフィから突然フォローされ怯えるファの話〜アンチ撲滅編〜
    フィガファウにしたい現パロ、前回の続き。
    湧いてきたアンチを叩き潰すためにフィに相談する話。

    神にフォローされて怯えています(3) マットレスの上で跳ねるのは現代人の命、スマホ。それを放り捨てるほどに、ファウストは混乱していた。
    「……どうなっているんだ」
     緩慢な動きでスマホを拾い上げたファウストは、顔をしかめながら画面をタップする。アプリを開けば、嘘のような反応がSSに送られていた。いいねやリツイートだけでなく、フォローの数まで増えている。インプレッション数も万単位という今までの何十倍の数を叩き出していた。 
     ネタ出しに行き詰まってはじめた同人活動には、いつもどこか後ろめたい気持ちがあった。
     萌えの力で私生活を削りながら書くほどファウストは意欲的ではなかった。けれど、好きなことを好きなように書くことは自分の失っていた何かを思い出したような気がしていたのだ。
     だからこそ、自分を広める気はなかった。フォローやいいねなどの反応はもちろん嬉しいけれど、そこから多くを望むことはなかったのだ。
     できればひっそり、けれど好きな人に共感してもらえたり嬉しい。そんな思いで書いていたファウストにとっては、あまりにも予期せぬ事態だった。
     自分の平穏なインターネット生活を壊したのは一体どこの誰だろうか。分かりきった問題の答え合わせのために、ファウストはフォロー欄の一番上のアカウントへ飛ぶ。
    「やっぱり……」
     最近のファウストを悩ませる種であるポッシデオさんのツイートにて、ファウストのSSがリツイートされていた。
     通知欄を遡れば、淡白なリプライにポッシデオさんからは丁寧な返事が来ている。不安になったファウストは、自分の文章をもう一度読み直し胸を撫で下ろした。
     一体、どうしたことだろうか。今も一つ、通知が増えていく。そのことに喜ぶべきか、何も反応しないべきか。ファウストには正解が分からない。
     インターネットなんて、好きにすればいい。多くの人間はそういうだろう。ファウストも内心では同じように思っているが、そうも言っていられないのだ。
     一気に人の目を浴びると、多くの賞賛と共に心無い言葉が飛んでくる。特にファウストは良くも悪くもそういう人を呼び込みやすかった。
     実際、作家としてデビューしたときもそうだ。どこかの誰かが広めたフェイクニュースに踊らされた人々から苛烈なコメントを浴び続けていた。
     今では恨みはあれどもう笑って話せる思い出だ。それでも、当時は精神的に本当に辛い日々だった。
     妙に伸びてしまった小説にも、鍵アカからのリプが早速きている。「匿名のメッセージ箱とかを作るのが文化らしいよ笑」と勧められ作ったメッセージボックスにも、早速心無い言葉が送られていた。
    「はぁ……」
     ファウストには、こういうメッセージを送る人の気持ちが分からない。
     嫌なら読まなければいい。なぜ閉じることができないのだろうか。わざわざ嫌だった相手へメッセージを送って、何を求めているのだろうか。
     一番は相手への精神的なダメージを狙うためのものだろう。しかし、ネットニュースを騒がせたほどのアンチと戦ったことがあるファウストからすれば、それは蚊に刺された程度の痛みだった。叩けないのが面倒である以外は、対してダメージなど感じない。
     なにせ(悪い意味で)鍛えられてしまったのだ。相手にどこか同情すら感じてしまう。
     しかし、同時に悪意の矛先が自分で良かったとも思うのだ。ファウストは、こじつけがましいメッセージをスクリーンショットした。

    『それで、俺に相談しにきたと』
    「できれば叩き潰したい。いい方法はないか?」
     なんでも力になるから。おまえはそう言った。だから相談した。
     突然の電話で開口一番にそう言えば、フィガロは声を殺して笑った。
    『きみって結構根に持つタイプだよね』
     電話口で笑うフィガロは、カタカタとパソコンを叩いていく。晒されたようにいいねが伸びていく様を、彼はどこか困ったように笑った。
    『まずは評価に素直に喜んだらどうかな』
    「……もちろん、心から感謝している。どこの誰かも分からない人の作品に時間を割いてくれたんだからな」
    『そこまで卑屈にならなくていいと思うけど。きみ、うちでは人気作家だよ。自信を持って』
     フィガロは誰にでも優しい。しかし、それが上っ面であることは昔に思い知らされている。
     だからこそ、彼はファウストの前では自分をあまり取り繕わなくなってきた。
     お気に入り扱いをされているのだ。その事実にどこか喜ぶ自分がいることを、ファウストは勿論気付いている。
     そして、まだ見捨てられていないことに安心しているのだ。
    『アンチが一番嫌なのは、自分が相手にされていないことなんだ。承認欲求を満たすために人に危害を加える連中だからね。本当に面倒だよ」
    「すまない、その」
    『ああ、きみのことじゃないよ。きみに文句を言う能無したちのことだから』
     相変わらずの物言いに、ファウストは渋い顔をするしかない。時折見せる鋭すぎる物言いは、的確でありながらあまりにも容赦がないのだ。これでも相手が一般人だから今日はまだマシな方である。
    『きみが一生無視することが一番効果的だよ。あっちが耐えられずに尻尾を出した瞬間、吊し上げればいい。大丈夫、俺はそういうの得意だからね。辛くなったらまた声をかけて』
     きっと、電話口ではフィガロはニコニコ笑っているだろう。そこそこの付き合いから、何となく想像がついた。
     実際、ファウストに必要以上の過激な言葉をかけた人間を吊し上げた経験があるのだ。詳細は教えてもらえなかったけれど、今はずいぶんと平和な日々を過ごしている。
    「分かった、ありがとう」
    『どういたしまして。俺はきみの味方だよ』
     その言葉に、いつも救われている。
     フィガロの言葉が嘘か真かはファウストには分からない。なにせ、彼はよく嘘をつくのだ。
     けれど、ファウストはできる限り信じると決めていた。彼が無意味に人を傷つける人ではないことをちゃんと知っているからだ。
     ファウストはもう一度感謝を伝え、通話を切る。どこか揺れ動いていた心は、すっかりと平穏を取り戻していた。


     昔、ファウストは心無い言葉への対処法を聞いたことがあった。フィガロは少しだけ驚いた顔をして、そしてにこやかに笑う。
    「うーん、そうだな。慣れているんだ」
     あっけらかんと言い切られた言葉には、どこか哀愁が漂っている。

     そんな気がした。
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