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    かなすけ

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    かなすけ

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    書き納め+ひととせ1000日記念。

    怪盗団ひととせの師走の話。
    また新しい1年が始まる前の話。

    巡りゆく季節の中で冷たい空気に触れて、目が覚める。

    冬の朝は暖房を入れておかないと起きれないのが現実だ。時間を見ようとスマホに手を伸ばして、電源を入れれば時間とともに連絡が入っている。

    寝ぼけた頭のまま、その連絡に目を通す。今日はどうやら皆仕事が早く終わるから少しだけこっちに来る……そんな他愛もない連絡だった。

    アジトはいつも綺麗にしているが、なんとなく人が来るという連絡があると掃除がしたくなる。別に自分の家では無いけれど、年越し前の大掃除にも丁度いいか……なんて事を布団の中で一通り考えた後に、冷えきった室内へと足をつける。

    「寒い……暖房つけて忘れるとか最悪」

    そんな独り言が零れて、急ぎ足で靴下とスリッパを履いて洗面台に向かう。

    蛇口を捻れば素足で感じた床の冷たさよりも冷たい水が出てきて、眉を顰める。冷たい水で顔を洗い、優しくタオルで拭いていると鏡の向こう側の自分と目が合う。

    昔は鏡なんて見るのは嫌だった。理由何てものは、もう思い出したくもないけれど。だけどあの時はもっと酷い顔をしていた事だけはよく覚えている。

    「ふふっ……何してんだろ。早く掃除しないと」

    リビングに向かいご飯を適当に済ませて、服を着替えて買い出しに行く。

    掃除用具……と言ってもアジトのだし私の部屋を中心になる。あと掃除するとすればリビングの暖房器具とお風呂回りかな……なんて事を考えているとアセナと名前を呼ばれて振り返る。

    「あ、悠。こんなとこで何してるの」

    「えっ、何って足りない掃除用具を買いに来ただけだけど」

    「そう」

    「アセナは?」

    「私は、アジトの大掃除用に」

    「アジトの大掃除してくれるんだ。って言ってもアジトはいつも綺麗だし時間はかからないか」

    「まぁね。でもキッチンとかリビングにある暖房器具とかはこのタイミングでしか出来ないしやろうかなって。みんなも来るみたいだ」

    「なるほどねぇ。こっち終わったらそっち手伝うよ」

    「別に大丈夫だけど」

    「アジトは共有施設なんだから、アセナだけに掃除押し付けれないし、アセナじゃ届かない場所もあるでしょ?」

    ニヤニヤとした猫のような表情に苛立ちを覚えて、思いっきり足を踏み付ける。

    「痛ってぇ!」

    「椅子使えば届きますから。ご心配なく」

    「はいはい……すみませんでした」

    「じゃあ、お先に」

    そう言って買い物かごに積まれた商品を片手にレジに向かった。大きめの袋を貰って、袋詰めをさっさと済ませてアジトへと帰り窓を開けて掃除を始める。

    まずはキッチン周り、エアコン、自室に貯められた依頼人の情報のコピーの整理……。できそうな場所はやろうと思っていたが、1箇所あたりの掃除の量が思ったよりもやることの多く、悠からの手助けを断ったことに少しばかり後悔をする。

    「みんな来る前に終わるといいけど……」

    ガチャリと扉が開く音がする。誰かと思い玄関へと目を向ければ、悠の姿があった。

    「悠、施設の掃除は終わったの?」

    「まぁね。人数がいた分思ったより早く終わった。こっちはまだまだってところ?」

    「1人なんだから仕方ないでしょ」

    「はいはい、手伝うよ。何すればいい?」

    「エアコン掃除」

    「うん、分かった」

    そう言って、さっとエアコンを解体していく。かく言う私はと言えばキッチンで換気扇を掃除していく。しばらくすると、ガチャリと音を立てて扉が開く。

    「……掃除してる」

    「あ、雪」

    「あとでくる」

    「いや、手伝ってよ。雪も」

    「まぁまぁ、せっちゃんは買い物行ってもらおうよ。ほら、リビングはもうすぐ終わるし」

    「なら、お酒かジュース。年越し用に」

    「えぇ……」

    「掃除よりマシでしょ、はやく」

    「はいはーい」

    エコバッグを渡して、雪を買い物へと向かわせる。

    「ほらアセナ、リーダーとせっちゃんが帰ってくる前に、掃除済ませよ?」

    「……そうね。すませましょ」

    そう言ってテキパキと掃除を済ませて2人の帰りを待つ。アジトに少しだけ残っていたおかしと、キッチンで有り合わせのおつまみを作ってお皿に乗せつつ雪の帰りを待つ。

    「アセナは今年、やり残したことある?」

    「別に?いつも通り仕事してたし。悠は」

    「俺?俺も……そんな変わんないかな?」

    「なら、なんで聞いのよ」

    「いや、なんとなく」

    「……あっそ」

    そう興味なさげに返すと、ほぼ同時にガチャリという音と共に扉が開かれて2人分の影が見える。

    「あっ、リーダーと雪」

    「リーダー、せっちゃんおかえりー」

    「ただいま。雪とは、ちょうどそこで会ったんだ」

    「ただいま〜。はい、これ」

    「うん、ありがと」

    「おっ、珍しくアセナも飲むのか?」

    「まぁ……年の瀬だし……と思って」

    「そうか!なら今日は忘年会だな!」

    そう言って、リーダーの音頭で始まる忘年会。冷蔵庫の中にあるものだけで、作ったゆっくりと飲んで今年を振り返る。特段、何かあった訳では無い。去年と変わったものはない。だけど、年を重ねる度に思うのはこの場所の有り難さ。

    気まぐれで集まって、全員が顔を合わせる日は少ない。だけど、それぞれの居場所だと言えるこのアジトが可視化された拠り所。

    来年も、その次もどうかこの場所がみんなの居場所でありますように
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