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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
    よその子さん多め

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    エガキナ

    よその子さんお借りしてます

    ##エガキナ

    名前を呼べた日 自分のツクリテである星が亡くなって、星の幼なじみだという古金映李───エリーに引き取られて幾日が過ぎた。エリーの家はいわゆる豪邸と言ってもいい、庭は綺麗にバラが咲いており、もし星が居たのなら嬉しそうに見たのだろう、とジュードはぼんやりと思う。
     星が亡くなってからというもの、何か心がぽっかりと隙間が空いたような、そんな感覚になっていた。エリーはジュードの事は顕現される前から知っていた、と話してくれた。星と仲が良かったのなら、なんで派閥が違っていたのかは知らなかった、聞いても良かったのかすら分からない。

     エリーの家には、彼が言ったように様々なニジゲンが居た。まだ全員は把握出来ていないが、星がエリーに託した手紙を渡してくれたニジゲンに関しては、遠目で何回か見たことがあった。彼が、とジュードはすぐに分かる。
     黒と白髪が目立つ髪色に、黒を基調とした服。どうも話しかけるのに少し躊躇してしまう、相手がそういった雰囲気を醸し出しているからだろうか。それと、その時に限ってタイミングが悪い、また何かしらの機会の時に話しかけてみようか、と思いつつその場を後にした。
     エリーが用意してくれた自室に入り、座り込む。家具はどうやら一通り元からあったらしく、ジュードの私物と言えば何冊か持ってきた本、星の最後の作品である『天候のタビビト』───ジュードが主人公の作品だ。

     ニジゲンであるジュードは本来、星の葬儀に参列出来るか怪しかった。けれど、星の親戚達の計らいで星との最後の別れができた。星の幼なじみである針生途傘───メリーや、創務省職員の炎珠羽紅も参列した。エリーだけは、こっそりと誰にも見られないように来てくれた。
     メリーや羽紅と話をしたくなかったジュードは、星の葬儀が終わると二人と会わないように立ち去り、遺品を持ってエリーの所へとやってきて、今に至る。
     星との別れは出来たはずなのだ、柩夜が綺麗に埋葬してくれたように、星の親戚達が葬儀をしてくれたように、別れはきちんと出来た。
     けれど、どうしようもない虚しさが襲う。心のどこかでは、星の死を受け入れきれてないと言うのだろうか。

     ジュードは目を閉じる、これらが関係しているか分からないが、エリーの事を名前で呼べてなかった。もしかしたら、心の底でどこか怖かったのかもしれない。名前で呼んだら、相手と仲良くなってしまったら、星みたいに別れの時が辛く悲しいものになる。
     ニジゲンは歳を取らない、身長が伸びたり、髪が伸びたりなどの見た目の変化もない。反対にツクリテは"生きている"ため、歳をとって最後は亡くなる。時の進み方があまりにも違う、今回の事で嫌という程、ジュードは味わった。
     どうしたらいいか分からなかった、エリーの事は感謝している。けれど、本来消えようとしていた自分にとって、このまま目的もなく生きてもいいのか。ふと、目を開けて本を見る。ふと、一冊に何か挟んであるのに気づいた。

    「……? なんだ……?」
     『天候のタビビト』最終巻をそっと開く。ハラリ、とページを捲るとなにやら手紙が挟まっている事に気づいた、封筒に書かれていた『ジュードへ』という文字を見て目を見開く。星の字だ、封筒を開けて便箋に書かれた文字を読む。内容はやはりジュードを心配していた、手紙でも心配するのか、と思わず目を伏せると、とある一文が目に入る。
    「……」
     じっとその一文を見た後、ジュードは手紙を机の上に置くと、部屋を出た。エリーの作業部屋の扉を開けると、エリーがジュードの顔を見て声をかける。
    「ん? どうした?」
    「……」
     ジュードは何も言わずにエリーの側まで近寄る。何か言いたいことがあるのかと察したエリーは、ジュードの方へ向き直す。ジュードは、エリーの顔を改めて見た時、そういえば、ここに来てから目を見て話したことがあっただろうかなんて思いながら。
    「……ここに来てから、俺は何をしたらいいか分からなかった。星が死んで……本当だったら俺はそのまま消えるつもりだった」
    「……うん」
    「……あんたも、星みたいに死ぬと考えたら、踏み込むのが怖かった。あんたの名前すら、言うのも躊躇した」

     エリーは星のように若くして死ぬなど想像はつかなかったが、それでもいつか別れは来る。別れは悲しい、今味わっている気持ちが身体中を占めるから。
    「けど」
     ジュードは真っ直ぐとエリーを見る。
    「俺は決めた、俺は……することが出来たから。俺を引き取ってくれたあんたを守りたい。あんたが死ぬまで、俺は消えたりしない」
     そう言いきったジュードの顔は、どこか誇らしげで、何かを吹っ切れた様子だった。そして、少しの沈黙の後、口を開く。
    「……だから、あんたの事を、名前で呼んでいいか」
     じっとエリーの顔を見るジュード。その後のエリーの返答に、ジュードは目を見開いたあと、笑った。

     ジュードの部屋に置かれた手紙、その手紙は星が、病気が悪化する前に書いたものだ。ジュードを心配する内容、自分が亡くなっていることを想定しているからか、自分が亡くなったことに対しての謝罪。そして───。

    『エリーは僕の大事な幼なじみなんだ、派閥が違っても、思いは変わらない。だから、エリーの事を、傍で見守って欲しい。僕はもう、それが出来ないから』
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    ちょこ

    DONEダミアさんお誕生日小説
    ダミアさんお借りしました!お誕生日おめでとうございます!
    モンブラン「ダミア、お誕生日おめでとうございます」
    「おー! ありがとな!」
     レイフが借りている拠点と言っていい住まいにダミアを呼び、目の前にケーキを出す。ダミアと前もって連絡を取っていたため、こうして呼べたのだ。ケーキはレイフの手作りだ。本当なら、料理も出そうかと言ったのだが、間髪入れずに断られてしまった。今度こそ上手く作れるような気がしたのにな、とレイフは残念そうに思いながらも、ダミアを見た。
    「このケーキ……モンブランか?」
    「そうです、アマロンを使ってます」
    「へー! 王様って呼ばれてるやつじゃん!」
     ダミアは感心したようにケーキを眺めた。アマロン、様々な栗の中で特段に甘い栗の事だ。身も大きいのだが、育てるのが難しく、しかも、大きく育てようと魔力を使うと、すぐに枯れるという性質を持っていた。なので、完全な手作業、時間をかけてゆっくりと育てる。そのため、栗の中の王様、という意味で【アマロン】と呼ばれるのだ。一粒だけでも驚くほどの高額で取引される。その高額さに、一時期偽物のアマロンが出回るほどだった。偽物のアマロンと区別を測るための道具すら開発されるほどに。
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