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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
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    ちょこ

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    アイドラ話
    くまくんと世良の話

    カチ、カチ、と机の上に置かれた時計が静かに時を刻む。ペンを走らせていた世良は書き終えると一息ついた。出来たと五線譜に書かれたのを見て微笑む。今作った曲はとある人物に送るために書いたものだ。受け取ってくれるといいのだが、とファイルの中にしまうと次の日の準備をするために鞄の中を開ける。先程のファイルとボイスレコーダーを中に入れて。後は学院に行っての作業になる。そしてその日は終わった。
    それから何週間かたったある日、学院内を歩いていた世良、とある人物を探していた、連絡をひとつ入れれば良かったとスマホを手に取ろうとした時、前の方から歩いてくる人物が視界に入る。その相手が探していた人物だったため、丁度いいとスマホを制服のポケットの中に入れると小走りで駆け寄る。その人物──初雪は世良が駆け寄ってきた事に気づき、足を止めた。
    「白石? 」
    「先輩、あの、これ受け取ってください」
    手に持っていた紙袋を初雪に渡す。初雪はそれを受け取り中を見た。中にはファイルとボイスレコーダーが入っており、ファイルを手にして中に入っている紙を見てすぐに分かった、これは曲だと。ならこのボイスレコーダーは音源だろうと世良を見る。
    「……これどうしたんだ? 」
    「俺が作りました、先輩なら歌えるはずだって。先輩の歌声に合うはずです」
    初雪に渡した曲はいわゆる失恋ソングだった。世良は前々から思っていた、初雪は失恋ソング、恋の終わりの歌が合うのではないかと。以前、初雪に感情がこもった歌が歌えないのではないか、と指摘をしたことがある。今思えば失礼な指摘だと反省したが、大事だからこそそっと離れる、そんな恋の終わりの歌がどうも頭から離れなかった。
    これを歌ったからと言って感情を込めた歌を歌えるかなんて分からない、けれど初雪に歌って欲しい。ライバルに曲を送るなんて、と世良は内心笑いそうになる。下手したら更に上を行ってしまうかもしれない、けれどそうなったら自分ががむしゃらに超えればいい。初雪はファイルの中に入った曲を黙って見ているだけだった、そして口を開く。
    「……いい曲だな、俺には勿体ないかもしれない。……ありがとう」
    「何言ってるんですか、先輩なら歌えますって! あ、そのボイスレコーダーは一応音源です。俺が手本で歌ってますけど……やっぱ失恋ソング、難しいですね」
    自分で作った曲だが、改めて歌うと難しかった。だからこそ、これを初雪が歌ったらどうなるだろうか。と思わず口元をにんまりとする世良だった。
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    ぼくの名前を呼ぶ声にゆっくり目を開けると、ベッドの端に腰をかけたランランの姿があった。
    「おはよう、嶺二。やっと起きたな」
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    「いまなんじ?」
    身を起こしながら聞くと、7時だと教えてくれた。ちょうどいい時間だ。
    体を起こしたものの疲労の残る体はまだ少しだるくて、ベッドの上でぼうっとしてしまう。ランランの小さく笑うような声が聞こえたかと思うと、ぎしりとベッドの軋む音と唇に優しく触れる感触。それにうっとりとする間もなくランランはぼくから離れて、物足りなさを感じて見上げるぼくの髪を大きな手でくしゃくしゃとかき乱した。
    「ちょっとー!」
    「目ぇ覚めただろ?朝飯作ってあるから早く顔洗ってこい」
    「うん」


    着替えは後回しにして、顔を洗って歯を磨いてリビングに向かうと、美味しそうな匂いがぼくを待っていた。
    「わー!すっごい!和食だ…!」
    テーブルには、お味噌汁に焼き鮭に卵焼きが並んでいて、どれもまだ白い 2846