竜と猫。/言霊本丸のお迎え「おつかれ。あとは引き継ぐからもう休むといい」
「…ああ」
頷いた大倶利伽羅に思わず、え? と顔を上げれば、伸びてきた手に、くしゃりと頭をかき乱された。
「すまないね、火車切」
戸惑ったまま呆然と火車切がその背中を見送っていると、引き継ぐと言った刀から謝罪の言葉とともに呼びかけられた。
「僕は歌仙兼定。この本丸の始まりの一振りだよ。よろしく」
「…あ、うん」
「ここの審神者は少しばかり言霊の力が強いようでね。本来なら大倶利伽羅は冬眠の時期で、あまり戦には出ないんだ」
「…冬眠」
「竜、春分にして天に昇り、秋分にして淵に潜む。審神者の中では竜は冬眠をする生き物らしくてね、刀身に竜の彫り物を持つ刀やそれに由来する名前を持つ刀はどうしてもその影響を受けやすくできているようなんだ」
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