一緒に暮らしてみないと分からない相手の癖、というものがある。
食器の並べ方や洗濯物の干し方、果てはトイレの蓋の開け閉めなどなど上げてみれば枚挙にいとまがないが、これはわからないなと思ったのは寝るときの姿勢だ。
「おやすみ、KK」そう言って俺の頬にキスをするとそのまま暁人は布団に潜り込む。そうして頭まですっぽりと布団を被り手足を丸めるとこちらに背を向け、眠る。
おいおい、それじゃかわいい寝顔が見れねぇじゃねえか…。
というのもなんとなく憚られたので、窒息しないのか、と聞いてみた。「昔からこうしてないと寝れなくて」と照れたような声で言われると、寝顔が見たいのに、なんてことは言えなくなってしまう。
…まぁ人それぞれだしな。小動物のように丸まった暁人の寝息と体温を感じているうちに俺もつられて眠ってしまう。
ある夜。いつものように暁人が俺の頬にキスをし、布団に潜る。ふと暁人の身体が暗い海に沈んで行くように見えた。
慌てて追いかけ引き上げようとしたら思っていた以上に手足が強張っている。こいつ、いつもこんな闇いところで寝てたのか。抱えるようにしていた手を緩め頭を撫でてやると、ようやく息ができるようになったのか暁人は声を上げて泣きじゃくった。
「ごめん、KK」ようやく落ち着いた暁人がつぶやく。ガキは素直に甘えとけばいいんだよ。それを聞いてまた泣き出した暁人を抱え、俺は闇の中から浮上した。
頭まで布団をかぶる癖はそのままだが、今はリラックスした背中をオレに預けて眠る。
たまには寝顔見せてくれてもいいんだぞ?というと「じゃあ常夜灯消して」と冷たく返された。
ごめん、暁人。俺あれがないと寝れなくて…