紅い涙 俺に弟が出来た。母は違うが、父は同じ。俺とは違って、ツノが生えていない。
「父上、こいつツノがない」
「この子の母君は人間だからな。鬼の血が強いお前と違って、こちらは人間の血が強い。ツノは生えないぞ」
父上もツノはないが、片方は俺と同じ目の色だ。弟と呼ばれたそれが目を開けると、人間族と同じく蒼い眼が見えた。
「こいつ、同じ生き物には見えない…」
「こらこら紅蓮。お前とこの子は我ら鬼人族の希望なんだ。全ての種族が手を取り合って作る未来、私に見せてくれ」
「…分からないけど、父上がそれを望むなら」
弟は俺に笑いかけて手を伸ばす。小さな手は俺の指を握った。それはあたたかくて、ずっと触れていたいと思ってしまった。
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