真友とタバコ友一との情事の後は、ベランダでタバコを一服ふかすのがすっかりお決まりになっていた。この日もまたいつも通りベランダにいたわけだが、真次は無性に苛々していた。
肺を膨らませ、タバコを深く吸う。苦い。苦いし舌先はぴりぴりとひりつくけれど、初めて吸った時からずっと、そして今日まで、やめられない。とんとんと忙しなくタバコを叩き、思いきり煙を吐き出した。からっとした晴天、雲ひとつない。無風である。
背後でベランダの扉が開く音がする。
「……なに? イラついてんの」
「別に。そんな風に見えますか」
「めちゃくちゃ見える」
少し大きい丈のパーカーを着た友一が、ベランダのサンダルを軽く引っ掛けて、真次の隣に並んだ。柔らかい朝陽に、眩しそうにぎゅっと目を細めている。友一の目の下の隈を見る。青白くていかにも不健康そうで、そのくせ、その横顔に朝陽をきらきらと、全面に受けているのが笑えるほどにアンバランスだった。
1941