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    sika_um

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    sika_um

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    バブ🍭と友達一年生🧁がお騒がせしております。Rock out Heroes!ありがとうございました!そしてこちらは供養の本文です

    君が為のロックンロール!

     アッシュからみっちりと扱かれすっかりくたびれた昼下がり、トレーニングルームを後にしたビリーの腹の虫は不満を訴えていた。控えめに言ってお腹が空いている、キャンディで誤魔化すも限界。再度ハニーのロックを解除しても目当ての通知は見当たらない。トーク画面を覗くと既読すら付いていなかった。
    「グレイ、まだパトロールが終わってないのかな…?」
     入所当初、ルーキーは半人前扱いがあたりまえで二人で行動する場面が多い。けれど、新しい春が近づく頃には各々が違うトレーニングをこなし、任務に着くのが当たり前になっていた。帰る場所や朝に起き抜けのグレイがベッドで丸くなってるのは変わらないけれど、一緒に過ごす時間は減る一方。時が経てば同室だって当たり前ではなくなる、そのうち担当セクターだって変わってしまうかもしれない。子供のわがままだと笑って貰える今を大事にしたいと、ビリーはそう思う。
     予定では、彼もそろそろ午前の用事を終えている頃だと思うのだが。以前であればパトロール終わりだったり、部屋で寛いでいるときに誘ったりする事が多いせいか改めて連絡することは少ない。すぐ返信が来たり、来なかったり。些細なやりとりでも心が浮ついてしまうが、今は自身の年相応な部分が嫌いではない。ハニーから視線を外してすぐ、視界の端に捉えたのはアカデミー時代からの悪友だ。何やら可笑しそうにスマホを眺めているらしい。
    「DJ、何見てるの〜♡」
     音を立てずにヌルッと背後に回ると、彼は心底嫌そうな顔で歓迎してくれた。
    「ビリー…勝手に覗かないで」
    「えー、楽しそうにしてたから気になったのに。そっかぁ、秘密ならしょうがないネ♡」
    「…ほら、こないだのライブ。何だかんだ話題になってたからネット記事になっててさ」
     渋々共有された液晶に写っていたのは、この間行われたジュニア、フェイス、グレイで構成されたライブの記事だった。何枚か写真も掲載されている。
    「WOW!このDJ、芸能事務所からたくさんスカウト来ちゃいそうなくらいカッコイイね…☆」
     ちなみに無許可掲載らしいのでライターに使用料好きにとっていいよと言われた。やったネ!
    「そこは別にいいんだけどさ、次のページが面白くて」
     くく、とフェイスは顔を逸らし声を出して笑っている。レアな姿をカメラで収めようとしたらレンズを塞がれた。
    「なになに〜?」
    「まるで『兄弟のように仲がいい』だって。実の兄を差し置いて…笑っちゃうよね」
     ライブ後、ステージ裏でのオフショットだろうか。大成功を収めて興奮冷めやらないグレイとジュニアが大はしゃぎしている写真は大々的に打ち出されていた。その後につらつらと仲良しを裏付ける記事。半分本当、半分は捏造といったところか。
    「稲妻ボーイのリアルブラザーの目に入ったら厄介な事になりそうだね」
    「あ〜…どうだろ。結構穏やかそうな人だったけど」
     一方で、グレイの弟妹達が黙っているとは思えない。何だかんだ言っていても、あの二人はグレイの事が大好きなのだ。この記事が目に入ればビリーの元へ抗議の連絡が寄越されるのだろう、容易に想像できた。
    「どうなの、イーストセクターのお兄ちゃん的には」
    「妬いちゃう!イーストセクターのお兄ちゃんはオイラなのにネ〜?」
    「あは、全然思ってなさそう」
     余熱で温まったオーブンくらいはやいている、と宣うとフェイスは肩を竦めて鼻を鳴らした。
    「じゃあ、グレイの方は?」
    「グレイ?」
    「グレイとビリー、知らないうちに驚くくらい仲良くなってるし。逆に、おチビちゃんに嫉妬してるんじゃないかな、って思ってさ」
    「稲妻ボーイに嫉妬…」
     実際、最近のグレイとジュニアが居るところを良く目にする。この間なんて、帰宅した部屋にジュニアが座っていた時は素で驚いてしまった。共用スペースまでは何人か来たことあったけど、部屋まで来るのはビリーに用事のあるフェイスくらいである。グレイと一緒に買ったソファに座りジュニアはずっとグレイがプレイするゲームを眺めていたっけ。
    「ウーン、稲妻ボーイに限らず、グレイが誰かと仲良くしてるのすっごく嬉しいよ。頑張れ!って応援したくなる」
    「バンド始めた事も?」
    「理由は分からないけど、グレイが頑張りたいことなら背中押したいかな!」
    「…変なところピュアだよね、ビリーって」
    「わーい、DJに褒められちゃった♡」
    「褒めてないし。…まあおチビちゃん、懐くと誰にもあんな感じだけどね」
    「そうなの?!稲妻ボーイの浮気モノ〜!」
    「そうそう、浮気はよくないよ」
     自身らが懐かれていない事を棚上げして好き勝手言っているところに、ファック!と聞き覚えのある声がすぐ後ろでした。
    「クソチャラDJ、お前だけには言われたくねえ!」
     雷が落ちたみたいに、ピシャリとその場に轟いた。噂の本人の登場である。
    「あは、俺がいつ浮気したっていうの」
    「常にしてるようなもんだろうが!…じゃなくて!俺はお前を連れ戻しに来たんだよ、なんでそんな話になってんだ」
    「稲妻ボーイが兄属性にちょろくて心配って話!」
    「オレは別にチョロくねえ!」
     閑話休題。どうやらジュニアはフェイスを探してここに辿りつたらしい。午後のトレーニングに来る気配のない同僚を引っぱたきに来たと言う。
    「で、どうなんだよ。言い訳くらい聞いてやるぜ」
    「今から行くって。それじゃダメなの?」
    「ダメに決まってるだろ、理由くらい​────、」
    「タワーの中で迷子になってる子供の親をさがしてあげてたんだよネ?」
    「!」
    「…そうなのか?」
    「それがまたキュートな双子の兄妹でね、DJが両手に抱えると絵になるんだよね〜?」
    「なんで知ってるの」
    「職員がこそこそ噂してたヨ!」
     タワー中層にはエリオスに勤務するパパママの御用達の託児所がある。おおよそそこから大人の隙を突いて双子が脱走したのだろう。脱走の理由は推測するまでもない。大人の足元をすり抜けて高層階にやって来たところまではよかったものの、幼子が両親を探すのにここはあまりにも広かった。そんな不安そうに立ち尽くす双子を放っておけず、声をかけたのが昼食を摂りにやってきたフェイスだ。施設に返そうとするとパパママと泣くものだから、手ずから一から十をこなしやっと一息ついたところ、とビリーは推理を披露する。はあ、と横でため息がひとつ零れた。
    「だいたい合ってるのが腹立たしいね」
    「クソDJ!そういう事は先に言えよ!スマホとか色々あるだろ!」
    「えー、両手塞がってたし」
     斯くして二つの事件は時を同じくして幕を閉じたのである。名探偵ビリーの役目はここまでらしい。
    「あ、グレイからだ」
     待ちに待った目当ての通知に飛びつく。嬉しさが勢い余ってハトのオーナメントが揺れた。通知をタップすると、タワーに着いたタイミングみたい。昼食は外で済ませてきたようだ。
    「また誘うね、っと。送信!」
    「さながら付き合いたてのカップルだね」
     フェイスの揶揄が胸がストンと落ちていく。確かに、そのくらい浮かれているのかもしれない。
    「最近バンドの練習とかで構って貰えなかったから、今はグレイ強化月間だよ♪」
    「グレイ、色んな人と話してるとこ見かけるよな」
    「あー、確かに。それに女の子のファンが増えた印象ある」
    「ふふん、グレイは背もスラっと高いし優しい顔立ちで女性受けはバッチリ〜☆出るとこに出て人気で出るのは当たり前じゃない?」
    「あーあ、まるで自分の事みたいに喜んじゃって…」
    「そういや兄ちゃんとグレイが飯行った時の写真なんだけどよ、」
    「「え?」」
    「ピッ?!」
     ジュニアは後悔した。二人の食い気味の返答に何気なく発した言葉は、どこかに障ったらしい。
    「二人で?おチビちゃんはどうしたの」
    「お、おう。俺は用事でいけなくて」
    「そもそもなんでそこが繋がったのさ」
    「兄ちゃんにグレイの事話したら、歳も近いし話も合いそう、友達になりたい!ってなって…」
    「…ふーん?」
     女の子のファンが沢山増えたのも知っている。話しかけられてたじろぐグレイは可愛いし、ファンの子もライブで見たカッコイイグレイとのギャップが大変お気に召したみたいだった。始めこそビリーと居ることが大半だったけれど、今では色んな人の輪に溶け込んで楽しそうにしている。グレイが嬉しそうだと、ビリーも嬉しかった。それなのに、この写真だけは胸が締め付けられるのは、どうしてだろう。肩なんて組んじゃって、笑顔のグレイは大好きなのにジュニアの兄の隣で満更でもなさそうに笑うグレイは何だか見ていたくなかった。
    「もしかして、妬いてるの?」
    「焼く?」
     フェイスが言うことを上手く飲み込めずに居ると、すぐに噛み砕いて教えてくれた。
    「嫉妬、ジェラシー」
    「…なるほど…?」
     心の中で何度も反芻する。妬く、嫉妬、ジェラシー。なるほど、通りで身に覚えのないわけだ。こんな気持ち、ビリーの記憶中枢に記録がない。
    「そっか、オレ、嫉妬してるのか…あはは、そっかあ、嫉妬か」
    「なんでそんな楽しそうなわけ」
     分からないけれど、何だか胸のあたりがざわついて落ち着かない。嬉しいけどもやもやして訳が分からない。
    「…この調子なら、グレイの目下の目標は達成出来そ─────、」
    「グレイの目標?」
     なにそれ、口をついて出そうになるのをすんでのところで飲み込んだ。そんなの、ビリーは何一つ聞いていない。
    「ダメだよ、おチビちゃん。それはグレイの口から直接言わないと、多分意味ないでしょ」
    「! そっか、そうだよな…」
    「えー!そこまで言われたらめちゃくちゃ気になるんですけど…?!」
    「そんなの、直接グレイに聞きなよ」
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    sika_um

    DONE現プロゲーマーに(腕前的な意味で)目付けられてるけどお友達になれて嬉しいグレイくんと気が気じゃなくて年相応が垣間見えるビリーくんのビリグレ。
    Everything to me! ここ最近ビリーの心中は摩擦を起こしヒリついていた。新しく覚えたマジックを見せたくてしょうがないのに、忙しそうにしている父は忙しそうにしていて。遠慮を覚えるような、焦燥に駆られるような。そういった久しい感覚に近いのかもしれない。
     しかし父ではなく恋人相手、素直に本人にぶつけるわけにもいかない為、言葉の矛先がふよふよと彷徨う。如何せん、当の彼に非はない、責めるわけにはいかないのだ。
     とある昼下がり、ビリーはいつもの様にSNSをチェックしていた。いつの時代も炎上は付き物だ、グレイの事も気を付けて見ているようにしているのは火種や厄介事の芽に目を光らせていて損は無いから。決して恋人に粘着するファンを炙り出すわけじゃない。そんな彼の投稿といえば、頻繁に行われる訳ではなく、偶に載せたと思えばゲームの攻略だったり、切り抜いたゲームのプレイ動画だったり。返信等は同業者のみだが、記の動画見たさに登録している人はやや多め。文句なし、円満な公式SNS運営と言えるだろう。
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