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    のれん7展示①

    7/24のイベント新刊にお付けしていた、おまけSSです
    ジャミル視点になっている最終章の一場面をカリム視点で書きました

    前回のれん6での期間限定全文公開へのお立ち寄り、あるいは新刊のお迎え、本当にありがとうございました!
    ※通販はFOLIOにてhttps://www.b2-online.jp/folio/18100200030/001/

    #のれん7
    goodwill7
    #ジャミカリ
    jami-kari

    Good Boy, Have a Good Dreams ——カリム・アルアジーム Good Boy, Have a Good Dreams ——カリム・アルアジーム


     
     図書館の大扉が開き、外の明るさに思わず瞬きをして、
    「危ない、ちゃんと足元を見ろ」
     次の瞬間には、ジャミルに肘を掴まれてた。
     アイツが借りた本を、何だろうって覗こうとした表紙はあいにく見えなかったけど、オレはにへっと笑っちまう。
     オレを捕まえる手の大きさに。その指の強さと優しさに。そして、夢の中で出会った小さなジャミルと同じ表情に。
     すぐにもステップの段差があることはわかってたけど、ありがとなって答えたらあとはもう、勝手にこぼれ出てくる鼻歌。

     あたりまえみたいに週末が明けて、月曜の学園に登校して、授業を受けて、昼食のついでに図書館へ立ち寄る。ジャミルの手には、借りた本だけじゃなくオレと食べるために作ってくれた弁当もしっかりと提げられている。
     弁当の中身は、オレの大好きなシャーワルマーだ。
     豆の煮たのも、ピクルスも、まだ寝てろって言ってくれたジャミルに頼み込んで一緒に詰めた。
     デザートのサリビルマは、ココナッツシロップがひったひたに浸かったまんまで、それも見えなくなるくらいピスタチオをまぶしておいた。「もういい、かけすぎだ」ってジャミルに言われてからやっと手を引っ込めたけど、あれだけたっぷりかけといたなら、きっととびきり旨いはずだ。
     
     いつもの学園生活も、ジャミルの弁当も、あたりまえじゃない優しさも、先週と地続きでここにある。それがこんなにも嬉しく思えるのは、いつの間にかそれらが、オレにとっての日常になってたってことだろう。
     あのホリデーを迎える前も、オレにとっちゃピカピカに眩しかった毎日。
     あのホリデーがあったから、もっとピカピカに見えるようになった毎日。
     そんな得難いものを、ホッとできる日常に感じはじめてたなんて。って、身が引き締まる思いの一方で、とめどない「ありがとう」も、こんこんと湧き出てくる。
     今のジャミルがくれるものをオレは、もっともっと大切にしていきたいよ——って、あ! そっかオレ、こういうところだよなあ!
    「一緒に踊ろうぜ、ほら!」
     歌い踊りだしてた身体を穏やかに揺らし、捕まえてくれてたジャミルの手を握り直したら、
    「だから、違うって言ってるだろう」
     呆れた声と、遠慮なく吐き出されるため息。だけどアイツは、オレの手を振り解かないでいてくれる。
      
    「自ら悪夢を見てまで、カリムさんに『いい所』をお見せしたかったんですね」
     
     いやはや、奇特なお方です。ってジェイドが言ってたときも、こんな顔して同じように言い返してたっけ。
     夢ってのは、目が覚めちまうと朧げになるもんだ。現実の制約や理屈が通用しない世界で、望みとは違う形で願いが叶えられるときもある。
     例えば……よく晴れた今日の空の、青い色もそうだ。
     オレはオレであることを変えたいとは思ってないし、家族はもちろん使用人たちのことも大好きだけど、絨毯や鳥や雲になって、こんな色の空を飛び回る夢を見ることがある。
     そして、そんな夢を見たような気がして、思い出せないときも。
     だからジャミルにとってもあの出来事は、現実の望みとは違うところもあれば、オレが見たのと違う記憶に変わってるところだってあるのかもしれない。もう忘れちまってることも、きっとあるんだろう。
     でも、オレは忘れない。
     あの夢のなかで、オレと共にダンス部を立ち上げたんだって言ってたジャミル。アジーム家とバイパー家とで、協力して熱砂の国を盛り立ててるんだって言ってたジャミル。
     そう語ってくれたとき、誇らしげに輝いてた瞳の熱を。小さな頃と同じ姿で、声で、聞かせてくれたジャミルの心を、オレは絶対に忘れたくない。

    「ほら、旨いだろ? た〜っぷりピスタチオ!」
    「……ピスタチオのシロップ漬けを食べてるのか、サリビルマを食べているのかわからない」
     眉を歪めながらも、もぐもぐと動く綺麗な唇に、オレはまた、にへっと笑っちまう。
     だって、こうして食べてくれるのならいつかは、ジャミルは絶対にやらないオレ流アレンジが、出会ったこともない感動を生む日だってくるかもしれないだろ?
    「オレとお前で得意分野を分けあって支えあうって、いい考えだよな!」
     青く青く澄んだ空に向かい掲げるようにして摘んだ干し葡萄も、ジャミルと一緒に弁当に詰めた。ジャミルが差し出してくれたカップからも、一緒に淹れたあたたかいお茶とジンジャーの香り。
     あのとき聞いたいくつもの話が夢の産物だったとしても、オレはジャミルから、望みを叶える秘訣を教えてもらったんだ。
     たまにはジャミルに甘えてもらえるようなオレになることも、その一つ。
     なあ、そうだろ? って窺い見た顔に、小さなジャミルの表情が重なって見える。
     怒ってるような、それでいて弱ってるみたいな、なんだか可愛く思えてくるこの顔に、夢のなかでも出会ったっけ。幼い頃には知ることのなかった、今のジャミルの色香まで乗っけて。
     ああ〜っ、やっぱりもう少しだけ! お前がまだ覚えてるうちに、教えてほしい。
     
    「なあ、オレって、どこで、お前にどんなことしたんだ?」
     
     ジャミルの夢見たオレがどんなことをしてたのか。今夜、ベッドの中でも。
     
     
     
     
     2022.07.24.従者と主人を越えた先 星に願いを。2022
     ありがとうございました! こころ / cocolonote / @cocolo_pdl

     
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    こころ💮

    DONE6/25開催 従者と主人を越えた先 JB2023 ポストカードラリー参加作品です。
    6章帰還後、ゲストルームでケンカするジャミカリと、ケンカの思い出のお話。
    配布ポストカードに記載のパスワードをご入力ください。
    カリムくん、お誕生日おめでとう!

    ※9/12 ジャミルの誕生日に合わせて、パスを外しました。ご自由にご覧ください。
    ジャミルくん、お誕生日おめでとう!
    ごめんね。いいよ。が、できるまで。 口をつけようとしたカップの縁に目を落とし、
    「あっ、欠けてる」
     飲むのをやめた監督生が、カリムと俺の手元を覗きこむ。
    「おふたりのティーカップは大丈夫ですか?」
    「ああ、問題ないぜ。大ぶりでいいな、この茶器」
    「本当か? よく見せてみろ」
     息つく間もなく唇をつけようするカリムの手から奪ったカップにも、俺のカップにも傷などついていないことを確かめて、問題ない、と頷けば、
    「ちょっと、自分の取り替えてきますね」
     欠けたカップを手に談話室を出ていった。
     家主がソファから立ち上がっても、扉を開けて閉じても、不快な音など聞こえない。
     カリムと俺とは目を交わし、
    「よかったなあ!」
    「……よかったな」
     リフォームの成果に同じ感想を漏らす。
    8463

    こころ💮

    DONEのれん7展示①

    7/24のイベント新刊にお付けしていた、おまけSSです
    ジャミル視点になっている最終章の一場面をカリム視点で書きました

    前回のれん6での期間限定全文公開へのお立ち寄り、あるいは新刊のお迎え、本当にありがとうございました!
    ※通販はFOLIOにてhttps://www.b2-online.jp/folio/18100200030/001/
    Good Boy, Have a Good Dreams ——カリム・アルアジーム Good Boy, Have a Good Dreams ——カリム・アルアジーム


     
     図書館の大扉が開き、外の明るさに思わず瞬きをして、
    「危ない、ちゃんと足元を見ろ」
     次の瞬間には、ジャミルに肘を掴まれてた。
     アイツが借りた本を、何だろうって覗こうとした表紙はあいにく見えなかったけど、オレはにへっと笑っちまう。
     オレを捕まえる手の大きさに。その指の強さと優しさに。そして、夢の中で出会った小さなジャミルと同じ表情に。
     すぐにもステップの段差があることはわかってたけど、ありがとなって答えたらあとはもう、勝手にこぼれ出てくる鼻歌。

     あたりまえみたいに週末が明けて、月曜の学園に登校して、授業を受けて、昼食のついでに図書館へ立ち寄る。ジャミルの手には、借りた本だけじゃなくオレと食べるために作ってくれた弁当もしっかりと提げられている。
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    DONEのれん7展示①

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    ジャミル視点になっている最終章の一場面をカリム視点で書きました

    前回のれん6での期間限定全文公開へのお立ち寄り、あるいは新刊のお迎え、本当にありがとうございました!
    ※通販はFOLIOにてhttps://www.b2-online.jp/folio/18100200030/001/
    Good Boy, Have a Good Dreams ——カリム・アルアジーム Good Boy, Have a Good Dreams ——カリム・アルアジーム


     
     図書館の大扉が開き、外の明るさに思わず瞬きをして、
    「危ない、ちゃんと足元を見ろ」
     次の瞬間には、ジャミルに肘を掴まれてた。
     アイツが借りた本を、何だろうって覗こうとした表紙はあいにく見えなかったけど、オレはにへっと笑っちまう。
     オレを捕まえる手の大きさに。その指の強さと優しさに。そして、夢の中で出会った小さなジャミルと同じ表情に。
     すぐにもステップの段差があることはわかってたけど、ありがとなって答えたらあとはもう、勝手にこぼれ出てくる鼻歌。

     あたりまえみたいに週末が明けて、月曜の学園に登校して、授業を受けて、昼食のついでに図書館へ立ち寄る。ジャミルの手には、借りた本だけじゃなくオレと食べるために作ってくれた弁当もしっかりと提げられている。
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