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    百合菜

    遙かやアンジェで字書きをしています。
    ときどきスタマイ。
    キャラクター紹介ひとりめのキャラにはまりがち。

    こちらでは、完成した話のほか、書きかけの話、連載途中の話、供養の話、進捗なども掲載しております。
    少しでもお楽しみいただけると幸いです。

    ※カップリング・話ごとにタグをつけていますので、よろしければご利用ください

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    百合菜

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    アンジェリーク・ジュリリモ
    「ふたりで掴む未来」

    女王候補生のアンジェリークが日々訪れるのは首座の守護聖・ジュリアス様の執務室。
    次第に距離を縮めるふたりだが、ふたりには乗り越えるべき問題がいくつかあり……

    2020年ジュリアス様誕生日創作。

    ※再録です

    #ジュリリモ
    jurrimo.
    #アンジェリーク
    angelique
    #ジュリアス
    julius.
    ##ジュリリモ
    ##アンジェリーク

    「アンジェリーク、今日もジュリアス様のところに行かれるの?」

    飛空都市にきて早くも五十日以上のときが流れていた。
    自室から守護聖たちのいる館に向かうべく歩いていたアンジェリークに話しかけてきたのは同じ女王候補のロザリア。

    「あんたも物好きよね。あのジュリアス様のところに毎日通うなんて」

    あきれ果てたように話すロザリアを見てアンジェリークは気がつく。
    女王試験がはじまった頃は苦手で、話しかけるのはこわいとすら感じていたジュリアス様。それがいつしか毎日会いにいき、ときには私的なことを話すようになった。そして、その時間が自分にとって女王試験の間の大切なひとときになっていることも。
    そんな自分に気がつきつつも、心の中でひとつの疑問が生じる。

    「ロザリアの方がジュリアス様とお似合いの感じがするのに……」

    いわゆる「普通の家庭」で生まれ育った自分とは違い、ロザリアは貴族のお嬢様。
    立ち振舞いも教養も逆立ちしても勝てっこない。だからこそ、ジュリアス様の隣に立ってふさわしいのは自分ではなくロザリアだと思っている。
    それは女王としても、私的な関係としても。
    しかし、ロザリアはジュリアスに関心がないのか、ジュリアスの執務室を訪ねるところをほとんど見たことがない。

    「私とジュリアス様は似すぎているの。一緒にしては失礼でしょうけど、理想めがけて丹念に育てられたあたりが特に。
    不要なものとは無縁に育ち、必要なものを効率よく身につける。でも、その過程で一見邪魔なようで実は必要なものを得る機会を失ったとも思っているわ。
    だからこそ、あんたのぼーっとしたところが、ジュリアス様には足りないといっては失礼にあたるけど、そこを補完できているのかもしれないわね」

    ロザリアの言い方が引っ掛からないと言えばウソになる。
    だけど、ロザリアがアンジェリークを見つめる瞳はどこか優しく、そして眩しいものを見るかのようだった。
    気のせいでなければ、それは「うらやましい」という感情によるもの。

    「さあ、私も守護聖さまがたのところに行かなくては。では、ごきげんよう、アンジェリーク」


    ジュリアスの執務室に向かおうとしたアンジェリークであったが、廊下で意外とも言うべき人物に出会った。
    闇の守護聖・クラヴィス。
    現在、自分が一番懇意にしている守護聖であるジュリアスとは何かと衝突しがちという話を聞いているため、アンジェリークは無意識に彼のところに足を向けるのを避けている。
    そのせいか、育成をはじめたころはそこそこ必要とされていた闇の力も現在は限りなく少なくなっている。とはいえ、ゼロまで下がっていないのも事実ではあるが。

    「疲れているのではないか? 闇の力が直接おまえを救うことはないが、お前が育てているエリューシオンの民が安らぎに包まれているのを見れば、お前自身にも多少の影響はあるに違いない。
    たまには私のところにも来ると良い」

    ほとんど顔を合わせることはない。そして、懇意なものばかりに話しかけ、ほとんど話さないものがいる自分は彼の目から見れば女王候補失格とすら映っていたかもしれない。
    それにも関わらずこのようなアドバイスをいただいてしまった。
    アンジェリークはクラヴィスの言葉に感謝しつつ、ジュリアスの執務室のドアを叩いた。

    ーーーーーー

    「ジュリアス様、力をたくさんお願いします」

    今日も飛空都市の中で誰よりも一番輝いているお方―ジュリアス様。
    最初は慣れなかった育成のお願いも今では瞳を見つめて行うことができる。
    ジュリアスはゆっくりと頷いて答える。

    「わかった。たくさんの力を送ろう」

    その言葉にアンジェリークは安心する。
    育成においてロザリアのフェリシアとは差がついてきているが、油断すればあっという間に抜かされるであろう。
    ここでジュリアスにたくさんの力を送ってもらえることは、後につながるはず。
    安堵のため息をつきながらジュリアスの執務室を出ようとしたところ、アンジェリークは話しかけられた。

    「今日、このあとの予定はあるか?」

    アンジェリークは首を縦に振る。

    「クラヴィス様かルヴァ様のところに行こうかと」

    先ほど、クラヴィスから闇の力も与えた方がいいと言われていたし、データでは地の力が必要とされていることも示していた。
    そのため、ふたりの守護聖のうち、どちらかを訪ねようとアンジェリークは考えていた。
    しかし、ジュリアスはその言葉が気にくわなかったらしい。
    眉間に皺を寄せている。
    そして、立ち去ろうとしたアンジェリークの手首を掴み、アンジェリークの身体を引き寄せようとした。

    「ジュリアス様……」

    いつも誰よりも冷静さを保っているジュリアスの意外な行動にアンジェリークは驚きを隠せない。
    そのことにジュリアス自身も気がついているようだが、手首に込められた力は緩むことはなく、むしろより一層力強いものとなっていた。

    「あの……」

    アンジェリークの中に嬉しいというよりも戸惑う気持ちの方が大きくなる。
    ジュリアスの意図が掴めない。
    だからと言って守護聖相手に手を振り切る勇気もなかった。ましてや、憧れともいうべき感情を抱いている方ならなおさら。
    アンジェリークの瞳の中に戸惑いがあったことにジュリアスは気がついたらしい。

    「失礼した」

    それだけを話し、アンジェリークの手首を解放する。
    アンジェリークは自分の気持ちをどう扱えばいいのかわからないまま、ジュリアスの部屋を立ち去った。
    そして、そのまま自室へ戻り、その日はその後何も行動しないでいた。

    ーーーーーー

    日の曜日。
    ドアの向こうからの様子だと、ロザリアは誰かと約束しているのか楽しげに出掛けていった。
    一方、アンジェリークは自室で佇んでいる。
    守護聖の誰か、例えばジュリアスをお誘いに出掛けることも考え、実際身支度も整えたが、どうも気持ちが外に向かない。
    このまま一日が過ぎるのを待とうかと考えていたそのとき、部屋にノックの音が響いた。
    この硬質な叩きかたに覚えがある。そう、ジュリアス様の。
    アンジェリークがドアを開けると、そこにはやはり全身から光を放つ守護聖、ジュリアスの姿があった。

    「ジュリアス様……!」

    先日のことがあったため、その先はどう言葉を綴っていいのかわからない。
    そんなアンジェリークに対し、ジュリアスも珍しく視線を泳がせながらアンジェリークに問いかける。

    「済まない。もしよければ私と一緒に過ごしてほしいのだが……」
    「はい、じゃあ、森の湖に行きましょうか!」

    森の湖。
    深く考えずにこの場所を提案したが、いざそこに足を踏み入れるとアンジェリークは心地悪さを感じる。
    恋人たちがロマンチックな時間を過ごす場所としても有名だが、今の自分たちには逆に自然物しかないこの空間では時間をもてあそんでしまう。
    あえて子どもっぽく滝で遊んでみたりもしてみた。
    すると、ジュリアスはクスッと笑うといった反応はしたものの、叱るわけでもなく、呆れるわけでもないため、アンジェリークの中にはむなしさだけが残ってしまった。
    会話といった会話をすることもなく、ただ一緒にいる。
    それだけで満ちている気がする一方、むなしくなるのも事実である。
    すると、

    「眩しいな……」

    ジュリアスが漏らした一言をアンジェリークは聞き逃さなかった。

    「えっ?」

    咄嗟に反応するものの、ジュリアスは何事もなかったかのように自分を見つめるだけ。
    ただ、何もしないでいてもいつの間にか時間は過ぎていたらしい。
    あたりが橙色に染まってきていることに気がつき、ジュリアスがアンジェリークを部屋まで送ることを申し出た。

    「ジュリアス様、今日はありがとうございました」
    「いや、何もしていないので、礼は不要だ」

    ジュリアスの言ったことは決して謙遜ではないだろう。
    実際、ふたりは森の湖でこれといったことをしていない。ふたりでともに過ごしただけ。
    ただ、その時間がアンジェリークにとってかけがえのない大切なひとときであったのも事実。

    「いえ、ジュリアス様とともに過ごせて楽しかったです」

    そう。楽しかった。
    だからこそ、別れがつらい。
    笑顔でジュリアスを見送ろうとしたが、その表情が曇り、そして今にも涙がこぼれ落ちそうになるのをアンジェリークは感じていた。
    すると、次の瞬間、アンジェリークは何かに包まれていた。

    「私はお前に惹かれている」

    耳もとに聞こえるのがジュリアスの声だと気がつくのに少しの時間が必要だった。
    そして、自分はジュリアスに抱きしめられているということは、さらに時間が必要だった。
    しかし、それらのことに気がつくとアンジェリークの心臓は一気にバクバクと動き出す。
    頬もきっと真っ赤に染まっているだろう。
    もしかして、という気持ちと、まさかという気持ちがあった。
    今でもそう思っている部分はある。
    だけど、この間の手首を掴んだときの力強さ、そして今、自分を抱きしめている腕の温かさ。これらはひとつのことを告げていた。―愛しているという。

    「私もです、ジュリアス様」

    その後のことははっきりとは覚えていない。
    いつも堅い表情を浮かべがちなジュリアスが柔らかい笑みを見せたこと、そして「また明日、会おう」と約束をしてくれたこと。それくらいであった。
    ただ、アンジェリークの心の中が何か温かいもので満ちている。それが昨日までと一番変わったことかもしれない。

    ーーーーーー

    翌日。

    「ジュリアス様、育成をお願いします」

    前の週と同じセリフのはずだけど、なぜだか幸せな気分になる。
    ジュリアスも同じ気持ちなのだろうか。
    いつもよりも表情が柔らかく、アンジェリークは見ているだけでホッとする。

    「ああ、では、たくさん育成しよう」

    そして、出ていこうとするアンジェリークに対し、ジュリアスが話しかける。

    「このあと、用事はあるか?」
    「いえ、特には」

    他の守護聖に育成のお願いをすることも考えてはいたが、ロザリアとの差を考えると急ぐ必要もない。
    そして、大陸の民からも特に急いで育成する力もなかった。

    「では、ここで話をしていかないか」

    アンジェリークに断る理由はなかった。
    そして、それからというもの、ジュリアスのもとに育成をお願いし、そのあとはふたりで語らい合うのが日課となった。
    ときには執務室で、ときには公園で、そしてときには森の湖で。
    ふたりが仲睦まじく過ごすのはあっという間に飛空都市の間でも話題となった。
    そして、ほとんどのものはアンジェリークの幸せな様子とジュリアスの雰囲気が柔らかくなったことに安心していた。
    しかし、一部のものたちはふたりのことを危惧しながら見守っているのも事実であった。

    ーーーーーー

    「ジュリアス様、最近、お疲れではないですか?」

    自分の右腕とも言うべきオスカーが書類を持ちながら部屋へ入ってくる。
    オスカーの言葉を聞いて、ジュリアスは自分では意識していなかった疲労が身体に蓄積されているのを感じる。
    そして、オスカーは怪訝な表情を浮かべながらジュリアスの瞳を覗きこんでくる。

    「もっといえば、お嬢ちゃん、失礼。アンジェリークも表面上は元気に振る舞っているが、あれは相当疲れが溜まっている。そして、ジュリアス様は心当たりがあるはず」

    正直、痛いところを突かれたと思った。
    人を好きになるということも、誰かと想いを結ぶということも初めてゆえ、手加減というものがわからない。
    自分はまだ年長者で体力もあるからいいものの、確かに若きアンジェリークには無理がかかっていてもおかしくはない。

    「世界はバランスが大事。ジュリアス様、あなたが一番それを理解しているはずかと思いますが……」
    「ああ……」

    首座の守護聖として、他の守護聖に、そして女王候補に常日頃説いていること。
    それでありながら肝心の自分がそのことを忘れていた。情けないことだ。
    そう思っていると、オスカーが「オレにお任せください」、それだけを言い残し去っていく。
    彼が何をするのかは正直不明だ。
    しかし、悪いようにはしないはず。
    オスカーの後ろ姿を見ながらジュリアスはそう確信した。


    「オスカー様!」

    今日はジュリアス様の代わりにアンジェリークのもとに来たと目の前のオスカーが話す。
    ジュリアスがここに来られない理由が気になりつつも、今日はジュリアスが信頼を置いているオスカーを頼りにすることにした。

    「ちょっとエリューシオンに行ってみよう」

    そう提案されたので、アンジェリークはオスカーについていく。
    そして、間もなくエリューシオンにたどり着いたアンジェリークは何か異変に気がついた。

    「オスカー様……」
    「気がついたかい? お嬢ちゃん…おっと違った、アンジェリーク」
    「ええ。自信に満ち溢れているけど、自信が溢れすぎていて人と人とがぶつかり合っているわ。もう少しゆとりを持てばいいのに」

    自信……おそらくそれは民が誇りを持っている証拠。
    それ自体は悪いことではない。ただ、過剰なことが問題なのだ。
    そのとき、アンジェリークはひとつのことを思い出した。
    ジュリアスが光のサクリアを贈ってくれていたことに。そして、エリューシオンを見渡すとほとんどの建物は光に包まれ、他のサクリアは申し訳程度にしかないことに気がつく。
    そう思いながら隣のフェリシアを見下ろす。街の数こそはエリューシオンに劣るものの、光以外のサクリアがバランスよく与えられていることに気がつく。
    隣にいるオスカーを見つめたところ、オスカーは力強く頷く。

    「つまり、そういうことだぜ」

    ーーーーーー

    その後、アンジェリークはエリューシオンにそれぞれのサクリアをバランスよく与えた。その甲斐あってか、視察でエリューシオンを訪れたときは以前よりも民が穏やかになっているような気もした。

    そして。

    「ジュリアス様、力を少し送ってください」

    アンジェリークは相変わらずジュリアスのところに足を運ぶものの、以前のようにたくさん育成をお願いすることはなくなった。そして、ジュリアスの方もエリューシオンに光のサクリアを贈ることも同様になくなった。

    「ああ」

    手にしている書類から目を離し、アンジェリークに向かって微笑む。
    それはいつもと同じこと。ただ、その笑みに今日に限って影が差していることにアンジェリークは気がつく。
    しかし、その理由はわからない。

    「でも、私のところには最後に来てほしかったものだな」
    「どうしてですか?」
    「心行くまで語り合えるからな」

    首座の守護聖らしくない言い方にアンジェリークは頬を染める。
    一方で思い出す。互いの恋心を手加減しなかったゆえに疲れを溜め、育成のバランスを狂わせたことも。もう、あれは二度と繰り返したくない。

    「もう、ジュリアス様ったら! クラヴィス様のところに行ったら、また来ます」

    照れ隠しもあり、アンジェリークはジュリアスにその言葉を残して去っていく。
    そして、クラヴィスに育成の依頼をし、ジュリアスの部屋へ戻る途中、アンジェリークはジュリアスに差していた影の正体に気がつく。
    エリューシオンに建てられた建物は現在69。
    ジュリアスとクラヴィス、それぞれに育成をお願いしている量を考えると、おそらく今夜にでも中央の島に到達する。
    もちろん自分は女王として即位したらジュリアスは永遠の忠誠を誓ってくれるだろう。
    しかし、そうなると互いに恋心を持つことが許されるのはおそらく今日が最後となる。
    そして、ジュリアスが語り合いたいと話していた真意にも今さらながら気がつく。

    「ほんとにこれでいいのかしら……」

    今まで女王試験に励んできたのは女王となって宇宙の平和を導くため、そのためにジュリアスをはじめとする守護聖たちも力を貸してくれた。
    だからこそ、エリューシオンは一時光のサクリアで溢れそうになったのだ。
    しかし、いざ、その願いが叶いそうになった今、迷いが生じる。
    そして、生じる理由が何であるかもわかっている。

    「ジュリアス様……」

    思わず呟いてしまう名前。
    彼との未来を捨ててまで女王になる決断はつかない。
    そうなると、今から自分がジュリアスに伝えることはただひとつ。
    女王を敬愛するジュリアスにしてみれば理解しがたい決断かもしれない。
    軽蔑さえするかもしれない。
    でも、女王になってからの永遠に近い年月、ずっと後悔し続けることだけは避けたかった。
    アンジェリークはジュリアスの部屋のドアをノックする。
    そして、息を吸って紡ぎ出す。未来を掴むための一言を。

    「ジュリアス様、お話があります」
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    Replies from the creator

    百合菜

    DOODLE地蔵の姿での任務を終えたほたるを待っていたのは、あきれ果てて自分を見つめる光秀の姿であった。
    しかし、それには意外な理由があり!?

    お糸さんや蘭丸も登場しつつ、ほたるちゃんが安土の危険から守るために奮闘するお話です。

    ※イベント直前に体調を崩したため、加筆修正の時間が取れず一部説明が欠ける箇所がございます。
    申し訳ございませんが脳内補完をお願いします🙏
    1.

    「まったく君って言う人は……」

    任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
    私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。

    「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」

    光秀さまのおっしゃることは一理ある。
    私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
    最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
    見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
    6326

    百合菜

    MAIKING遙か4・風千
    「雲居の空」第3章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
    道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
    すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
    「雲居の空」第3章~蛍3.

    「蛍…… 綺麗だね」

    常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。

    短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。

    「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」

    半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
    苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。

    「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
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    女王試験がはじまった頃は苦手で、話しかけるのはこわいとすら感じていたジュリアス様。それがいつしか毎日会いにいき、ときには私的なことを話すようになった。そして、その時間が自分にとって女王試験の間の大切なひとときになっていることも。
    そんな自分に気がつきつつも、心の中でひとつの疑問が生じる。

    「ロザリアの方がジュリアス様とお似合いの感じがするのに……」

    いわゆる「普通の家庭」で生まれ育った自分とは違い、ロザリアは貴族のお嬢様。
    立ち振舞いも教養も逆立ちしても勝てっこない。だからこそ、ジュリアス様の隣に立ってふさわしいのは自分ではなくロザリアだと思っている。
    それは女王としても、私的な関係としても。
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