早寝と夜更かし「マーヴ?今何してる?」
『今?そろそろ着替えて寝ようと思って、立ち上がったところだよ』
スピーカーから聞こえる声はいつ聞いても甘い。夜はまだ始まったばかりのはずだが、マーヴはすでにその一日を終えようとしていた。
「早くない?」
『え、そう?』
一方の俺は、さて今夜は何をして過ごそうかなどと考え目が冴えていた。こちらの時刻は日付が変わって1時間ほど。マーヴの時計の針はまだ12のいくつか手前を指していて、日付も変わっていないはずだ。
「マーヴ、明日休み?」
『休みだよ』
この一言でさえ機械越しでなく直接聞きたい。手のひらに収まる小さな機械で、マーヴの甘い声を正確に再生できるとは思えない。
「ならもうちょっと話そうよ、ね?」
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