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    アルダシアとの出会い
    2021/8/4

    #アルテド
    altedo

    ここ南ザナラーンはアラミゴの難民が身を寄せるリトルアラミゴを中心に、なんというか、とても辺鄙な土地だった

    そんなリトルアラミゴからもっと南、更に辺鄙なオアシスからテッドは週に一度の買い出しに来ていた
    粗方必要なものを揃え、チョコボに荷を積み込んでいると不意に声をかけられた

    「すまない、そこの君」
    「…え、何?」
    「少し道を尋ねたい ザンラクを超えた辺りにオアシスがあると聞いたんだが…」
    「それなら、俺も今から行く所」
    「お!君に声掛けて正解だったようだ 同行しても構わないかな?」
    「勿論」

    目立つ赤いシャツを着た快活そうな男だった
    実は買い物の最中、見慣れない顔だな、とぼんやりとこの男の事を視界の端で捉えていたテッドは声を掛けられてどきりとしていた

    「その荷物を見たところ…俺とは逆に、君はオアシスに帰るところの様だな」
    「うん」
    「もしかして君はそこに住んでるのか?」
    「テッドだよ」
    「おっと、俺はアルダシア アルでいい」

    アルと名乗った男はニッと笑うと手を差し出してきた
    どうも、と手を取り軽く握手を交わす

    「えと、アル、俺がオアシスに住んでたらおかしい?」

    人が良さそうな笑顔に、つい遊ぶように
    悪戯な問いを投げかける

    「おかしいなんてことはない!悪い、あそこはミコッテ族の集落だと聞いていたんでね 俺としてはテッドの様な少年にこそオアシスは似合うと思うさ」

    アルダシアは大袈裟に顔の横まで両手を上げ 気を悪くしないでくれ、と言わんばかりにぐるりと目を回す

    「確かにあのオアシスにはミコッテ族しかいないよ 俺も少し前からお世話になってるだけなんだ」
    「なるほどな」
    「アルこそ、あんな南の果てに用があるなんて珍しい人だね」

    荷を積んだチョコボを引き、照りつける太陽の下を歩きながら二人は軽く会話を交わす

    「俺は冒険者なんだ 砂漠の神皇帝とやらの噂を聞いてな」
    「そっか、冒険者なんだ アルはなかなか腕が立つみたい 多分、ウルハドシは近いうちに現れるよ」
    「そうか!良かった 適当な情報掴まされた訳じゃなかったみたいだな」

    砂漠の神皇帝ウルハドシというのは所謂巨大サンドウォームだ 群れの長とでも言うのだろうか、倒しても代替わりして年に一度また現れる
    大概オアシスの"ウ族"達が狩ってしまう為一般の冒険者がお目にかかる事は少なく、ちょっとしたレア物として冒険者の間では狙う者も少なくない
    出現の兆しはオアシスで過ごしていないと気が付かないような些細な群れの変化だ
    そんな的確な情報をどこからか得て、ここまで辿り着たアルは間違いなく腕が立つ冒険者なんだろうと察しがついた

    「さ、ここが忘れられたオアシスだ 歓迎はされないだろうけど、ヌンに挨拶しておいた方がいいよ」
    「ありがとなテッド 助かった どうだ 今日あとで食事でも ご馳走させてくれ」
    「ついでだっただけ 俺はただの帰り道だよ」
    「それでも、チョコボに乗らず一緒に歩いてくれただろ?遠慮しないでくれ」
    「…じゃあ、お言葉に甘えて」

    アルは満足気な笑みを見せると
    また後でな、とテッドの肩を軽く叩き忘れられたオアシスへ入っていった

    そもそも人が訪れることが少ないこの南ザナラーンで知り合いと呼べる人間も少なく、同じミッドランダー族ということもあってテッドはアルとの出会いに少しばかり心踊っていた

    ウ族では無いためオアシスの中で暮らせないテッドの主屋はオアシスから少し離れたところにあった
    主屋につき荷解きをし、チョコボをポーターへ返却し、食事の準備をしているとあっという間に太陽が沈み砂漠に満点の星空が広がった

    テッドがオアシスに戻るとアルは既に壁にもたれ掛かり待っていた

    「ごめん、待たせた?」
    「いや、立派な星空だったんでね 少し早く来て見ていたのさ …所で、誘っておいてなんだが…飯屋までの案内も頼めるかな?」
    「ふふ、実は、ここにはお店なんてないんだ 大したものはないけど、食事用意したから俺の家に来てよ」

    そう、はじめ申し出を断ったのも、先程食事の準備をしていたのもこの為だった
    アルの目が丸くなる

    「それじゃ礼にならないじゃないか!」

    アルは落胆した様子で額に手をあて首を左右に振る

    「…悪い、案内と食事、この借りは必ず返すよテッド」
    「…アル、実は更に、ここには宿もないんだ オアシスの情報は調べてこなかったみたいだね さぁ、宿はどうする?」

    テッドは悪戯っぽく目を細めアルを見る

    「はぁ、どうやら俺は、君無しではまともに休む事もできないらしいな 案内と、食事!そして宿、この借りは必ず返すよ」

    観念したように肩を落とす
    初めて客人を招くことも、アルと縁が出来たこともなんだか嬉しくてテッドはくすくすとわらった

    ─────────────

    食事をしながら話を聞くとどうやらアルは海の街リムサ・ロミンサを拠点にしているらしい
    国を越えることはそう簡単ではない
    アルは本当に腕の立つ冒険者なんだ

    アルの話は興味深いものばかりだった
    自分も傭兵家業をしている身、一人前にやれていると思っていたのに、アルの話を聞くと自分の世界など矮小なものだと思い知らされる

    男二人で食べるには少し物足りない、テッドの精一杯のおもてなしを終えた後も二人の話は弾み夜は深けて行った

    そうしてアルダシアという男と出会った
    予想した通り、お目当ての砂漠の神皇帝ウルハドシは直ぐに現れアルによって討伐された

    アルはこの件を切っ掛けに、ウルダハに立ち寄った際はオアシスまで足を伸ばしてテッドに会いに来るようになった
    その度にアルはテッドの主屋に泊まり、テッドにとって兄のような存在になっていった

    ─そう長くは続かない穏やかな日々だった
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