君じゃなきゃダメな理由「その…本当に、俺でいいの?」
その夜、伊集院北斗は人生で一番と言えるほどの臆病さを見せていた。
想いが通じ合い、結ばれた天ヶ瀬冬馬と、これから一線を越えようとしている。
問われた冬馬の視線は、まっすぐに北斗を射抜いていた。
「お前がいいんだよ」
覚悟が足りなかったのはどうやら自分のほうだったみたいだと、北斗は少し自嘲気味に笑ってみた。
「ありがとう…冬馬、好きだよ」
頬に、次は唇に、キスをした。
つい数日前に恋人としての初夜を迎え、冬馬は見えている世界が変わったような錯覚に陥っていた。
一人で仕事をしていると、早く北斗に会いたいと思うようになっていた。
一緒に仕事をしているときは、早く触れたいと思うようになっていた。
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