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    @20kmtg

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    ■現パロ
    ■色々注意。なんでも許せる人向け。

    書きたいところだけ。
    今後もう少し書けたらいいなと思ってます。

    #猗窩煉

    誘拐と猗窩煉 目を瞑っていても、見えている目蓋の内側がくるくると回転しているような、不思議な浮遊感があった。
     徐々に体が覚醒へ向かっていくと、ひどく喉が渇いていることに気が付く。口の中に嫌な粘つきがあり、耐え切れず唾液を飲むとゴクリと喉が鳴った。
     身体のあちらこちらから痛みを感じ、声にならない呻き声が洩れる。重たい目蓋を開こうとすると、目ヤニで睫毛が引っ付きスムーズにいかない。ようやく開いた両目の視界を確かめるように、何度も細かく瞬きをする、ぱちぱちと嘘みたいな音が立ち、そうして見えたのは知らない部屋の天井だった。

    「アカザ。」
     一人切りだと思っていた部屋で、男の声が響く。
     重怠い体では咄嗟に動くことが出来ず、首と視線を動かして部屋を見渡すと、自分が干乾びた布団の上に横になっていること、自分の腹の上に頭を預け重なり合うようにして寝転ぶ金髪の男の存在が確認できた。無造作に伸ばされた金髪、毛先には赤色のメッシュが入っている、派手な男だ。
    「起きたか、アカザ。」
     頭を起こそうとすると、首から背中にかけて鈍い痛みが走っていく。痛みに耐えるべく歯を食いしばると、噛み合わせた奥歯の圧力が頭蓋の中に響くようだった。
     振り払おうと手を上げれば、両手首を繋ぐ手錠に阻まれる。動かすたびにカチャカチャとチープな音を立てる手錠は、本来であればもう少し手首を傷めないように余白を残しても良いだろうが、肌が赤く擦り切れるほどキツく絞められている。
    「…君がまた、逃げようとするから。」
     ─そうだ。道場からの帰り道、夜道に乗じて背後から襲われたんだ。
     背後から、稲妻のように眩いスタンガンを押し付けられ、激痛に蹲った記憶が蘇る。卑劣で卑怯な、忌々しいほどに弱者の戦い方だ。
     この部屋に入る前に意識を取り戻し、散々ぱら暴れた結果、再び電撃を食らい、両手を拘束された。そこまで思い出すのに随分と時間を有するほどに、非現実的で、どれもこれも自分の身に起こった事とは思えなかった。

     男の、不思議な虹彩を持った両目が、瞬きをせずにじっと見上げてくる。
     真っ赤に腫らした目蓋、充血し赤い筋が幾つも浮かぶ白目、腹の上に置かれた手が震えていて、とても自分に危害を加えた犯罪者には見えない、まるで弱者の風体をした男。
    「アカザ。」
     夢の中にまで聞こえてきた、男が何度も繰り返す言葉。
     聞き覚えのない単語に眉間に深く皺を刻む。
    「君が、俺の人生を狂わせたんだ。」

    *

    ──絶対に、離さない。
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