嘆嗟嘆願サニーが未来に帰った。
元々僕達は偶然未来からきて出会った5人だった。
何がどうして、どうやってここにきたのか何も分からない。
気付いたら居たこの時代で、帰る手段も分からないなか僕達は家族のように、みんなどこかしら欠けた所を補うようにして幸せに過ごしていた。
そしてこの時代の人達と出会って、繋がりを深くして…それがどんなに不安定で薄氷の上の幸せなのか、みんな心の何処かで分かってはいても見て見ないふりをしていたんだ。
サニーが未来に帰ったと皆は言うけれど、本当に帰ったのかどうかは分からない。
過去ならいざ知らず、未来を知る術はないのだから。
でもあのサニーがなんの連絡もないまま消息を断つとは誰も思わなかった。VSFとして鍛えられた彼なら多少のトラブルくらいなんてことないだろうし、僕ら4人と先輩たち5人が全力で探しても何の手がかりひとつ見つけられないなんて、それしか考えられなかったのだ。
真っ暗で月明かりだけが射し込むサニーの部屋。
主がいないその部屋は、さっきまでサニーがここに居たような状態のままだった。
いつサニーが帰ってきてもそのまま使えるように、なんて。そんな時が来るのはもうないのだろうと心のどこかで分かっているのに諦めきれなくて。
掃除をしながらも彼がここに居た痕跡を少しでも失いたくないからデスクの上に斜めになって置かれているキーボードや少し引かれたままになっている椅子、愛用していたマグカップ……他にも色々な物が彼が居なくなった日と寸分も配置を違えることなく置いてある。
怪盗として盗みに入る前と同じ状態を保つ。そんな記憶力を遺憾無く発揮した。
サニーが居なくなってからどれくらい経っただろうか。
今日も夜はサニーの部屋のベッドの上で膝を抱えながら夜を明かす。
いつか彼がこの扉を蹴り開けてくれるのを期待して。
それか自分が彼の時代に飛んだっていい。僕にはサニー以上に失いたくないものなんて何も無い。
大切なものは全てサニーが教えてくれた。僕にとってサニーが全てだった。
彼がいなくなってからまともな睡眠だってとれちゃいないんだ。時折気を失うようにして少しの間眠るだけ。
会いたいよ、サニー。
僕が君の声を忘れてしまう前に。
この部屋から君の匂いが消えてしまう前に。
あれだけ唾を吐いた相手に願う。
どうか、カミサマ。