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    恋人に素晴らしい提案をする猗窩煉

    ■現代パロディ
    ■成人向けにするほどでもないけれど、明らかに情事の最中です。

    #猗窩煉

    「杏寿郎。」
     目の縁に生えそろった睫毛が濡れて、小さな束を幾つか作っている。いじらしく目尻の窪みに溜まった涙が、瞬きのたびに震えて今にもこめかみへ向かって流れ落ちようとしている。上気した肌は頬だけに留まらず目元まで血色よく紅潮させ、早鐘の鼓動に見合った浅く、早い呼吸が閉じる事を忘れ薄く開いたままの唇から漏れている。薄っすらと浮かんだ汗で額や頬に色素の薄い髪が張りついていて、労うように頭を撫でながらそれを払う。恋人は俺よりもずっと体温が高く、こうして互いの熱を貪った後でも触れ合う体温が近付くことはない。逆上せたように火照った頬にも触れて、目尻に溜まる涙を指の腹で拭う。指先が心地よいのか、擽ったいのかまるで眩しいものでも見るように切れ長の目元が細められる。恍惚とも見えるその表情が煽情的で、このまま落ち着いていくのを待つばかりと思っていた情欲が再び熱を帯びる。
    「杏寿郎…いいか?」
    「だめだ。」
    「……だめ?」
    「だめ。」
     撫でるだけで満足出来るほど、お行儀はよく出来ていない。触れ合う手を払い除けないところを見るに、そう強い拒絶ではないと読み解いて、短い返事をするのに精一杯といった様子の唇を奪う。乾燥してしまっている唇に気が付いて、舌先で舐める。少しずつ呼吸が落ち着いて、相変わらず早い鼓動のリズムも間もなく眠たくなるような落ち着きを取り戻すだろう。触れて、離してを繰り返す子供のようなキスでは満足できる訳もなく、ふっくらと柔らかい唇に歯を立てかけて、唇で挟んで食むだけに留める。

     恋人と添い遂げ、初めて二人きりで過ごす夜。当時は揃いの制服に身を包んでいた自分たちは、互いに同性同士のセックスの仕方を知らなかった。スマートフォンを片手に熱心に検索し、そこに書かれている手順を踏んだら難なく熟せるのだろうと、互いへの好意という情熱だけで何とか押し切ろうとしたのだ。書かれていたことが正しい知識だったのかは覚えていない、それくらい何かに焦っていたし、燃えるように湧き上がる欲望に目が眩んでいた。結局、結果は散々なもので、普段から我慢強く弱音を吐かない恋人の性格がこれほどまでに悪い方に作用した夜はなかった。己の堪え性のなさも相まって、愛情を確かめ合うつもりが互いに傷つけ合うという惨事は後にも先にもこれきりにしなくてはいけないと、真っ白なシーツに散った鮮やかな赤色に誓った。

     焦れったいほど大切に、せっかちが二人揃って慎重に、ままごとみたいな夜を何度も過ごした。勝手に立てた誓いの通り、今に至るまで二度目の失敗はない。しかし、幾らやんわりと言われる言葉でも恋人から拒まれるとそれ以上は手が止まってしまう。「だめだ。」と言っているものの、腕の中の恋人も燻ぶった熱が鎮まる兆しはなく、恐らく恥ずかしさに押し負けているのだろう。たぶん、きっと。
    「お前も、まだ足りないだろう。」
    「そん…な、ことは…。」
    「杏寿郎、ほんとにだめ?」
    「……。」
     落ち着いていた熱が、ぶり返すように再び恋人の顔が赤くなっていく。恋人が、恥ずかしくなるくらいに甘えたお強請りに弱い事を知っていて、わざと首を傾げて見せる。期待されると応えずにはいられない性格を悪用している自覚はある。柔らかかった唇は理性と羞恥の狭間で引き結ばれ、だんまりを決め込んでいる。固く結ばれたそこが解れたらいいなと願望を込めてキスを贈る。
    「わかった。」
    「え…?」
     頭の横に手をついて見下ろすと、自分の影が恋人に落ちる。身体が離れると名残惜しそうに熱っぽい目を向けるので、今までの言葉は建前の「だめ。」だった事を悟る。嘘を吐くのは下手だが、それ以上に本音を吐くのも下手な恋人だ。
    「素晴らしい提案をしよう。」
    「…それ、嫌な予感がするな。」
    「本当にだめだと思ったら、ヤメロと言え。そうしたら直ぐに止める、いいな?」
     不安があるのか、期待しているのか、熱っぽい視線のまま言葉を待つ恋人を見下ろしたまま告げる。返事を待たずに、先の行為で汚れたままの尻のあわいを探る。触れるか触れないかの柔らかい触り方で、恋人の言葉を待つ。掠れた小さな声が洩れる。
    「…だめ。」
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