同棲に至るまで頼れる先輩だと思ってたし、実際、しっかりした人ではあるんだと思う。でも自分のことになるとどこか抜けたところがあるというか、無頓着になってしまうというか、そんな印象も確かにあったのだ。
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「俺、卒業したら東京に行くんだよね」と言われた日のことをよく覚えている。思わず盗み見た横顔は、なんだか楽しそうで、それが少し恨めしかったような気がする。東京なんて、遠い。そう言えば「車で行ける距離だってお前が1番わかってんべ」なんて笑う。
それでも、気軽には行けない。ただの先輩に片道5時間かけて会いに行くなんてできない。偶然街で会う、という道も断たれたら多分もうこの人には会えなくなる。それが、不安だった。
「なんでだよ。学校の合宿とかは難しいにしたってさ強化、お前はまた全日本ユースの強化合宿とか呼ばれるだろうし、ついでに遊び来ればいいだろ~」
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